18 僕ら見つけあって手繰りあって
とりあえずてくてく歩いて、最初に部族と戦っていた場所に戻ってきた。
まずは部族たちのひょうたんを回収して回った。
特に状況は変わっておらず、無事に全てのひょうたんを回収。
ちなみに、俺が最後の方に炎のマシンガンで撃ち抜いた部族たちの分も無事だった。
まぁ結構粗く撃ったからな。
運悪くひょうたんに命中してしまう可能性もあったが、部族たちに当たっている弾もそれぞれ三、四発くらいで、確率的にはこの結果で正解なんじゃなかろうか。
それと回収する際まだ息のある部族もいたが、明らかに死にかけだったので特にトドメは刺さずそのままにしておいた。殺しが目的なわけではないからな。
こうして戦利品としてまだ手を付けていないひょうたんを七つ手に入れた。
うーん、思えばやはり最初のリーダー格のひょうたんを燃やしてしまったのは少し失敗だったか。まぁ最終的にこれだけ集まったならミッションとしては上出来だよな。まぁよしとしよう。ひとまずこのひょうたん達は俺の貴重な水分補給源だ。大事に消費したいところだな。
「どっこらせ、あーつかれたー」
俺はその辺に倒れていた木を適当にベンチ代わりにして座る。
喉が渇いたので早速ひょうたんをがぶ飲みしながら休憩した。
ちなみに時刻は夕暮れ時だったのか、既に当たりは相当に暗くなっている。まぁ星明かりがあるから森の中でも結構見えるけどな。
星座を見ながらゆっくりしていると段々と現実感も戻ってくる。
……疲れた、本当に疲れた。
あぁ、今思えばホントに死にかけてたな俺。
森の中で遭難死とか普通に笑えないからな。
アホすぎるだろ俺。何やってんだか。
部族たちが通らなかったらあのまま死んでたんじゃないのか?
世界最強が聞いて呆れる。
死ぬくらいだったら絶対に覚醒モードを一か八かでも使った方がマシだった。どんな後遺症が待っているかは分からないが、いずれにしろ死ぬなら試してみるべきだ。
はぁ、まぁ意地になりすぎるのも良くなかったってことだな。でもそのおかげというわけではないが、こうして水分も手に入ったし結果オーライ……ってことにできないかな、無理があるか。
「ていうか部族たちはこのままでいいのか……?」
謎の部族たちを壊滅させたのはいいものの、死体はそのままにしている。
殺しておいてそのままというのも……せめてお墓でも作った方がいいか? まぁ部族とは言っても明らかに自然に生きる物って感じだったし、動物とおんなじ括りでもいいような気もするが……まぁ片付けもだるいしな、手を合わせるだけしておこうか。なむなむ。
ああ、でもあいつらの仲間が来るって可能性もあるのか? 死体が近くにある中いる人物って相当怪しいよな。まぁ来たら来たで返り討ちにすればいいか。あの程度の戦闘力ならそうそう遅れはとらないだろ。
色々考えている内に腹が減ってきたので、さっき俺を食おうとしていたティラノの肉を千切ってきて持ってきた。相当硬かったが、魔力の爪を使えばそんなに時間を掛けず切り取れた。
流石に生で食べるのもアレなので、適当に薪を集め炎魔法で火を付け焚き火を作る。そこに枝を差したティラノの肉をくべらせた。
十分程経ちいい感じに焼けたところで食べてみる。
意外とジューシーだった。異世界で初めて食べるメシがティラノサウルスの焼き肉ってどうなのとも思ったが、三日間何も口にしていなかったせいかかなり美味しく感じた。ぎっしり硬いんだけど、味はいいみたいな。塩コショウがあればもっと最高だったんだろうけど、そんなものあるわけないので贅沢いえないですわな。
そんなこんなで喉の潤いついでに腹も満たすことができた。
「さてこれからどうするかだな」
何やかんやあったが俺のこの世界での目標は世界最強だ。
それは今後どんなことがあっても曲がることはないだろう。
神様のためにも俺は頑張らないといけない。
心の底からそう思える。
ではその上でどうしていくべきなのか。
……やっぱり覚醒モードはできるだけ使いたくないんだよな。
この間は血を吐いて脳が焼ききれそうになる程度で済んだけど、今度はどうなるか分からないし。反動が蓄積されていくタイプだった場合、最悪次は死ぬことだってありえる。本当にどうしようもない時の最終手段として使うべきだ。
でもこのままでも死ぬんじゃないの、って思うかもしれないが、それは恐らく大丈夫だ。
何故なら、この森には先程の部族や恐竜みたいな生き物が暮らしていることが分かったからだ。ということは当然彼らが暮らしていく為の食料や水がこの周辺に十分あるということになる。
ま、急ぐに越したことはないが、急いては事を仕損じるとも言うしな。
俺の目的は世界最強だが、何も一度に全てやってしまう必要はない。
コツコツ確実に積み重ねていくことも時には大事だ。
俺は今この森を抜け出したくても抜け出せない状況にある。
だったらまずは生活基盤を整えてしまえばいい。
この森を舐めると痛い目をみることは先程散々分からされた。焦らずに衣食住を確保ししっかりと地盤を固めるのだ。
そうすればこの森だって安全に探索することができる。いずれ脱出できる日もくるだろう。
まずは目の前のことからだ。
覚悟を決めた俺の行動に迷いはなくなった。
凄い勢いでこの森での生活に馴染んでいった。