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54 ひょろろおおお~

 宙に浮くおじさんが今に至る経緯を話してくれていた。

 なんでも村が襲われ、死んでしまったと思ったらこうなっていたらしい。


「霊、ですか。なるほど」


「なんでそんなに驚かないんだよ。こんな奴おかしいと思わないのか?」


「うーん、まぁそういうこともあるのかなと。でも霊になったのは分かりましたけど、おじさんのやりたいことは復讐ですよね? なんであんな所で人殺しなんてしてたんですか? もしかしてあの人が盗賊の一人だったり?」


「いや、あれはただの通りすがりの一般人だ…………悪いことをしたとは思ってる。でもよ、復讐しようにも一つ重大な問題があってだな……実は今の俺の体じゃ、この世界に上手いこと干渉できないんだ」


「干渉? どういうことですか?」


「うーん、つまり触ったりだとかができねぇんだよ。今は何とか修行で三秒前後は干渉できるようになったんだが、それ以外の時間は何をしようにもすり抜けちまう」


「はぁ、なるほど」


 ようやくひとつ謎が解けた。俺が最初触ることができたのに、後からその感触がなくなったのは、おじさんが干渉を切ったからだったんだな。


「でもそれとさっきの殺された男とどういう関係があるんです? その能力を駆使すれば復讐し放題じゃないんですか?」


 むしろ壁を貫通できたり、攻撃するときは干渉して防御するときは透けるようにすればメチャクチャ強いんじゃないかと思うんだが。俺の攻撃ですら通用しないというのに。


「それができれば苦労しねぇよ。この体にも明確な弱点が何個かあって、その一つが活動時間に限界があるってことだ。霊として動くのにも勿論そうだが、意識を保ったりするのにも生気が必要でな。こればっかりは生きてる奴からしか補給できない」


 なるほど、つまりガソリンのようなものなのかな? 動くための力は自分で補充しないといけないと。


「それでさっきの男を殺して生気を吸い取ったというわけか」


「ああ、それにそれだけじゃない。もう一つ、俺の母体になる体も探してるんだ」


「母体?」


「とある本に書いてあったんだけどな、一節によると、霊となった存在は魂を失った他の肉体に乗り移れるらしい。ただその確率ってのは相当低いってことで、魂と肉体の親和性がかなり高くないと難しいらしくて……もう何人もチャレンジしてきたんだが、一発も当たりなしだ」


 おじさんが肩を落としながら言う。


「なるほど。それで自分と同じそこそこ年のおじさんを殺して試していると。でもそれならこんな人通りの悪いところじゃなくて、街とか人がいっぱいいるところでやった方が効率がいいんじゃないですか?」


 まとまった人口がいればとにかく纏めて殺しまくって乗り移れるかいっぺんに試せばいいのにと効率厨な節がある俺的には思ってしまう。


「もちろん最初は近所の街でやってみたさ。でもそう甘いものじゃなかった。だんだんと俺の存在がバレてきて問題になってしまったんだ。何人もの男が不可解な死を遂げるってな。最初はそれでも強引に実行してたんだが、流石に騒ぎになりすぎて対策されてきちまってな。上の機関かなんかも動き出して霊の弱点なんかも知ってたりして、とにかくもうおたおたとこんな所にはいられないとなって、人気のないような場所に引っ越してきたわけだ。ここでなら通りかかった人間が音信不通になる怖い事件程度で済むだろうしな。外の世界は脅威だらけなわけで、そうおかしな話でもない」


 うーむ。なるほど、そんな事情があったのか。

 つまり俺はその拠点をたまたま見つけてお邪魔してしまったということだったんだな。

 俺からしたら適当に平原を走り回ってただけだから、見つけたのは本当にまぐれなんだけど。凄い運命。


「そういうことだったんですね。そうやってここまで頑張ってきたっていうわけですか」


「ああ。そうだ。……はぁ。でももういいかな」


 てっきりだからこそ本気でやっていかないとけない、みたいになるのかと思いきや、出てきたのは投げ出し気味のため息だった。


「正直言うともう限界を感じてたんだ。そもそもがうまくいく保証なんてどこにもないし、人を殺すなんて、村のみんながいたとしたらどんな顔されるか……俺に向いてなかったのかもしれない。復讐なんて結局は俺の自分勝手な考えで、誰も望んでなんか……。いい区切りだ。これがいい区切りなのかもしれない。こうやってお前さんに出会ったことがな」


「俺に?」


「ああ。お前さんに本音を話せて少しスッキリしたし。今まで誰も相談する人がいなくて、こんなに聞いてくれたのはお前さんが初めてだった。本当ありがとよ。これでもし俺が消え去っても、俺の生きてた証は一応お前さんの記憶には残り続けるってわけだ。はは、なんか本当にスッキリしてきたわ。後悔はない……といえば嘘になるが、こういう最後も悪くはねぇのかも」


 おじさんは笑っていた。

 でも泣いていた。

 どういう感情がそこにあるのかは正直よくわからない。

 でも俺からしてみればそんなことでいいのかと思ってしまう。

 俺が逆の立場なら、もっと、難しいけどもっとあるんじゃないかと。こんなんで諦めていいのかと思ってしまうのだ。



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