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21 BBQ

 俺の眼前に広がるのは、巨大な湖だった。


 視界一杯に広がる、水色の美しい水面。

 周囲になびく草原の黄緑色との対比が、その美景をさらなる高みに押し上げている。


 日の光をキラキラと反射している様はとても幻想的だった。

 うーむ、風光明媚とはこのことですな。市販の適当なカレンダーかなんかの表紙を飾っても違和感ないだろう。


「まさかこんな場所があるなんて……」


 実はいつしか見つけた川を上っていくようなルートで今日は探索していたのだが、まさかこんなところから繋がっていたとは。びっくりだわ。


 何となく眺めていると、そこそこ離れた湖のほとりに二頭のサイのような生物がいるのが分かった。リラックスした感じで水面に口を付けている。

 しかし遠くにいる俺の存在に気づいたのか、しばらく目があった後、ふいっと視線を逸らされ早足でどこかへ去っていってしまった。

 どうやら森の生き物たちの憩いの場にもなっているらしい。


 そんな様子を見せつけられると俺も真似したくなってしまったので、勢いよく近づいて水を飲んでみた。

 ごくり、ぺろ。うまい。


 うまかった。



「せっかくだしちょっと遊んでいくか!」


 初めての湖に完全にテンションが上ってしまい、俺は湖にダイブし遊んだ。

 得意のバタ足で水をきって進む!

 うーん、すごい。湖なのに水もかなり綺麗だし、マジで気持ちいい。


 あまりの楽しさに時間を忘れて遊んでしまった。

 気づいたら夕方になってしまっていた。


「ふぅ、少しはしゃぎすぎたかな」


 子供でもあるまいし、少し恥ずかしいな……まぁいいや。

 因みに俺が泳いでる際、俺を狙って何匹か獰猛な生物が近づいてきたりもしたが、怒りの制裁を加えておいた。他人が愉悦に浸ってる時に邪魔しちゃ駄目だよね。出来上がった死体はとりあえずほとりに積み重ねている。


「夕飯はあいつらの誰かにしますか」


 確か牙の誇張がやけに激しい熊みたいな生物もいたはずだ。

 湖を背景に熊肉バーベキューでキメるとしよう。

 獰猛な生物は大体筋肉がいい感じに引き締まってて無難に味がいいんだよな。たぶんハズレはないだろう。

 ていうかアレだな、いっその事この湖の周辺に拠点を構えてみるのもありかもな。

 この近辺はまだ殆ど探索してないし、また新たな発見がありそうだ。何より涼しくて景色がいいのが最高だ。


「ん?」


 そんなことをのんきに考えながらバーベキューをしていた俺だったが、ふと、湖の遠く方に何か浮いているのが分かった。

 魚かなにかか? 実はさっき泳いでる時にも沢山いたから、今度釣りでもしようと思ってたんだが……いや、それとも森の生物が水遊びでもしてるのか? だとしたら俺と友達になれそうだな。今度一緒に泳ごう。冗談はさておきマジでなんだあれ?

 視力を強化する技は持ち合わせていないので、近づかないと何か分からない。

 遠目から見る限りは流されてるだけで動いてるとかはなさそうだけど……。


 本来ならそんなに気にしなくてもいいようなものなのかもしれない。

 ただ一度意識し始めると気になりすぎて仕方がなくなってしまう。まぁ暇だし確認してみるか。

 俺は湖に飛び込んでバタ足し、接近してみる。

 近づいてみると……え? 人?


 俺の見間違いでなければ、それは人の形に見えた。

 流木にしがみつくようにして、ぐったり脱力している。

 金髪……? ていうか髪が長い、女か?


 すぐ横まで追いつくと、その風貌が明らかになった。

 流れてきていたのは、まだ年若い一人の少女だった。

 肩までありそうな金髪と、白く透き通るような肌。頭にティアラのような小さな銀の被り物を付けている。

 目はつぶっているが、顔はかなり美人に見えた。年の頃は十五歳くらいだろうか。

 基本的には人間のようだが、一つ違う箇所があり、耳だけなぜか異様に長かった。これはあれか、ファンタジーでよく出てくるエルフとかいうやつなのか? わからんな、この世界にエルフとかいう人種がいるかどうかも知らないし……。


「うーむ、どうするか」


 まず何でこんな人がこんな場所にいるかという話だが、たぶん上流の川から流されてきたのだろう。湖と言っても、見た感じここから色んな川に派生しており、この湖に流れ込んでくる川もあると思われた。

 では何の理由があってここへ流れることになったかという話だが、それは本当に分からない。この人に直接聞いているくらいしか知りようはないだろう。


「ていうか生きてるのか?」


 俺は白くきめ細かな首筋に手を当ててみる。

 ドク、ドク、と血脈が動いているのが分かる。

 どうやら気を失っているだけのようだ。


 ……どうしたらいいんだ?

 正直俺に関係ない人だし、このまま無視しても一向に構わないんだが……。

 でも命はあるようだしな、見捨てて野垂れ死なれてもバツが悪い気もする。

 しかもこの世界で二番目に出会った人間だしな、何か貴重な情報なんかも知ってるかもしれないし、一応助けてあげたほうがいいかな。

 あれだ、神様だって俺を優しく救ってくれたわけだし、こういう所で見習っていくべきだと思うんだ。


 ということで、ひとまず彼女を救出するべく、俺が焚き火をしていた陸地まで彼女を引っ張っていくことにした。



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