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「「ルビル!そいつから離れろッ!」」

 何故か目の前の女性に向かって、そいつと言い、離れろと双子の兄が揃って駆け寄ってきた。勢いがすごい・・・。



「お兄様達・・・失礼ですよ」

 あまりにも兄達の発言は失礼すぎて、つい冷ややかな視線を向けた。もしかしたら自分達の婚約者になるかもしれないのに、兄達は馬鹿なのだろうか・・・。



「何を言ってるんだ!お前までコイツを気に入ったのか!」


「嘘だよな!?嘘だと言ってくれ」

 

 兄達は絶望したような表情だ・・・。まったく何を騒いでいるのかわからない。



「本当に五月蝿いですよ・・・。私は綺麗な人は好きです。嫌いなのはお兄様達みたいに、五月蝿い人の方です」

 ルビルは、はっきりと兄に告げた。



「そんなッ、いくら綺麗でもこんな奴に負けるなんて!」


「そうだ!こんなおかしな奴にまけるなんてないだろ!」

 双子の兄達は揃いも揃ってルビルの発言に打ちひしがれている。



「本当に・・・五月蝿いですね。この方に問題でもあると言うのですか?」

 ルビルは本当に五月蝿い男は兄と言えど嫌いだった。それに綺麗な彼女のどこが嫌なのか疑問すぎてしょうがない・・・。そもそも兄達は面識があるような悪態のつき方だ。




「妹に嫌われるなんて残念だったね・・・綺麗に産まれて良かったよ」

そんな兄達を見てか、憐れむような声がかかった。だがそれは、何故か目の前の人からだ・・・。それも男性の声でルビルは目を見開いだ。  



「・・・・・・え?」

 相変わらず目の前の女性は、ルビルを見てにこやかな表情を向けている。空耳だったのだろうかと思うにしては、最近よく聞いていた声だったので疑う余地もなかった。



「もしかして・・・クロードなの?」

 声は彼だと思うが、目の前にはドレスを着て着飾った女性しかいない。



「正解・・・。声でわかるなんて嬉しいよ」

 彼女・・・嫌、彼は笑みをより綻ばせてルビルをみつめてきた。



「・・・・・・ぷっ、あははッ、本当に!?」

 ルビルは彼が今の歳で女装をするなど思わなくて、驚きで笑いがでてしまった。



「確かにこれじゃ騙されるわ。とっても綺麗だもの。しゃべらなかったらわからなかったかも、ふふッ」

 ルビルはクロードに対して、かなり砕けた。

 


「話さないのと、椅子からたたないってのが大前提なんだ」

 そう言い、クロードは席から立ち上がりルビルの横に立った。確かにかなりの大柄の女性で、綺麗でも違和感がかなりあった。



「くッふふ、もうッ、女性にしてはでか過ぎて、違和感がすごくおかしいわッ、ダメ、おかしくて笑いが止まらないわ」

 ルビルはクロードを見て笑いが止まらなかった。



「笑っているルビルは、さらに可愛いね」

 女装でなければ様になるのだろうが、この状態で言われてもルビルの笑いを煽るだけだった。


「ッもう、口を開かないで、笑いが止まらないッおかしすぎて苦しいわ」

 クロードはわざとルビルに近寄っては、ルビルの反応に喜ぶように女性の仕草をした。



「あらあら、ルビィったら、随分喜んでもらえてよかったわ」

 母がルビルの様子を見て、はしたないと怒るわけでもなくにこやかに言った。



「昔も伯母上が俺にドレスを着させた時も、ルビルのためだったんでしたね」

 クロードがさらりと言った。



「え?」

 それは初耳だ。ならばクロードが兄達に嫌われている原因はルビルにあるではないかと申し訳なく感じた。



「だって、この子が兄じゃなくて姉がほしいって言うんだもの。あの子達は絶対にドレスなんて着てくれないし、似合わないわ・・・。ルビルの可愛いお願いくらい叶えたくて」

 母はルビルの小さい時のお願いを叶えたかったようだ・・・。たがクロードに無茶振りをしすぎではないだろうか。



「だからと言って今回は、もう俺には無理がありましたよ」

 確かにクロードはもう20歳の成人している男性で、顔は綺麗でも体格からはぎりぎりであった。


「あら、黙って座ってればルビィにはバレなかったじゃない」

 母がクロードに満足げな表情を向けた。



「そんな姉役でいいんですか?」



「それより・・・クロードが兄達に嫌われてるのって、私のせいだったのね」

 ルビルは申し訳なくなってしまっていた。



「そんな事はないよ。いくら女装したからって、俺が調子にのってしまっていたからね。騙し方が悪かったんだ。きみのためにしたんだから・・・。別にあいつらまで騙す必要はなかったのにね。俺の自業自得だよ」

 クロードはルビルの所為ではないと言ってくれる。




「でも、叔父様にだって勘違いしてるままなんじゃないの?」

 この前の会話ではそんな感じだったと思い出す。


「まぁね」



「自分が悪者にならなくてもよかったんじゃない?」

 母が言い出した事なら、叔父に説明すればよかったのではないかと思った。


「あれで、父上が目を向けてくれるようになったんだ。俺がおかしくなったと思われたようだよ。俺はもともとこういう性格だったんだけどね。それまで父に褒められたくて、いい子にしてたんだ」

 クロードは笑いながら、気にした風もなく言った。



「誤解を解きたくなったらいつでも言って頂戴ね。未だライナスは貴方の評価を間違えている節があるから」

 母がクロードに言った。



「父の評価はあながち間違っていませんよ。俺はもともと楽しいことが好きですし、ふざけた性格だったんです。ですから別に事実を言っても父はきっと何もかわりませんよ」

 ルビルは確かにクロードは会った時から、そんな感じだなとはおもった。でないと初対面であろうにあんな事はしないだろうと・・・。



「そうだ!お前の性格はもともとだ!」

「もともとふざけた性格だ!」

 いつの間にか復活した兄2人が、クロードが自分でふざけた性格だと言ったからか、また喚き出してしてしまった。











 


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