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31 イナズマイレブン

「うらああああぁぁ!」


 激高したムチの男が俺めがけて突っ込んでくる。

 なんか想像以上に煽りが効いちゃったみたいだな。俺もそんなに悪気があってやったわけじゃないんだけど、ちょっと魔が差したというか、やってみたくなっただけなんだ。許しておくれ。


 男はさっき以上にスピードの乗った拳を突き出してくる。

 なるほどこれが本気ってわけか、確かに身体能力は凄いな。その辺の相手になら大概負けないだろう。でも肝心の攻撃が一辺倒じゃな。これじゃ避けて下さいと言っているようなものだ。



 ほいっと。



 俺は再び体を反らして避けた。

 毎回避けるだけだとアレなので、今回はカウンターで足引っ掛けを食らわしてやった。


「うっ……!」


 俺の足引っ掛けを食らった男は完全に体勢を崩しふわりと宙に浮く。

 ふん、隙を見せたな!


 俺はニヤッとすると男に素早く接近し、拳を構える。

 バカの一つ覚えみたいに殴ってきやがって、本当の戦闘ってもんは駆け引きが大事なんだよ。小技で隙を作って、場を整えてから必殺の一撃を叩き込む。俺も一番最初は何も分からなかったが痛い目を見てきて少しずつ学んだのさ、それをお前にも教えてやるからな。さぁ食らえ!


「ん?」


 俺は何かが迫る気配を感じ取り、身を引く。

 すると直後、俺がいた場所をサッカーボールくらいの大きさの光球が通過した。

 通過した光球は地面に当たるとバンと弾ける。

 泥のようなものが辺りに飛散した。なんだ、泥だんご?


 何かと思い飛んできた方向を見てみると、そこには先程話に入ってきていた優男が立っていた。

 なるほど、協力プレイってわけか。

 面白い。

 戦闘のしがいがあるってもんじゃないか。


 あの優男、まぁ確かにいいコントロールでスピードもかなりのものだった。しかし俺との距離はそこそこある。カバーするにもワンテンポ遅れるだろう。俺も魔法を撃つことがあるから分かるが、離れていると意外と当たらない。今の俺は単純に相手に接近しただけで殴るまでにも多少勿体ぶったため狙いもつけやすかったかもしれないが、不規則に動けばそう命中することはないだろう。

 よし、だったらアイツは一旦無視だ。目の前のムチの男と一対一をして素早く仕留める。優男はそのあとじっくり料理すればいい話だ。


「おっしゃー!」


 俺は一気に踏み込んで加速した。


「……ぐっ!」


 男はようやく地面に着地し、受け身を取っているところだった。

 いい体術だな、柔道部にでも入っていたのか? まぁ関係ない、その体制からできることなんて限られてる、そうだな、今度は蹴りでも加えてやろうかな。サッカー対決だ!

 そう思いフォワードの気分になりきったところで、男は体勢を崩したまま全身のバネを使い後ろへと跳ねた。

 なんだ、できるだけ距離を取ろうってか? そんなの時間稼ぎくらいにしかならないぞ、再び距離を詰めてしまえば終わりだ。


 そう思い俺は再度踏み込む。


 しかし男は諦めず、空中で素早く体勢を整えると、俺から距離を取りながらもムチを伸ばし攻撃してきた。なるほど、逃げながら攻撃する、そんな使い方もできるのか。ムチも案外奥が深いのかもな。


 ムチは複雑な軌道を描きながら俺を捉えんと襲いかかってくる。


 そして気がつけば再び優男から放たれた光球も俺のすぐ横まで迫っていた。


 ……うーむ、息を合わせたかのような二重攻撃。しかもそれぞれ別角度から。コンビネーションとはこのことなのだろうか。すごく勉強になるな。一辺倒とか言ったがちょっと舐めてたかもしれない、心の中で誤っておこう、ごめんな。でも……お遊びはここまでにしよう。


 俺はまず襲いかかってくるムチを魔力の爪で切り裂いた。

 面白い武器だが所詮はムチだ。ちぎれてしまえばただの燃えるゴミだよな。


 そして飛んできた光球はバク宙しながらムチの男に向かいシュート!

 言っただろ、今の俺はサッカー選手なんだ。飛んでくる球はゴールに突き刺してこそなんぼなのさ。



「スーパートルネーーーーーード!」



 ムチの男に向かって放たれたサッカーボールは、体勢を立て直せずにいる男の顔面に見事ゴール。大量の泥を撒き散らしながら男は地面に沈んだ。何の魔法かはイマイチ分からなかったがかなりの質量はあったみたいだな、これでまず一点リードだ。


 次に俺は泥だんごを飛ばしてきた優男の方を見据える。

 男は明らかに狼狽した様子で、後ろに後ずさりしていた。

 なんだよ、戦意喪失か? だが悪い、試合の途中棄権は認めてないんでな、欠員状態でも試合続行してもらうぜ。


 俺はフィニッシュを決めるべく、男の方へとロケット発射を決める。

 凄い速度で男に追いついた俺は、渾身の蹴りを放った。今度はお前がボールだ。


 男は何かブツブツと唱えていたが、俺の速度にはついてこれず、脇腹に右足シュートが完璧な角度で炸裂。男はヤバい吹き飛び方で、空の向こうへと消えていってしまった。あー、ちょっと本気で蹴りすぎたかな。意外と体重も軽かったから凄い飛んだわ。野球じゃないんだから場外ホームランは意味がないよ。やっぱりサッカー向いてないのかもな俺。部活は柔道部にしておこう。


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