51 ハガネール
俺は地下の部屋にあったハシゴを登り、地上へと出る。
ダークエルフの男に森の外へ出る道を案内してもらったのだ。
地上に出るとそこは室内だった。
コンクリートで囲まれたような六畳ほどの粗末な部屋だ。
壁はところどころ剥がれ落ちてしまっており、地面に瓦礫が散らばっている。
「ここは?」
「ミゲル山と呼ばれる山の麓にある場所です。近くにははぐれダークエルフの集落がいくつかあります。少し離れた場所には人間の住処があると聞きます」
同じくハシゴを上ってきた案内のダークエルフに尋ねたところ、そのような返答が得られた。
「その人間の住処に行くにはどうしたらいいんだ?」
「それは簡単です。この山から離れるように移動すれば良いのです。そうすればそこからは人間の敷地内です」
「人間の街とかに行くにはどうすればいいんだ?」
「申し訳ありませんが、私は訪れたことがないのでわかりません。それに関しては人間であるあなたの方がよくご存知なのではありませんか?」
そう言われてしまうが、俺も同じく人間の街には行ったことがないのでよく分からなかった。まぁここまで案内して貰っただけでもありがたいので全然オーケーだ。
「分かった。街は適当に探してみるよ」
「はい。それでも私はこの辺で失礼してもよろしいですか?」
「うん、いいよ。ここまでありがとう」
俺の言葉に対し、ダークエルフは静かに微笑むと、ハシゴを降りて地下へと潜っていった。元いた森の中に帰ったのだろう。
……さて、とりあえず順調にことは進んでるな。と言ってもまだまだ人間たちのもとに辿り着いたわけではないから安心とはいかないけど。森での生活は長いので最悪適当に眠ることとかはできるが、いかんせん食料がどうなるか分からない。早めに着くに越したことはないよな。
ということで、コンクリートの部屋にあったボロボロの木の扉を開けて外へとでる。木の扉はかなりがたが来ていたらしく、押し開けている途中でボロっと外れてしまった。やばいやっちまったか。そんなに力は入れてないと思うんだが……でもこんなに劣化してしまうほどこの場所の管理が甘いってことだよな? あまり利用されてないのだろうか。まぁどうでもいいか。
本当にどうでもいい考察をしながら外へと出ると、そこは森の中だった。でた、また森だ。俺はこの世界に来てから今のところ森にしか踏みれていない。あー、早く街か何かの景色がみたいよう。
ただひとえに森とは言ってもその質は明らかに違った。木々の種類がこれまで見たことのないようなものだったのだ。前いた森よりも何というか少し弱々しく細い感じがする。長く暮らしていたからこそ分かる、絶対気の所為ではないはずだ。
やはりかなり離れた場所に来たのだと自覚しながら、俺は言われた通り山から遠ざかるように歩き始める。と言ってもまだ山の中のようなので、斜面を下るように進んでいるだけだが。よくわからないのでこうするくらいしか考えが浮かばない。
因みにコンクリートの建物は後から振り返ってみてもその存在を確認できなかった。やはり外部から見えないように特殊な細工がされているのだろう。これだと今後もう訪れることはできないかもしれないが、行く予定も特にないので別に構わないと割り切ることにする。
そうして歩みを進めて十分程。
特に景色は変わらず一辺倒な移動が続いていた。
そのぐらいからよくよく考えれば歩いて移動する必要もないことに気づき、強化した体で走って移動を進めた。
そして走り初めて五分ほどが経過した頃。
だんだんと木々がまばらになっていき、やがて、開け放たれた平地へと出ることができた。
「おお、凄い……」
そこは本当にただの平地だった。低い草木とちょっとした岩なんかが見えるくらいの、何でもないような風景だったが、それでもこれまでずっと森ごもりだった俺からしてみればとても新鮮で、開放感が素晴らしいと感じてしまった。
ますますテンションがあがった俺は、平地を笑いながら駆け出す。スキップを踏み、回転しながら晴れ渡る空に挨拶をした。空を飛ぶ奇怪な中型サイズの鳥がバサバサと通り過ぎていく。やばいな平地もかなりいいかもしれない。今後は平地を拠点に活動してみるのも悪くないかもしれない。
ふと背後を振り返ってみると、盛り上がった山が背後に霧がかって見えていた。視界の端の方まで続いているように見えるので山というよりは山脈と言った方が近いのかもしれない。いつの間にこんなにも進んでしまっていたようだ。
「わおーん!」
俺は何となく気分でハイエナを意識して地面を四足歩行で駆けた。サバンナ的な何かを意識してみたんだが、どうだろうか。
「ん?」
そしてしばらく走っていると、少し離れた場所に一件の小屋のようなものが見えた。なんだろう、こんなところにぽつんと。いやよく見ると小さい小屋と大きい小屋とで二件あるな。こんなところにあるってことは誰かがあえて作ったんだろうから、何か使用目的があるのだろう。気になるな……ものの試しに覗いてみるか。




