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58 恐ろしく早いのだ!


 俺は道をゆく一台の馬車に向かってつっこんでいく。

 位置的にはちょうど真横をとる形になっていた。いきなり俺みたいなのが走ってきたら怖いかな。でも、俺たちにとっては大事なイベントなんだ。手心を加えて失敗してもいけない、心を鬼にしていかせて貰うぜ。


 ダッシュで駆け寄る俺に最初に気づいたのは、馬車のすぐ横を守っていた護衛の男だった。


「な、なんだ?」


 明らかに驚いたような表情をみせている。あー、ごめんやっぱりそうなるよな。でもそんなにびびらなくてもいきなり取って食ったりしないから安心して欲しいんだ。


「と、とまれ!」


 そして馬車から数メートル離れた地点で俺は止まった。男が慌てて叫んでいる。流石に御者も気づいたのか、馬を停止させている。


「やぁ、こんにちは」


 俺は朗らかに挨拶した。初対面は笑顔が大事って学校の先生が言ってた気がする。なんでも人間の印象は九割がた初対面の印象で決まるというデータがあるとかないとか。その点でいくと、現在の俺は完璧なスタートダッシュを決めることができたのではないだろうか。ふふ、人生ちょろいな。ありがとう、先生。


「な、なんのようだ!?」


 対峙している護衛が明らかに警戒した様子で声をあげる。青い瞳にブロンドの切り揃えられた短髪をもつ青年だ。年は二十代前半くらいだろうか。腰に指した剣に手を掛けている。

 えー、なんでそんなに警戒される? 走っていったのがよくなかったかな? たぶんそれだな。


「はぁ、おいおい心配性にもほどがあるぞ」


 だがそこへ割って入る声があった。

 もう一人いた護衛がやれやれといった仕草をしながら寄ってきたのだ。


「ジャグズ……」


「白けてたからっつっていきなりのことにビビりすぎなんだよ。警戒は大事だがそれは敵に対してするもんだ」


 その男は藍色の短髪で二十代後半に見える男だ。余裕たっぷりな態度が鼻につくタイプの性格だ。


「大方道を聞きたいとかそんなとこだろ? で、我々になんのご用ですか」


 偉そうな男が棒読み気味で尋ねてくる。なんだかあれだな、クラスにいたら陰で弱いものいじめしてそうなやつだな。友達にはいらないやつだ。


 さて、どうしようかな。なんか適当におしゃべりでもして様子を見ようかと思ったけど、こいつの態度が妙に鼻につくな。俺若いやつ嫌いなんだよな。大して人生経験積んでないのに偉そうだったりするし、発言の全てが浅く聞こえるんだよ。はぁ、まあでもこんなやつに一々腹を立てても仕方ないか。他人は他人、自分は自分だ。気の合う人とだけ絡んでればそれでハッピーだよな、こんなやつ眼中にいれる必要はない。


「用はありますよ。でも聞きたいのがあなたたちの人数は何人ですか?」


「は? んなこと聞いてどうすんだよ」


 男が呆れた調子で聞いてくる。


「いや、護衛の数とかを知りたくてですね。何人ですか?」


「だからそれを聞いて……」


「うーん、そうですか、困りましたね。いや、僕はこれからあなた方を殺そうかとおもってるんですけど、その際あらかじめ戦力を把握しておいた方がやりやすいじゃないですか。まずないと思いますが万が一にも遅れをとってしまうと僕がぶちギレてしまうことになりますからね。それに全員の人数を把握しとくと後から死体を数えるだけでノルマ達成の確認もできますし」


 あれ? でもあれか、よくよく考えると生け捕りにしないとダメなんだっけ? 生気を吸いとるには生きてる奴からじゃないと無理って言ってたよな? じゃあ、あれか手加減しないといけないのか。なんだよ、気持ちよく戦闘しようと思ってたのに。まぁもともとは楽しむためじゃなくてやるべきミッションとして挑んだわけだからグズ言っちゃいられないか。わがままだったな、反省。


「……おまえ、からかってんのか?」


 男の顔つきが明らかに変わっていた。

 おちゃらけた雰囲気が警戒の色に変わっていくのが一目瞭然だった。

 うーん、手加減かぁ。どんなもんなんだろう。死なないギリギリをつけばいいってことだよな。ギリギリって例えば原型が分からなくなるまで殴りまくるとか? 体の至るところを機能停止させるとか。それだとワンチャン殺してしまいかねないか。首を絞めて窒息させれば意識を失いながら生きてる状態にならないだろか? 気絶させるなら腹パンとか首への手刀とかの方がお手軽かな? でも結局はその力加減が難しいという話になってこないか? うーむ、悩むが…………待て。本当にそんなことしなくちゃいけないのか? 冷静に実際そこまでしなくてもいいんじゃないだろうか。相手は本能で生きてる動物とかじゃない人間だ。そうだよ人間には感情があるじゃないか。


「おりゃ」


 俺はおもむろに茶髪の若い男の二の腕をとり、握りつぶした。

 くしゃりと簡単に潰れた。


「へ?」


 若い男はきょとんとした顔をしていた。

 なんだ全然反応してこなかったぞ。今の何気ない動作ですら見えてなかったのかな? しかも腕の感触やばいわ、くしゃりって。新感覚のスイーツか何かかと思ったわ。




「ギャアアアアアアアアアア!!」


 一拍遅れ、男の絶叫が響き渡った。

 なに、身を持って分からせればいいのさ。言うこと聞かないとこうなるぞ。ってね。

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