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27 まえ! まえ! まえ!

 彼女の国の領土とやらに進入し、橋を渡った先にある木々が乱立する場所に入る。

 また森かよと思ったが、間もなくして別の景色が見え始めた。


「これは……」


 芝を掻き分けた先に見えた光景に、俺はおもわず感嘆のため息をついた。

 そこには様々な形をした建物が並んでいた。

 細長かったり横に太かったりするいろんな木々に扉が着いていて、家みたく改造されている。それ以外にもかぼちゃのような形の家や、ツタにぶら下がって観覧車のボックスみたいな感じになっている建物も見えた。


「おお……エルフの暮らしってこんな感じになってるのか」


 なんと言えばいいのか、まず人間が作るような建造物とは全く違う。

 おとぎ話の世界というか、地球ではまず見られないような奇怪な建物が並んでいた。うーん、まさにファンタジーって感じですな。この世界に来てそれっぽいもの初めて見た気がするわ。ここまでは完全にジャングルでの修行だったし。


「ここは辺境の地ですわね」


「辺境?」


「国の中でもいくつかの地域に分かれていて、その地域がさらに集落単位で分かれていたりするのですが、そのどこかの集落かと思いますわ」


 俺の横で同様に前方を覗きながら少女が解説する。

 なるほど、要するにここは田舎の方ってことなのかな。


「あんたがいた場所はどのくらいの距離にあるんだ?」


「……中央はここからですとまだ大分離れた先になりますわね。歩きですと半日はかかる距離でしょうか」


「大分遠いな」


「ただマフマカ便が使えればそこまで時間はかからないかと思うのですが……」


「マフ……マカ? なんだそれ」


「え? 知らないですの? 足腰が強くて人懐っこい魔物ですけれど……」


 知らないのが意外いたいな目で俺を見てくるが、当然この世界に来てろくに異世界文化に触れてない俺からしてみれば分かるわけがない。そもそも人の街に行ったことすらないのだ、エルフの街の常識なんて知るわけもなかった。


「知らないがそれがあれば早く着くってわけか?」


「そうですね、動いていればの話ですが」


「じゃあそれ乗れるところまで連れて行ってくれよ」


 そんなものがあるのなら利用しない手はない。

 俺は早く事の中心部に向かいたいわけだからな。


「うーん、そうですわね……どこにあるんでしょう」


「え、分からないのか」


「あのですね、いくら勤勉な私だからと言っていちいちこんな辺境の街並みまで覚えているわけないでしょう。大体の地形や規模は存じていますが」


「何でもいいけど早くクーデターの中心に行きたいんだ。抱えてダッシュが早いならそっちでいこうぜ」


 俺だけ走っていってもいいが、いかんせん場所が分からない。言葉で教えて貰った所でまた迷子になっても面倒なだけだし、付き添って貰ったほうがやはり確実だろう。折角知ってる人がいるのだから活用しない手はないよな。


「絶対にやめてくださいます!? 今後私の許可なしにすれば怒りますからっ」


 少女は慌てて拒否した後、急ぐようにして民家のある方に歩き始めた。余計なことをされる前にその魔物とやらを探そうという魂胆なのだろうか。

 まぁあるならそっちの方がいいし、探すとしますか。

 俺も彼女に続いて移動し始めた。



 民家の立ち並ぶ間を歩いて行く。

 やはり全ての民家がとても特徴的な造形をしており、自然と共生といった感じで実にエルフらしい様相だった。にしても人が全然いないな。民家はそんなに密集しているというわけではないが、それでも道を歩く人が一人くらいいてもいいと思うんだが。どこかに避難でもしてるのか? それとも全員家に籠もってるとか。


「不自然なほどに人がいないけどこんなものなのか?」


「いえ……そんなはずはないかと思うのですが……」


 やっぱりそうだよなぁと疑念の心を抱いた瞬間、遠くの方からギャああああッ! という悲鳴が耳に飛び込んできた。なんだ……? この声色は男? 何か起こってるのか?


 何にせよただ事ではなさそうだ。それにここに来て初めて認知した人の存在。駆けつけないわけにもいかないだろう。


「え、今のは……」


「おさきぃ!」


「あっ!」


 俺は突然の悲鳴に固まってしまっていた少女を置き去りに走りだす。

 こういう所で一歩が動けるかどうかが出来るやつかそうじゃないやつかの違いなんだよ。これからどうせ駆けつけるんだろ? 同じことをするんなら判断は早いほうが良いに決まってる。その分余裕もできるし、早く辿り着くことで何か別の選択が取れるかもしれない。


「キキキー!!」


 俺は口で急ブレーキをした。

 進む先に広がる、とある光景を目にしたからだ。


 そこには大勢の人がいた。

 殆どの人が手を綱か何かで繋がれ、列を作ってトボトボと歩かされている。

 そしてそれを見守るように緑色のマントを着た偉そうな奴らが数人立っている。


 場所はなんてことはない普通の道で、奥からどんどん繋がれた人が現れていた。

 ……なんだろう、こんな光景をどこかで見たことあるような……。


 俺は何かの映像で見た、戦時中捕虜が移送されているシーンを思い出していた。



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