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60 十一人目

 俺は護衛たちを瞬く間に制圧していた。

 護衛三人のうち、二人が地面に手を付け降参のポーズ、一人が死にかけの状態で地面に横たわっている。まぁ殺さず生け捕りにするというのも意外と簡単じゃないのかもな。相手を脅すということをあまりせずに生きてきたからな。俺が前世で元ヤンキーとかなら得意な可能性もあったのかもしれないが、もちろんそうではなく本当にみじめな友達も少ない一般人だったので、全く恫喝的なことに慣れていない。というかヤンキーとかマジで意味ないからあれ。偉そうにメンチ切ったりデカい声で会話したり何を目的に生きてるの? 頭が悪いとしかいいようがないよな。人に迷惑かけてる時点でおかしいと思わないのかな。まぁそんなことを考える頭もないんだろうな、本当かわいそうに。あんな人間の底辺集団だけにはならないようにしとこっと。


「さて、どうしよっかな」


「……貴様……何もんだよ」


 藍色の男が、呻くように聞いてくる。


「俺? うーん、まぁいいじゃんなんだって。あと睨んでくるのは勝手だけどヘタに騒いだりとか暴れたりとかしないでね。というか地面から手を離さないで。離した瞬間今度は二度と立てない体にしてあげるから」


 適当に脅し文句を並べながら横を通り過ぎる。

 うん、やっぱり脅しも慣れてくれば簡単かも。新たなスキルを手に入れて俺も成長できてるんじゃないか。今後もどんどん人生経験していきたいな。まぁそんなことはいいとしても、これからどうするかだが……ひとまず面倒な護衛は蹴散らしたから今度は馬車の中でも覗いてみるか、こんだけ厳重に守ってるんだ、もぬけの殻ということはあるまい。流石にな。


 そう思い馬車の目の前までやってきた。

 少し古いがやはり立派で頑丈そうな木製の馬車だ。

 扉はここだよな? よし、それじゃあお邪魔しま……


「……ん?」


 ちょっと待てよ。そういえば何かを忘れてる気がする。何か違和感というか……最初にあって今ないものがある気がする。あれ? なんだったか、最初にあって今ないもの……汚れなき少年の心? いや、そんな謎解きみたいなことじゃないよな、そんな上手いこと考えようとしてるんじゃなくて……うまいこと? 馬? 馬はいるけど……


「あっ、あああああーーーーーーー!!」


 お、思い出した! そうだ、御者だ! 御者がいなくなってる!

 確か一番始めは馬を引いていた御者がいたはずだ。

 その御者の姿が見えないぞ。

 どこにいったんだ? もしかして逃げやがったか? それだと多少マズイ気がする。俺たちのこの作戦では対象に逃げられるということを想定していない。もし街にでも帰られてそこで俺たちの存在を言いふらされでもしたら、今後の活動に支障がでてくるかもしれない。指名手配なんてされれば日向に顔を出せなくなるんじゃないか? それは嫌だな。まぁおじさんの為に俺が決めてやってることだから、後悔とかはないとは思うけど……。やっぱり不都合が生じるのはよろしくないよなぁ。


「馬車に隠れてたり……いや、逃げてたとしてもか」


 馬車の中に避難したというのなら全然構わないのだが、もし仮に逃げ出していたとしても、戦闘が始まりまだそんなには時間が経過してない。


 俺は周囲を見渡す。

 すると、道の続いていく先の方に、人影が見える気がした。

 いや、大分遠いが気のせいじゃないぞ、こちらから遠ざかっていってるように見える。道なりに進んで街に逃げおおせようとしたのか。はぁ、平地じゃなかったら完全に見逃してたな。かくれんぼは隠れる場所があってこそのゲームだよな。


「くらえ! ストライクシュート!」


 俺は地面に倒れているデブの頭部を思いっきり蹴飛ばした。

 頭部は体から分離し、人影に向かい一直線にすっ飛んでいく。

 ああ、つい手頃なところに頭があったからサッカーボール感覚で蹴ってしまった。殺さないって決めてたのに、まぁいいか。


 足にはかなり魔力を込めたので、頭部ボールは凄い勢いで飛んでいく。

 そしてそのボールは先を進む人影に見事ヒット。人影は景色から掻き消えた。

 え? うそ? 本当に当たっちゃったの? メチャクチャ奇跡起こったんですけど、え、俺天才か? 一応狙ったけどまさか当たるとは思ってなかった……半分冗談くらいで言ってたけどサッカーのセンス本当にあるんじゃないか俺、自分が怖くなるわ。


「は? おい……殺さないって……」


「ガタガタ言うなよ、人間失敗はつきものさ」


 というわけで俺のファインプレーにより始末しにいくという余計な手間は省けたので、今度こそ馬車を覗いてみることにする。


 扉に手を掛け、開けに掛かる。

 しかし押しても引いてもガタガタ鳴るだけで開かなかった。

 普通に考えて引いて開くタイプだろう。

 中に扉が開く馬車など見たことない。

 もしかしたら鍵がかかっているのだろうか。

 面倒なので蹴破ることにする。

 右足で思いっきり蹴ると足だけがずぶりと扉を貫通してしまった。

 一度引き抜き、出来た穴を持って乱暴に揺さぶる。



 ガコガコ、ボゴン!



 扉はそんな音とともに壊れ、割と綺麗に外れた。

 俺の怪力が勝ったようだ。


 そして中を覗いてみると……
















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