第20話 至福の銭勘定、そして……
「ふぁあああっ……。ん~~~っ、これ以上待ってても今日は誰も来そうにないやねぇ……。ちょいと早いけど、今日はこの辺りで店仕舞いにしようかねぇ……」
大きな欠伸とともに凝り固まった体を解すように腕を真上へと伸ばしながらウルザ・ブランケットが呟いた。
リック・リパートンを見送ってからかれこれ3時間余り……。
その間、ウルザは自らがオーナー兼店主を担っているこの店・龍のうろこ亭のカウンターでいつ来るともしれない客を待ち倦ねていた。
常日頃からそれほど来客があるわけではないのだが、今日はいつにも増して暇を持て余していた。
が、それでも稼ぎという点では十二分に本日のノルマは達成されていて。
――チラッ。
ウルザはカウンターの右側に放ってある布袋へと視線をずらしていく。
「………………」
――ジャリッ‼
「フフン♪」
その手に感じるズッシリとしと重量感を実感するなり自然と頬が緩んだ。
「フフフ、お子様は扱いやすいというかなんというか……。全く冒険者様様だねぇ♪ ま、アンタの分まであたしがキッチリとこの金を有効活用してやるから、安心して土塊へとかえるこったねぇ♪」
もうこの世にはいないであろうリック・リパートンに感謝の念を捧げつつ改めて袋の中身を数えていこうとしたその時である。
――ザッ、ポタ、ポタ……。
「?」
何やら水の滴るような音とともに人の気配のようなものを感じ、そっと視線を斜め上へと向けてみたところ、
――チラッ……。
「へ…………?」
「――……ハァッ、ハァ、ハァ……」
そこには息も絶え絶え、全身を赤黒い血で真っ赤に染めた人物が立ち尽くしていて……。
「………………」
袋の中に指を突き入れたままの格好で凍り付いたように固まること数秒――。
「ハァッ、ハァ……。あ、あの、ウルザさ……」
「……――き……」
「き?」
「き――きゃぁああああああああああああああああああっ⁉」
耳を劈かんばかりの甲高い悲鳴が龍のうろこ亭に響き渡った――。
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