表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/77

37 輝きに包まれ優しい風が吹く

 ガンチュルというエルフの熱い男から生まれたのは、一台の馬車だった。


「え? どういうこと?」


 俺は思わず思ったことを口にしてしまう。

 魔力を使う姿が見られたので、おそらくは魔法の一種なのだろう。だがそのからくりがまるで分からない。俺のように炎に変換する、とかなら分かるが、物質を生みだすとはこれいかに。


「ふぅ……」


 そうこうしているうちに、ガンチュルなる男から輝きが消え、通常のガンチュルに戻ってきていた。


「ど、どどどどどうでしたか!? 久々の私の能力、見ていただけましたか!?」


「ああ、しっかり見ておったぞ。やはりこれを頼めるのはお前の他におらぬな」


「ぐあああ! ありがたき幸せー!」


 ガンチュルさんは物凄く恍惚な表情を浮かべながら天を仰いでいた。


「どういうことなのです?」


 ニニデリア姫が長老に質問していた。


「あぁ、これはこの者の能力でして、対象者に適正のある装備を一つだけ生成できるというものなのです」


「装備?」


「はい、創造系魔法などと呼ばれている類のものらしいのですが。私もそう詳しくはありませんが、その中でも物質創造系統に属するなどと伺ったことはあります。ま、とにかく大変レアな魔法の使い手ということです」


「へー、魔法にも色々種類があるんだな」


 俺は素直に感心してしまった。ん? でも待てよ、装備を生成するって言ったよな? でも今実際に生成したのは装備というか馬車だぞ。ニュアンスの違いとかなのだろうか、いやどう考えても馬車は装備じゃない、乗り物だ。


「なるほど、でもその説明ですと装備を生成するのに誰か対象となった人がいるということになりませんか? あとそれが馬車というのもどうにも納得いかないのですが」


 ニニデリアさんが物凄く芯を食った質問を飛ばしてくれた。そうそう、まさにその部分が気になってたんだよ、痒いところに手が届くとはこのことなのだろうか。物凄いグッジョブクエスチョンだ。


「ええ、まぁ初見の方は戸惑われてもおかしくはないでしょう。今回は私を対象に能力を行使し、その結果馬車が誕生したのです。つまりどういうわけか私にあう装備は馬車だったということにもなります」


 ふーん、適正のある装備を作る、か。随分と面白そうな魔法だな。いいな、俺もそういうワクワク抽選感のある能力が良かったな。こんなことなら天国でもっと真剣に能力について悩んどけば良かった。こんなユニークな能力とくらべてしまったら、炎魔法なんて何の面白みもないクソ能力じゃんか。なんだよ、炎を出して攻撃するって。そんなの誰でも思いつくわ。


「まぁとにかくこれを使えば中央まで相当にお早く着かれることが可能になるかと思います」


「あのー、その能力って私にも使用していただけたりはできませんか?」


 ニニデリア様が思いついたとばかりに尋ねていた。

 ああ、確かに。今回能力の対象は長老さんだったが、これを彼女に変えれば彼女に適正のある装備を新たに生み出せたりもするんじゃないか? 説明を聞く限りだとできそうなものだが。


「ああ、それですが……」


「そ、それは勘弁してくださいっす!」


 ガンチュルなる男は本気で土下座していた。


「どうしてですか?」


「この魔法は物凄い力を使ってしまうんですよ! 、撃とうにも三日に一回ほどでしかチャージされなくでですね。今一回使ってしまってもう今日はこれ以上使うことはできないんっす! 本当に申し訳ないっす!」


 全力で誤っていた。よく見てみれば額や首筋に薄っすらと汗が浮かんでいる。さっき走って来たときにの疲れが今になってきているのか? いや、走った直後を見る限りはそんなに疲れている感じはしなかったよな。なんなら汗すら書いてなかったんじゃないだろうか。となると今こんなに疲れを見せている理由は、一つ、ということになるのかな。魔法の反動ってここまでのものもあるんだ。


「いえ、別に攻めているとかそういうことではなく」


「うむ、それにこの魔法というのは対象者のことを一定以上理解しておかなければ発動しないとのことです。ですので最初は私も対象者となるために、彼と三日三晩生活をともにしたものです」


「ああ、そうそう! あの時は楽しかったなぁー!」


 こんな熱い男と共同生活だって? 駄目だ、想像するだけで疲れてくる。よく長老はそんな道を選べたな。リスクよりもリターンをとったということなのだろうか。


「まぁ、能力のことに関してはいろいろ分かりました。にしてもこの馬車は誰が引くんですか?」


 少し話が脱線しかかっていたので、それとなく戻しにかかる。

 俺たちの目標はいち早く中央に駆けつけることだ。それをこんな所で時間を潰していてはもったいない。


「はぁ、何おっしゃっているのです? どう考えたってガンチュルさんに決まっていますわ」


「いえ、中央までは私が引いていきましょう」


 そう言い、馬車の元までいき、前の取手を掴んで引く体勢に入ったのは、長老だった。


 え、待って。まさかの……ちょ、ちょうろおおおおぉぉ!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ