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47 星に願いを

 俺はとにかく攻撃しまくって相手の体力を削り切る作戦に出た。

 なぜこんなことをやっているのか自分でも分からない。

 とにかく金眼のダークエルフの男と戦いたいという思いでしつこく付きまとっている。


「お前、まだ、やるのか」


 金眼のエルフが何か言ってきてるが、無視して攻撃し続ける。


「一旦……だまらせる……!」


 そんなやり取りを数回繰り返していたら、やがて男もしびれを切らし、攻撃に転じてきた。

 数人に分身したかと思うと、その全員が消し飛ぶような速さで俺に斬りかかってきたのだ。

 ああ、なんだよそれ。一人でさえ動きを上手く捕捉できないのに、そんなに大人数で来られたら尚更無理じゃないか。

 仕方ないので、俺は全身に魔力を纏い、一旦完全に防御に徹することにした。

 男の攻撃が次々にヒットする。

 しかし俺の体には傷一つつかない。

 確かにスピードは素晴らしいが威力という面で今ひとつなのかな。よくよく見てみると纏っている魔力の量も大したことない気もする。一応目とか急所を狙ってきているのだが、魔力は体中満遍なく張り巡らせているので俺に死角はない。


 ……っていうか鬱陶しい。


 俺は魔力をムチ状に変化させ、周囲にハリケーンを作った。といっても大して強風が吹くわけでもなく、ムチがとぐろを巻くように高速回転しているからパッと見そう見えるというだけのことだ。分身は次々に弾かれ、またはハリケーンを避けるため大きく後ろに下がる。今思ったけどこの分身たちって実態があるんだな。攻撃も普通にちゃんとした威力で放ってきてたし。だとしたら単純に大量の人数で攻撃できるってこと? なんだそれ、インチキじゃん。チートすぎるにも程があるな。


 でもまぁ一人一人の強さはそうでもないわけで。

 俺からしてみればいくらでもやりようはあるのですよ。


 ただ一気に方を付けてしまっても面白くないので、とりあえずムチで蹴散らすだけ蹴散らすことにした。やがて分身たちは攻撃をしてこなくなった。


「本当に何が目的だ……?」


 分身の一人が喋る。

 それが果たして本体なのか、それとも分身に喋らせているのか。俺には知るヨシはない。だが知る必要もない、何がどうあれこれから調理してしまうのだから。

 でもおかしいよな、調理って言葉戦闘時に使う言葉では絶対にないのに。調理は料理の時に使う言葉だろ? なんでその言葉をわざわざチョイスしたんだろう。


 目的、目的、かぁ……。最強になるため? いや、それなら調理なんてせずにとっとと倒してしまえばいいだけの話……


 ああ、そうか。俺、この状況を楽しんでるんだな。

 いや、あるいは名残惜しんでしまっているのかもしれない。

 俺は戦いを通して無意識のうちに気づいてしまっている。この勝負はもう決まってしまっているのだと。俺が求める最強の器に、この男が当てはめられることはないのだと、どこかでそう思ってしまっていたのだろう。


 まぁそりゃそうだよな。ここまで来て物足りませんじゃ帰るものも帰れなくなるよな。だから粘ろうとした。でもそれを認識してしまえば今度は逆につまらなくなる。こんな奴らの為に、時間を犠牲にすることもないだろうと。こんなヤツらとっとと蹴散らし、次のステージに行こう。


 俺は自分の内心への理解を深めることで、意識が変わった。

 やるべきことが明確になった。

 もう迷わなくたっていい。俺は突き進むだけだ。


「おら!」


 俺は金眼の男へと例の如くムチを放った。

 だがそのムチの放ち方を工夫してはどうだろうか。

 先程は仮の竜巻を造り、それをぶつけることで攻撃した。

 だから避けられた。

 ならば……竜巻の中に閉じ込めてしまえばどうなるのか。


 俺はムチを長めに生成し、大きく渦を描いた。

 あいにく大広間であるので、必要なスペースは十分に確保されている。


 そしてムチで男を囲む。

 竜巻を作り、だんだんと円を狭めていく。

 狭めきるる直前で、男が勢いよく竜巻から飛び出しきた。

 一か八かといったところか。

 しかし俺のムチが背中にクリーンヒットし、ばしっといったような鈍い音が響き渡る。

 そりゃ自分から走ってあったのだ。何が起ころうと自業自得ですよね。


 俺はふらついた男にさらにムチで竜巻をつくった。

 男は再び内部に綴じ込まれる。

 今度は締まり切る前よりだいぶ余裕を持って突っ込んでいたが、やはりかなりのダメージは負うようだ、かなり顔をしかめていたりする。

 だがまだまだこんなんじゃ終わらない。

 俺は男が抜け出した直後に、次々に竜巻をかぶせ続けるということをしてみた。

 男は心なしか辛そうな顔だった。

 俺に対し何かいうこでもないのかなと。ないのか? まぁどうだっていい、これを死ぬまで続けている。心が折れるか、体が折れるかのどちらかだ。


 俺はひたすら竜巻に閉じ込めることをやり続け、二時間後くらいに抵抗できるようなコンディションでもなくなったのか、竜巻がしまりきっても、一向に出てこなくなった。


 あとで竜巻を消してみると、もみくちゃで擦り傷だらけになった男が発見された。

 こうなる運命だったのさ貴様は。こうなると決まっていたのだ、はははははは!

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