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39 つぶつぶ

 エルフの国の中央へささやかな犠牲を払いながらも辿り着いた俺たち。

 なのでこれからついにクーデターの総本山へと駆け込もうとしていた。


「まずは状況偵察からだな」


 俺たちは現在訳の分からない林のような森のようなとにかくよく分からない郊外にいる。とりあえず中へと入っていかないことには何も始まらない。


「そこを右に曲がってください」


 よって現在この国の王女である少女、ニニデリアの案内で内部へ進入しようとしていた。

 話によれば見晴らしのよい場所に行けるルートがあるのだという。


「お、壁みたいなのがあるぞ」


 森のような場所は一瞬で抜け、その先の草原地帯を通る際に前方にかなり高い石造りの壁のような物が見えた。あれを超えていくのだろう。


「こちらへ」


 しかしニニデリアに案内されたのは壁から少し離れた場所にある平地の部分だった。

 ニニデリアが立ち止まり、何もない場所に指を指す。

 おちょくられているのかと思い大きな声を出そうとしたが、彼女がその部分に乗るとストンと土を貫通して下へと落ちていった。

 俺も続く。

 するとすぐ下には空洞のような場所があった。

 上を見てみると、青白い魔法陣のようなものが張り付いていた。


「ここは……?」


「まぁ隠し通路のようなものですわ。王族や一部のエルフのみ伝えられている道です」


 話を聞くになんでも万が一の時の為に避難経路として至るところに用意されているらしく、本当に極少数の者にしか教えられていないという。ニニデリアが脱出した際も、同じような極秘の経路を使ったのだとか。


 俺たちは細い地下通路を進んでいく。

 通路の壁には一定間隔で青いトーチのようなものが焚かれており、明るいというほどではないが足元を見通せる程度の光量は確保できていた。


 そして途中何度か枝分かれてしていた交差点なども、彼女の案内で易易やすやすと進んでいき、十五分ほど歩いて、終点へと辿り着いた。

 下にへんてこな直径二メートル程度の魔法陣が描かれている場所で、その上に乗ると床が上へと動き出し、エレベーターの要領で上へ向かい登っていった。

 謎にハイテクな仕掛けを通過し、小さなハシゴを使い天井から外へと出る。この天井も石のようなものでカモフラージュされており、外からはただの石の地面が広がっているだけの外観になっていた。確かにこれは知っていなければ絶対に気づけない。


「おお、確かにすごい景色だな」


 辿り着いた場所は塔の上だった。

 日本のビルでいう十階建てかそれ以上はありそうなほど高い一本の塔。俺たちがいる場所はその頂上と呼んで差し支えないだろう。ここより上にあるのは三角の屋根だけだ。俺たちと同じ階には巨大な青銅の鐘がぶら下がっている。周囲は四本の柱で屋根を支えているだけなので、三百六十度が自由に見渡せた。


「……一応時計の塔というこの国で二番目に高い場所ですわ。昔は何かの行事で使われていたとかいないとかですが、最近は完全に国の風物詩としての役割のみになってしまっていますね」


「へー、そうなのか。あっ! あそこに人がいる!」


 俺は動く影を見つけて声を上げた。

 眼下に広がる風景はまさに街といった感じのもので、人工で建てられたような建造物がギッシリと並んでいる。ただ所々には、やはりエルフの街ということなのか不思議な形の木々が生えており、それがいいアクセントなった特徴的な街並みが完成されていた。


 そしてそんな中、俺の大して良くない目が一人の人影を捉える。

 豆粒のような大きさにしか見えないが、おそらくフードを付けているんだろうなということぐらいは分かった。


「あれは……おそらくダークエルフですわ……」


 ニニデリアが険しい顔をしながら呟いた。


「嘘だろ、この距離で見えるのか?」


「ん? ええ、かなり見えづらいですが、顔の形くらいは問題なく」


 すごいなこれを見えるって、この少女の視界にはどんな景色、世界が映ってるんだろうな。多分色んなものが物凄くくっきり見えてたりするんだろうな。一回変わってみてほしいぜ。


「因みに聞くけどダークエルフってこの街に普通に住んでたりするのか?」


「そんな訳ありませんわ。エルフとダークエルフの住まう地は種族間で全くもって異なります。本来この街には一人たりともいないはずです」


「なるほどな、でもそれがいると。となるともうこれは……」


「…………」


 俺の言葉に少女の顔の険しさが増す。

 まぁこんなに余裕ぶってほっつき歩けるくらいの状況、だとすると……もう、この街は、変わってしまっているのでは……


「まぁともかく突撃してみないことには分からないだろ、あいつをボコして情報を聞き出してもいいが……どうせなら王城に突っ込んだ方が早いか?」


 そもそも王城があるのかどうか知らないが、こいつのお父さん、つまり国王のいる場所にいけば、全てが分かる気がしている。


「……それでしたらあそこになります」


 少女が指を指す。

 すると確かに日本で言う国会のような立派な建物が遠くに見えた。

 その建物の周りには他にも威厳さを感じるような建造物がいくつも並んでいる。

 なるほど、あそこが重要拠点ということは間違いなさそうだな。


「じゃあとりあえず突撃しますか」


 俺はニニデリアにそう提言した。

 結局そうするしかないだろ? 早く終わらせよう。




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