漫才「コンビニ」
二人「どうも〜、よろしくお願いしま〜す」
A「あのさ、俺さ」
B「どうした。異世界にでも転生するか」
A「いやしねぇよ。なろうで見飽きたわ。あのな、アルバイトしたいんだよ」
B「お前バイトした事ないのか」
A「ガキの頃から養ってもらってたからな」
B「大抵そうだろうな。で、なにやんの」
A「俺ね、コンビニでバイトしようと思うの。そんでね、ちょっと練習したいなぁって」
B「おいおいお前、いきなり漫才の定型文出してきて大丈夫か」
A「どした現実。そういうの言わなくていいんだよ。俺、店員やるからお前客な」
B「しゃーねーなぁ」
B「ウィーン」
A「いらっしゃいませー。本日はどのようなカットにしますか?」
B「じゃあアフロでお願おいおいおいおい」
A「なんだよ、止めんなよ」
B「いやいや、コンビニ店員でしょ?」
A「そうだよ?ヘアサロン・コンビニ」
B「いやそれは聞いてない。俺、聞いてない」
A「なんだと思ったのw」
B「そこ笑うなって。普通のコンビニだよコ・ン・ビ・ニ」
A「……な・り・た・い?」
B「もうコンビ組んでんだよ」
A「イチャつくなよーw」
B「イチャついてねーわ」
A「とりあえず、仕切り直してもう一回な」
B「はいよ。確認だけど、ヘアサロン・コンビニね」
A「そう。頼むよ相棒」
B「任せんさい」
B「ウィーン」
A「いらっしゃいませー。本日はどのようなカットにしますか?」
B「じゃあ、サンドイッチとおかかで」
A「はいかしこまりまーー、せんね引きずったなお前」
B「わりぃか?」
A「わりぃねぇ。なんだサンドイッチとおかかって。どういう髪型よ」
B「あのな。柴犬みたいな犬いるじゃんね」
A「……おう」
B「でさ。耳がこう、二つあるじゃない」
A「うん」
B「それがパンで、真ん中おかか」
A「……バグったな貴様。モンスターにでもなったか」
B「いや、せっかくならカリスマになってもらおうと思って」
A「おま……いいじゃない、続けよう」
B「任せんさい」
A「ではサンドイッチにしていきますねー」
B「お願いしまーす」
A「チョキチョキ……。お客さん、最近お仕事忙しいんですか?」
B「そっすねー、あんまり休みなくて」
A「あれ、お仕事なにされてるんでしたっけ?」
B「普段はバイトッス。いま漫才師目指してるんですよ」
A「へー、すごいですねぇ」
B「そうなん…ちょっと待て」
A「なに?」
B「会話が、つまんない」
A「別に普通でしょ」
B「いいや、つまらん。俺が手本見せてやる。代われ」
A「え、お前行けんの?」
B「なーに言ってんだ、こちとら漫才師だぞ」
A「じゃあ行けるな」
B「任せんさい」
B「お客さん、普段は何されてるんですか?」
A「いまバイト探してて、普段は家でゴロゴロしてるんですよ。ダメですよねぇ」
B「そんな事ないですよ。ダメじゃなくて人間クズでゴミで存在価値のない」
A「やめてー!」
B「なんで。事実じゃん」
A「そういうのは、もっと当たり障り無いように言うの」
B「傷ついた?」
A「そら傷つくよ」
B「ごめんね」
A「いいよ、漫才だし」
B「仏かよ」
B「お客さん、普段は何されてるんですか?」
A「いまバイト探してて、普段は家でゴロゴロしてるんですよ。ダメですよねぇ」
B「いやいや、仕事探してるだけ立派ですよ」
A「でも、親にも迷惑かけてますからねぇ」
B「大丈夫ですって。いざとなったら異世界転生すればいいんですから」
A「ははは、賢者にでもなりたいですよ」
B「ははは、良いとこアンタ雑草ですよ」
A「ちょい待ってくれねぇか」
B「ん?」
A「ん?じゃないよ。雑草はひどくないかい?」
B「薬草のが良かった?」
A「ランクの問題じゃないんだよ。命がないんだよ」
B「ワガママだねぇ」
A「いや至極真っ当でしょ」
B「じゃあゴブリンでいい?」
A「それでいいよ、チート能力あるかもしれないし」
B「仏かよ」
B「お客さん、ゴブリンになって異世界で何したいですか?」
A「やっぱねぇ、女の子とイチャイチャしたいっスねー」
B「夢ですよねー。女の子殺した後はどうするんですか?」
A「話聞いてた?」
B「え、イチャイチャするんでしょ?」
A「モンスターの発想やめて」
B「そうじゃないの?」
A「あのさ。イチャイチャっていうのはね。こう、チュッチュしたりさ」
B「血を?」
A「だからモンスター」
B「首筋が一番旨いんだって」
A「ねぇモンスター。……楽しく生きよう」
B「しゃーねーなぁ」
B「お客さん、カット終わりました。後ろはこんな感じで」
A「おぉー、良い感じッスねー」
B「ところで休日は何されてます?」
A「ヘイヘイ、モンスター」
B「なんだ」
A「今じゃない。会話の時間は、もう終わったの」
B「お前シンデレラだったのかよ」
A「魔法解けるんじゃねーわ。タイミングがおかしいんだよ」
B「そっち?」
A「そっち」
B「しゃーねーなぁ」
B「お会計三千円になりまーす」
A「はーい」
B「どうもありがとうございましたー」
A「また来まーす」
B「……バッチリ?」
A「大丈夫。おまえ美容師になれるよ」
B「安心したわ」
A「うん、いや、待て。お前、会話担当じゃね?」
B「……あ、やべぇ全部終わらせたわ」
A「しかもよくよく考えたら俺の頭、おかか入りのサンドイッチで終わってんだよ。お前の希望であって俺はサンドイッチで過ごすのやだよ」
B「イカしてるじゃん。つーかお前、美容師の免許持ってたっけ」
A「いや無いけど」
B「じゃあ多分、このバイト無理だわ」
A「マジで?」
B「おう。結局なにすんの」
A「じゃあ、クエストこなして小遣い稼ぐわ」
B「結局異世界転生じゃねぇか、もういいわ」
二人「どうも、ありがとうございました〜」