6月20日/体育祭(午前)
目が覚めると少しだけ緊張している自分がいた。
理由はすぐに分かった、体育祭だからだ。
雨が降ったせいで延期していた体育祭が、
今日ついに行われてしまうのだ。
(体育祭…嫌だな。無くなれば良かったのに…でも、高校最後だし頑張るか…)
大勢がいる所で何かするのは苦手だった。
それに、緊張しいだから辛い。
大きな溜息をしながらクラスTシャツに着替えてリビングに向かった。
「いおくん、今日見に行けなくてごめんね…」
「いや、高校の体育祭なんて誰も親来ないから良いよ!!!!」
「そう…?頑張ってね♪♪1位取ってきなさいよ!!!!」
「はいはい、頑張るよー、行ってきます。」
(もし、仮に1位を取れたらモテるのかな?彼女とかできたりして……やば、きもいなやめよう。)
曇っていたから寒いと思ったが、ジメジメして蒸し暑い。こんな中、ずっと外にいなきゃいけないのかと思うともう帰りたくなった。
駐輪場には、大輝が待っていた。
「おはよー、浮かない顔だね?どうした?」
「まず、なんで教室じゃなくて、わざわざここにいんだよ!!」
「良いだろ、たまたま、いおを見かけたから待ってたんだよ。」
「教室で良いだろ!!」
「まあまあ、で、なんでそんな浮かない顔してんの??
今日は体育祭だぜ!!楽しもうぜ!!!!」
「それが原因だよ…」
「まだ慣れないのかよ!!部活の試合とかでもそうだったね(笑)かっこいい所見せないとダメだぞ!!」
「うるさいわ!!」
大輝は、にやにやした顔で俺の顔を見てきた。
「なんだよ!!」
「なんでもないよ(笑)でも、最後なんだし楽しもうぜ!!
クラス対抗リレーも優勝しよーぜ!!
アンカー頼んだぜ(笑)」
めっちゃ忘れていた。
大輝がアンカーをやるはずだったが、トップバッターが良いと言い出して代わりになぜがか俺になったんだった。
(なんでこんな大事なことを忘れていたんだ。最悪だ…)
教室に着いて、席に座るとすぐに天音さんが話しかけてきた。
「夜見くん、今日、頑張ろうね!!クラス対抗リレーで優勝しちゃおうね!!」
「出来るだけ頑張るわ!!天音さんも転ばないようにね(笑)練習の時、転んだ…から(笑)」
「ねえー!!それは言わないでよ!!意地悪!!」
天音さんとは良く話すようになった。
前までは大輝と一緒に来るイメージだったけど、
最近は天音さん1人で話しかけに来る。
すると、橘が話に入ってきた。
「夜見が、転ぶかもね(笑)」
「そんな訳ないだろ?」
「そうだよ!橘さん、夜見くんは転ばないよ!!」
「ふーん、そっか…」
そう言うと、橘は席を離れて教室を出て行った。
俺と天音さんでなんだろうね?みたいな顔をした。
「ねえねえ、夜見くん。私の事も呼び捨てで良いよ??
私もいおくんって呼ぶから!!(笑)」
「そこは、夜見じゃないの??(笑)」
「いいの!!それに、橘さんには橘って呼び捨てにしてたじゃん?だから、私も天音か莉緒でいいよ!!」
「じゃあ、天音で呼ぶわ!!」
「ふーん、莉緒でも良かったのに!!(笑)」
「いや、無理だよいきなりは!!そのうちね!!」
「楽しみにしてる、そろそろあっちに行くね!!
頑張ろうね、いおくん!!」
そう言って、天音はいつもの女子グループの輪に入って行った。
(めっちゃ緊張した〜!?!?何いきなり、びっくりした…
でも、体育祭の緊張は無くなったかも。天音のおかげか?
そういうことにしておこう!!ありがとう。)
「いたっ!?!?」
急に頭を叩かれた。
振り返ると橘が立っていた。
「えっ!?何!?どうして?」
「なんでもない。蚊がいただけ。」
そう言うと橘は席に座った。
俺は絶対に嘘だと思ったが、あえて何も言わないようにした。
ふと前を向くと、大輝が笑っていた。
後であいつを殴ろう。
ついに、体育祭が始まった。
特に出る種目が無い生徒には結構暇だった。
しかも、午前中は、午前の部最後の学年別徒競走のみだった。
俺はクラス別に分かれているブルーシートの上で寝っ転がって見ていた。
すると、天音が近づいて来た。
「なんで、休日のお父さんみたいな格好で見てるの!?(笑)」
「出番がないからだよ〜!そういえば、女子は次出番だっけ??」
「そうだよ!緊張してきたよ…」
「借り物競走でしょ??簡単な物だと良いね(笑)」
「うん、いおくん、応援してね!!」
「おう、ここから応援してるわ!!」
「やったー、ありがとう!!じゃあ、行ってくる!!」
「ふぁいと〜!!」
天音は元気よく走って待機場に向かって行った。
(元気で可愛いな、こんな子が彼女だったら面白そうだし楽しいんだろうな。)
と考えていた。少しニヤついていたかもしれない。
気を付けようと思った。
すると、橘が前を通った。
「橘も頑張れよ!応援してるよ!!」
「う、うん、ありがとう…」
橘がいつもより元気がなかった。
(橘も緊張してるのかな?仕方ない。)
俺はブルーシートから離れて、橘の方に走って行った。
「おい、橘!!」
「えっ!?なに!?!?」
「元気ないな、どうした?緊張してるのか??」
「いや、そうじゃないけど…いや、緊張してるかも……ボク…ダメかも。」
「うーん、そんなに緊張しなくて平気だよ!!てか、橘なら大丈夫だよ!!じゃあ、これで1位だったら何か言う事聞いてやるよ(笑)」
「えっ、本当に!?約束だからね!!」
「おう、いいよ!!(笑)」
「分かった、絶対に紙取るね!!頑張るね!!!!」
橘も元気よく走って待機場に向かって行った。
(元気だったな。まあ、どうせ無理だろ(笑)万が一があっても、ジュースとかの奢りだろうな。さてと、戻って応援するか。てか、紙は取るだろ(笑))
「それでは、借り物競走、スタートです!!」
パンッ!!
放送委員の元気な声と同時に始まった。
橘も天音も上位で借り物が書かれた紙エリアまで辿り着いた。
先に紙を開いて走り出したのは、橘だった。
(えっ?マジ、これ1位ある??やばいか??)
そんなことを考えていたら、
橘がこっちに向かって走って来た。
そして、俺の顔を見て止まって、もじもじしながら、
うろうろし始めた。
全く意味が分からなかった。
何か恥ずかしい物でも引いたのかと思い、
話しかけに行こうとした時に天音が手を掴んで来た。
「一緒に来て!!」
「はぁ!?」
動揺しつつ、言われるがままに天音と一緒に走った。
そして、天音が1位でゴールした。
放送委員が駆け寄って来た。
「おめでとうございます!!
お名前を聞いて良いでしょうか??」
「はい、3年A組、天音莉緒です!」
「天音さん、改めておめでとうございます!
ですが、まだ1位が決まった訳ではありません!!紙に書かれた借り物が正しいのか確認致します!!紙にはなんて書かれていましたか!?」
「紙には、《クラスの男子》と書いてあります!!」
全生徒が少しがっかりした空気が流れてきた。
そして、天音が1位になり借り物競走は終了した。
この後にあった学年別徒競走で俺は盛大に転んだ。
だから、ここはカットでお願いします。
これで午前中の体育祭が終わり、昼休みになった。
1つ気になっていることがあった。
橘のことだ。借り物競走の後からまた元気がなかった。
昼休み時間中に探しても見つからなかった。
(どこに行ったんだ?大丈夫かな??)