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59 おしおきだべ

 俺は道を進んでいた馬車を襲っていた。


「な、何しやがる!?」


 藍色の髪の偉そうな男が声を荒らげる。


「いや、ついな」


「チっ!」


 男は抜刀した。

 両刃で造りの良さそうなロングソードだ。

 卒のない構えだが、その表情は冷や汗をにじませて苦渋に満ちていた。

 うーん、やっぱ人間はいい顔をするな。


「なんだ、なんだっちゃ!?」


 すると周囲の異変を嗅ぎ取ったのか、馬車の中からもう一人何者かが飛び出してきた。そいつは鎧こそ着ているがかなりデブで醜い男だった。なんだ、こんな奴も護衛に参加してるのか? まともに戦えるのかよ、もうちょい筋肉つけろよな。思いっきりデブじゃなくて程よくぽっちゃりなのが癪にさわるんだよ。てか絶対その鎧特注だろ。大きいサイズの店でこしらえたな? そんなことバレバレなのによく平然と歩いて生きてられるな。デブって恐ろしすぎだろ。


「え、え、ルイくん!?」


「バカッ! 敵襲だ! 武器を構えろッ!」

  

 いきなりのことで状況を全く悟っていないデブに藍色の男が叱咤している。

 状況を悟っていないデブ。さとでぶだな。


「ぐあああ……くっ……」


「で、でもルイくんの手当てが先なんじゃないかなっ」


「バカか! 目の前にいんだよ張本人が! 敵がッ!」


「そ、そうだよねっ」


 気を取り直したように武器を構え直すデブ。

 はは、なるほどな。

 でもこれ以上馬車から出てこないってことは護衛はこれで全員と見ていいのかな? あとは馬車に乗ってたとしても護衛対象の人物くらいか。もしかしてこれ以上は誰も乗ってなかったり……? まぁいいや。


「いきなりで驚かせたかもしねないね。でも大丈夫だ、安心してくれ。俺には君たちを殺すなんていう意思はないのだ。俺は君たちをただ生け捕りにしたいという思い一つだけなんだよ。だから無駄な抵抗をせずに大人しく捕まってくれさえすれば、これ以上ぐちゃぐちゃのボキボキにならずに済む。さぁ、死にたくなければ今すぐ跪き投降しなさい」


 ふふふ、これぞ俺の作戦、言う事聞かなきゃ殺すぞ作戦だ。

 わざわざ半殺しにしたりしなくても人間には感情がある。思いっきり脅してしまえばいいのだ。恐怖で逆らえなくしてしまえば嫌でも支配することができる。


「……ッ」


 だがそんな俺の言葉に対し、男らは油断なく構えるだけだった。

 なんだよ、状況が分かってないのか? だったら、


「ほれ」


 俺は魔力のムチを振るう。

 ひゅん、と軽快な音が鳴り、デブの左手首から先が宙に舞った。


「ほへ?」


 これはデブのぽかんとする声だ。

 でもこうしてみるとやっぱり強烈な痛みはすぐには認知できないようだな。人間の体って面白いな。


「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 デブが信じられないくらい絶叫し、左手を抑えながら暴れ回る。

 はぁ、うるせぇな。そんなに叫んでもなんにもなんないだろ。まぁでもそれだけ効いてるってことだから俺の作戦的には悪くないのかな。それにしてはうるさすぎるが。


 デブが暴れるたびに、左手首からとめどない血液が溢れ、地面を濡らしている。うわ、ちょっと血がかかっちまった。割りと慣れっこではあるが不快なのは不快なんだわ、さいあく。


 流石にこれだけうるさく暴れられると収集がつかないと思い、地面を転がりまわるデブを再びムチで攻撃することにする。追い打ちを掛けるように振るわれたムチは上方からクリーンヒットし、バシッという鈍くいたいたしい音とともに、デブを地面へと叩きつける。因みにムチは太くして打撃攻撃にしている。


「あがあああああががががが」


 だがそれでも泣き止まず暴れ続けるデブ。

 結構いい感じに入ったと思うんだけど意外と元気だな。しつこいデブ。つこデブだな。


 俺はデブが泣き止むまでムチで殴り続けた。

 なんだろう、こうしてみるとなんか豚の調教をしてるみたいだな。なんでこんなことしないといけないんだろう……。


 何度か殴るたびに弱っていく感覚があり、叫び声も小さくなっていった。


「……ひふ……ひふ」


 そしてやがてほとんど動かなくなった。

 地面に横たわり、実におとなしいものだ。調教かんりょう!


 体中が内出血だらけで青々しく変色していて、ほんとに拷問後といった感じだ。左手からの出血もだんだん効いてきたのかもな。


「さぁ、分かったかな。逆らうとこうなってしまうんだ」


「な、な、なんでこんなことすんだよッ!」


 何もできずにいた藍色の男がつかかってくる。


「だから生け捕りにするためと言ってるだろ。大丈夫、すぐに殺したりはしないし、投降してくれればこれ以上痛い目に合わせたりもしない。投降の意思があるなら武器を捨てて両手を地面につけてくれ」


「……」


 俺の言葉に対し、逡巡を見せる男だったが、やがて諦めたのか、苦々しい顔でしゃがみ両手の掌を地面へとつける。うん、流石にこうなれば選択肢は残されてないよね。


 そして二の腕を潰された茶髪の男も、いつのまにやら俺を睨むようにして地面に跪き無事な方の手を地に付けている。


 ふふ、よしよし、とりあえずこれでミッション完了かな。流石は俺やればできるというわけだ。転がってるデブも一応降伏しているということにしといていいだろう。というかもう殆ど動けないだろうけど。


 さて、護衛を無力化したし、あとは馬車の中でも見てみますかね。


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