19 やったー!
森で生きると覚悟を決めた俺の行動は機敏だった。
とりあえず森をぷらぷら探索したところ、かなりの数の生物がいた。
昆虫は勿論だったが、日本で言うトキのような見た目の鳥の群れや、狐みたいな生物の親子、俺と同じくらいの体長はあるだろうアルマジロみたいな生物がゴロゴロタイヤのように転がっていたりなど、本当に様々だった。
どうやら数日の間にたまたま会わなかったというだけで、生き物は普通にいたらしい。
それとも歩いている内に生き物が沢山いる生息域に進入したってことなのだろうか。
まぁどうであれ本当に物珍しい色んなやつがいて、見上げなければ頭部が見えないほど巨大なブラキオサウルスみたいなやつがいたり、中には俺を襲ってくるようなトラのような怖い生き物もいたりした。
まぁ勿論俺が危害を受けることなどなく、そういった輩は例外なく俺のお肉になっていったがな。
後いろいろ探索しているとキノコや果実の類も発見した。
キノコは変な色をしていたりしたので流石に食べなかったが、果実の類は相当に良い収穫だった。中でもココナッツのような実が成っている木があり、運良くその群生地みたいな地帯もあったので、水分補給に関してはそれで解決した。一番最初、高いところに成ってるココナッツをかっこよく炎弾で落とそうとして、うっかり木一本まるまる燃やしてしまい焦ったのはいい思い出だ。結局は猫のように木によじ登って普通に収穫することになった。
そんな感じで食料問題に関してはそこまで苦労することなく解決できた。
因みに睡眠をとる時は、流石にこんな森で無防備で寝こけるのも怖かったので、熱式防空壕【フレイムシェルター】で周囲を炎で囲い、一応安全を確保してから寝ることにした。
最初は明るすぎてなかなか寝つけなかったが、大きな葉っぱを頭にぐるぐる巻きにすることで何とかなった。
まぁそういった調子で、俺はいろんな自然の生き物と出会い戦い成長し合いながら、順調に森の探索を進めていった。
そしてそんな中、なんと例の部族の集落を見つけたりもした。
ついこの間命を持って水を提供してくれたあの部族の集落だ。
集落は森の中に切り開かれていて、簡素な木の塀で囲まれていた。
周囲を警戒する為なのか、周囲を見渡せるような位置に"やぐら"が建てられており、そこにいる見張りに俺は最初見つかった。
どんな生活をしているのか、あわよくば食料をいただきたいなと思って近寄ってみただけだったが、見張りの部族の男は俺のことを相当に警戒していた。
何か言ってきていたが無視して集落の内部に入ろうとしたところ、槍で腹付近を突かれたので、カウンターで両腕を折っておいた。
俺の目的は見学であり、殺す気はないという意思表示のつもりだったんだが……現実はそううまくいかないらしい。ズラズラと部族の何人かが俺をどうにかしようと攻撃してきて、その全員をどこかしら骨折させておいた。
何人目かで流石にむやみに攻撃されることもなくなり、俺の後ろを間隔をあけてぞろぞろ付いてくるだけになった。
……あとで冷静に考えると、俺はこの時、殺した部族から拝借した服装を身に着けており、怪しさは本当にとんでもないことになってたんだろうなと思い直した。なぜよそ者が自分たちと同じ装備を? って不思議に思って警戒するよな普通。いつまでも裸はアレだったから貰っておいたんだが、喧嘩を売ってるみたいになっていたかもしれない。
まぁそれはさておき内部に進入すると、部族たちは部族たちで結構しっかり生活しているのが分かった。
木で建てられた掘っ建て小屋みたいなのに住んでおり、全体の規模としては百人以上はいるんじゃないかって感じだったかな。とにかくちゃんとした集団として生きていた。
そして暮らしている部族の中には、明らかに女のシルエットをしている者や子供なんかもいた。
やはり俺が一番最初戦ったあの部族たちは全員男だったのだろう。女、子供は戦わず留守番してるってわけだな。そこは地球の人間とおんなじ感じか。
すれ違う部族全員が俺の方を見て立ち止まっていたが、やはり無視して家の中を物色したり、食料と思われる小さな木の実や干した肉をつまみ食いしたりした。
結果としてまぁそんな大した何かを得られるというわけもなく、大体予想できるような貧相でしょうもない感じの生活様式だった。
だが一つだけ収穫を上げるとすれば、集落を横切るように一筋の川が流れていたということだ。
そんなに大きな川というわけではなかったが、なるほど、川の近くに拠点を作り集落として住み着いたってわけか。
当然この世界で見る初めての川で、俺の心は大いに盛り上がった。
これでまた森での生活に幅ができる。
集落にこれ以上用はなかったので退場したあと、俺はしばらくの間川を辿るように探索を進めるようになった。
そういった感じで、まぁ森の中の生活というのも思ったより飽きるということはなく、むしろ森の中でどんどん存在感を増していってることに喜びすら感じていた。
そうして日は流れ、俺が森に入ってからおよそ二ヶ月が経った頃。
縄張りを拡大し続けた俺は、一定の地域における長になっていた。
賢い動物は俺を見て身を引くようになり、美味しい果物がなる地帯などには殆ど誰も近寄らなくなった。
俺が自然を受け入れたことで、逆に自然も俺のことを受け入れてくれた。
そのようにして俺は完璧に森に順応した。