表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

4月19日/転校生

「絶対に助けるから…」

「ごめん、ごめん、ごめん…」

「俺は…絶対に…」


ピピピーピピピーピピピーピピピー


(うぅぅ、うるさいな……)

うっすら目を開け、布団から手を伸ばして枕近くにあるスマホから流れて来るアラームを消した。そして、また目を閉じた。


「ねえーーー、起きなくて良いの??いおくん??起きてるーーー??」


遠くから母親の声が聞こえてきた。

(まだアラーム鳴ってないから平気だよ。

もう少し寝かせてよ…)


!?!?!?


飛び起きた。

やばい、遅刻する。

部屋から飛び出して1階の洗面台にダッシュした。

「なんで、もっと早く起こしてくれないんだよ!!!!!やばいよ、遅刻だよ!!」


「えー??知らないよそんなの。アラーム鳴ってたのに起きなかったのは、いおくんじゃん??」


「…そうだけど、もっと早く起こせたでしょ!!!!」


「はいはい、ごめんね〜。朝のパンは学校で食べな、お弁当と一緒に入れておくから!!」


急いで着替えてお弁当や教科書をバッグに入れて家を出た。


「じゃあ、いってくる!!」

「いってらっしゃい〜、気をつけてね。」


自転車に乗り、全力で漕いだ。

自分は競輪選手だと思い込みながら漕いだ。


信号に捕まった時にスマホを見て時間を確認した。

そしたら、急いだ甲斐があって時間に余裕ができた。

いつも通りの時間ぐらいだった、若干早いかもしれない。

(俺頑張ったな、マジで競輪選手になるか。無理だなやめよう。)


そんなことを考えてたら信号が青に変わった。

それと同時に風が吹いてきた。

最近、風が暖かくなってきたと思った。

新学期が始まって1週間とちょっとが過ぎたけど、まだ実感がなかった。

自分が高校最後の年だなんて。

(大学受験上手く行くかな??勉強頑張らないとな。はあ…嫌だな。)


少し憂鬱になりながら学校の駐輪場に着いた。


「いお、おはよ!!」

「おう、大輝、おはよう〜」

「いお、何か疲れてない??元気ないよ??」

「あー、寝坊したせいで全力で漕いだからね…めっちゃ疲れた。帰りたい…」

「今来たばっかりじゃん!!(笑)」


猪植いのうえ 大輝だいきとは、中学の頃からの友達だ。大輝はいつも明るくて元気で運動神経が良くて中学の時から今でもクラスの人気者だ。めっちゃモテてるイメージ。


「そうだ、今日転校生来るらしいよ??

何か微妙なタイミングだよな(笑)」


「それは良いだろ、別に!!」


「女の子かな??女の子が良いよな??

てか、いおの隣になるんじゃね??

今、そこしか空いてなくね??(笑)」


「まじか…気まずいな……女の子だったら尚困る(笑)」


別に女の子が嫌いとか苦手とかはないけど、少し緊張してしまう。

しかも、転校初日だと教科書とか見せなきゃいけないかもしれないから、女の子だと緊張してしまう。


「まあ、こういう時は男が来るもんだよ!!!!それに、席は違う所とかね!!」

大輝は笑いながらそう言った。


教室に入った時に、俺は大輝にめっちゃ笑われた。

なぜなら、昨日までなかった俺の隣に席が作られていた。

大輝はやっぱりねみたいな顔で俺を見ながら自分の席に座った。


(はあ、嫌だな。しかも、なんか女の子が来そう。)


チャイムが鳴り、担任と転校生が入って来た。


嫌な予感は当たることがあるって聞いたことあるけど、本当にそうだと思った。


「今日から転校してきた、橘さんだ。

じゃあ、自己紹介をお願いします。」


「はじめまして、色々あって昨日引っ越して来ました!!たちばな 綺音あやねです。これから宜しくお願いします!!」


彼女の第一印象は、どこかで会った気がした。何か懐かしいと感じた。そんな訳ないのに。

後、モデルさんかな?と思うような雰囲気を持っていた。

けど、どこか幼い顔で髪型はボブぐらいだった。

しかも、雰囲気だけで身長はそんなに高くなかった。

少し、少しだけ可愛いと思ってしまった。


「橘さんの席は、夜見の隣な。

じゃあ、1時間目の準備しておくように!!」


「はじめまして、宜しくね、夜見くん!!」

「初めまして。」

(やばい、何を話せば良いんだろ。何か言わないと気まずいな。)


「どこかで会ったことある??…なんか見たことあるような気がして…」


変なことを言ってしまった。

そんなことあるはずがない、昨日引っ越して来たって言ってたのに。変な人だと思われたかもしれない。


「夜見くんって面白いね!!

どうだろう…会ったことないと思うよ??(笑)

昨日、引っ越して来たから!!」


彼女は笑いながら返してくれた。

でも、どこか嬉しそうにも見えた。


「だよね〜(汗)ごめん、変なこと言って。」


「大丈夫だよ〜!!そうだ、今日まだ教科書無いから見せてくれたら嬉しいな!!」


「うん、いいよ。」


そんなことを話してたら、授業が始まった。


数学の授業だった。

正直数学は難しい。何がなんだか全く分からない。公式を覚えれば楽だと言うがそれが難しい。机に足が当たってしまってずれてしまった。その瞬間、教科書が落ちてしまった。


「あっ、ごめん。」


「うんうん、大丈夫だよ!!……。ねえ?これ下の前なんて読むの??」


「あー、読み難いよね。一桜って書いて、いおって読むんだ。ちゃんと自己紹介してなかったね。夜見よるみ 一桜いおです。宜しく。」


「いおって読むんだ!!いいね!!宜しくね!!!!」


「そこ!!うるさいぞ!!!!」


怒られてしまった。

2人で顔を合わせてクスッと笑いながら謝った。


授業が終わった瞬間、橘の周りには人が集まって来た。

まあ転校生が来ると盛り上がるよな。

俺は席を外してトイレに行くことにした。


トイレから戻って来てもまだ人集りがあった。

最終的に先生が注意するまで集まっていた。


「人気者だね(笑)」

少しからかってみた。


「ねえ!!こんな初めてでびっくりだよ!!

楽しいから良いんだけどね!!」


「楽しいんだ、俺なら疲れて嫌だね。」


「あははは!!夜見くんは意外とめんどくさがり屋だね!!!!」


「意外か??まあそんなこと言うと教科書見せないぞ??」


「嘘だよ、ごめんね!!だから、見せて!!」


なんでこんなに初日から仲良くなっているんだろう。

少し不思議に思った。

けど、橘と話してると落ち着く気がした。


そこから放課後まで、橘は休み時間になると人集りが出来ていた。

他クラスの女子まで見に来て話掛けに来ていた。


帰りのホームルームが終わり、俺はすぐ席を立った。バイトがあるから帰ろうと思った。


「夜見くん、今日はありがとう!!また明日ね!!」


「いえいえ、うん、また明日ね〜」


アルバイト中、俺はどこか橘綺音のことを考えていた。

どこか気になる。

(なんでこんなに俺は橘のことを…??確かに可愛いと思った。けど、初日で…??好きになるか??なんだろう、普通に話しやすかったからかな…。気になってるのか…なんだ!!キモいぞ俺。普通にクラスメイトなだけ!!よし。うん、そうだ。)


バイト終わりに公園に寄ることにした。

名前に桜と付いているからか意外と桜が好きだった。

この公園は俺が良く桜を見に行く所だった。

一本だけ桜がそこにはある。

公園に着いたら桜の前で1人立っている人がいた。

(珍しい、先客か。)


俺が桜の方に向かうと、人が来たことに気付いたのか桜を見ていた人が桜から離れようとした。


その時だった。


「あれ?夜見くん??」


「えっ!?!?橘??なんでここにいるんだ??」


「こっちの台詞だよ!!引っ越した先がこの辺なんだ。なに〜夜見くん、私のストーカー??(笑)」


「違うわ!!!!ここは昔から来てたよ!!

近くのスーパーでアルバイトしててその帰りだよ!!ストーカーじゃない!!」


「知ってるよ!!スーパーって公園抜けた信号を渡ったところにある奴??」


「そうそうそこだよ!!」


「えーーー!!さっき買い物したよ!!」


「まじかよ!!てか、買い物って親に頼まれたの??」


「うんうん、違うよ!!親はいないんだ、ボクが作るために買ったんだよ!!」


「…そうだったんだ。凄いね、料理出来るの。俺は無理だね、前作ったら丸焦げになったわ…。てか、ボクって言った??」


「あっ……気をつけてたんだけど、出ちゃった(笑)気にしないで!!私って言うようにしてたんだけどな…。」


「良いんじゃない??ボクと言っても。人それぞれだろう。

俺は気にしないよ!!たまに、猫被る時は僕って俺も言うし(笑)」


「……そっか、ありがとう。」


「そろそろ帰るかな。橘もそろそろ帰る??送っていく??」


「そうだね、帰ろうかな。良いよ、ここで大丈夫だよ!!ありがとうね!!」


「お礼を言われるようなこと何もしてないけど??まあいいや!!じゃあ、本当に気をつけろよ!!」


橘と別れてから真っ直ぐ家に向かった。

橘綺音やっぱりどこか気になる存在だった。

(これが恋って奴なのか…初めてすぎてよく分からない。気のせいかな。気のせいだよな。違った時恥ずかしいし。)


「でも、橘と仲良くなりたいかも」


そんなことをぼそっと口にして坂道を下って行った。





こうして、短くて長い1年が始まった。

でも、俺にとってはたった1年でも綺音との出会いが全てだった。

綺音の為なら何でも出来る気がした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ