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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

陰猫(改)のオリジナル小説

三毛猫とクレーン車

作者: 陰猫(改)

2022年1月20日。

 仕事の帰宅途中、クレーン車に引かれ、向かいの道路でグッタリする三毛猫を目撃する。

 おそらく、これを書いている頃には猫は既にこの世にはいないだろう。


 なので、これはそんな猫の最期を目撃した私の記録である。

 そもそも、この猫は何かと格闘していたらしい。

 複数の猫の鳴き声がしていたのでおそらくは猫同士の喧嘩か何かだろう。


 そして、私の目の前を横切り、全力疾走で車が行き交う道路を走る猫。

 車に跳ねられる事など微塵も考えてないかのように脱兎の如く逃げる猫の姿は印象的であった。そんな猫にクレーン車が重なる。

 速度制限云々で引っ掛かるスピードを出している様子はない。

 ただ、そのスピードは人間であっても大事になったのは目に見えている。

 クレーン車から見て、猫の存在は完全に死角になっていたように見えた。


 クレーン車が過ぎると猫がよろめいて道路の片隅に倒れた。

 原型は残しているが、その猫の状態を見るのは怖かったし、猫がどうなったかを興味本位で見る勇気もない。

 確かなのは猫は亡くなっているか、助からない状態だろう事は理解出来た。

 寧ろ、猫の状態が解らない反対の歩道にいたのは私にとって良かった事だとは思う。

 そうでなければ、記録に残そうとも思わないだろうし、猫の状態も鮮明に覚えて食事もままならなかったろう。

 猫の状態が解らないのはある意味、私にとって救いだったのかも知れない。

 猫にもクレーン車の運転手にも罪はない。ただ、間が悪かったのだ。

 逃走経路に車の行き交う道路を選んでしまった猫が悪いとか、たまたまスピードを出して走っていたクレーン車が悪いとかではない。

 日常に潜む残酷な現実を突きつけられただけである。


 走っている乗り物は危険である事の現実。

 人間の道具が如何に危険か。それにぶつかった時の動物の末路。

 それがただ、私の見ている前で現実となっただけである。

 当たり前に生きているが些細な事がきっかけで突然、終わりを迎える可能性。

 たまたま、それを目撃してしまっただけ。


 こんな事を書いているが、ショッキング過ぎて先程まで思考出来なかった。

 ただ、この目撃を記録する事で、あの名前も知らないし、野良猫だったのか飼い猫だったのかも解らない三毛猫に祈りを捧げてくれればと思う。

 私達は現実に生き、現実に生かされている。生きたいと思いながらも生きれなかった存在の上に私達は存在している。

 あの猫も含めて失われた存在の分まで進み続けようと誓いつつ、名前も知らない三毛猫の最期を記録として残しておく。


 願わくば、あの猫が来世で車に引かれたりする事のない生涯を迎えられるような事故のない運命にある事を祈る。


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