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4話 幽霊になっちゃったよ的な話

 ターーーン


 2発目の弾丸を熊に命中させると、慌てて倒れていた男に駆け寄る猟師。

 そんな光景を見下ろしていた。


「ええええええええええええええええええええ?なんで?なんで猟師に撃たれてんの俺!つうかなんで意識あんの?!コレ幽霊って奴?マジかよ!あったよ死後の世界!!!幽霊とか全然信じてなかったわ!」


 予想外の出来事に思わず声を出してしまったが、周囲に声は届いていないようだった。自分の体を確認するが、さっきまで着ていた服装で手足がある。が、半透明だった。THE幽霊である。怪我をしていたはずの右肩には痛みはなく、左手で触った感じでは怪我はなかった。頭も風穴は空いて無いようで何よりだ。


 これからどうしようかな?天国とか地獄もあるんなら逝く前に両親の顔でも見てから逝くかな、てか家の方向どこだ?


 なんて事を考えていると、熊の死体から出てきました。


 熊さんの幽霊です。


 熊さんの幽霊は、自分の体より透明度が高くなんか全体的に赤く見える。

 熊さんの幽霊は、俺を見つけると一直線に四つん這いで空を駆け上がってくる。


 第2ラウンドスタートだ。


 え?素手じゃ無理だろ武器武器!なんか柄の長い鈍器的なものないの?


 当然、有る訳がないのだが、でかいハンマーを思い浮かべたら、イメージ通りのデカいハンマーを手にしていた。


「幽霊スゲエエエエエエエエエ!」


 どうやら、物質とは無縁の幽霊は、思ったイメージの通りになるようだ。

 早速、手にしたハンマーを両手で振りかぶって、目の前に迫ってきた熊の右頬に叩き込んだ。


 空中で転がる熊。しかし、ダメージはなかったようで再びこちらへ向かって来て、右前足を振りかぶる。俺はそれをハンマーの柄で防ぐ。一人と一匹はそんな攻防を繰り広げた。


 どれ程、時間が経ったのだろうか。お互い疲れはないようだが膠着状態が続いている。

 途中途中、隙を突いては武器を変えていた。今手にしているのは槍と斧が一体となったハルバードだ。


 夢中で戦っていたせいで気付かなかったが……


 どこだここ?


 宇宙っぽい場所に居た。

 周囲は暗く、離れた場所に星の煌めきの様に小さな光の玉が見える。それと、目の前の熊の前足。


「っぶね」


 熊の爪が目の前に迫った所をバックステップで躱す。生きていた頃には絶対にできなかった芸当だ。


 攻撃が躱された事で体制が崩れる熊。そのまま、熊の頭部目掛けて渾身の力でハルバードの刃を振り下ろした時。遂に熊は倒れたのだった。


 倒れた熊のその半透明の体は、遠くで瞬く無数の光の玉と同じように、拳大程度の光の玉となった。


 その光の玉に触れると、光の玉は俺の体に入り込んだ。

 突如、熊の歩んできた生が走馬灯のように脳内を駆け巡る。


 何だ?熊と合体したって事?体は特に変化はないけど。イメージで武器が現れたりする幽霊の世界だし、何があってもおかしくないか。


 考えても判断材料が無いので、状況の把握に努める。

 今居る場所は宇宙っぽい暗い場所を漂っている。遠くに星の様に煌めく光は恐らくは、さっきの熊の様に力尽きた幽霊だか魂だかの成れの果てだろう。

 戦っている時は気にならなかったが、微かに引っ張られているような、一定方向に流されているような感覚があった。


 俺もあの光の玉になるのか?それとも引っ張られた先に天国か地獄があるのか?このまま漂ってるだけじゃ、光の玉みたいになるだけだろうし、多分、光の玉になっちゃダメな気がする。引っ張られた先が、地獄かもしれないけど人の姿のうちに行かなければ取り返しがつかない事になる気がする。


 方針を決めると、引っ張られる方向へ自らの意思で移動を始めた。

 しかし、いくら進めど同じ景色で非常に飽きる。

 飽きたので、近くにありそうな光の玉を目指して進んでみたが、全く近づく気配もない。諦めて再び流れの先に進む。


 天国とか地獄だったらどうなるんだろう。戦いの中で死んだからエインヘルヤルとか!あ、でもヴァルキリー現れてないし、正確には猟師の流れ弾が当たった事故死だからダメか。前世の記憶を持ったままの転生無双系もあるかもしれん!などと妄想を膨らませながら進むと、進行方向にある光の玉の一つに近づく事ができた。


 この光の玉は何の生き物かな?人間だったら良いなぁ


 能天気に光の玉に触れた。光の玉は、先程と同じように体の中に吸い込まれた。

 脳内を駆け巡る走馬灯。俺は、泣いていた。


 彼女は、高校2年生だった。ずっと好きだった幼馴染とは、思春期を迎え少しぎくしゃくした関係になっていた。お互いに、もっと仲良くしたいのに昔の様にうまく話せない。

 転機になったのは文化祭。幼馴染と同じ文化祭の実行委員となり、苦楽を共にするうちに、また昔の様に何でも話せるようになった。少し疎遠になってはいたが、お互いに好意を持ったままであった。文化祭の後、幼馴染からの告白に彼女は喜んだ。そして幸せな日常が過ぎていく。


 ある朝、彼女は、一緒に登校する為に幼馴染を待っていたが、彼は来なかった。幼馴染は突如、失踪したのだ。原因は不明。突然の失踪に周囲は騒然となり、捜索依頼も出されたが、彼が見つかる事はなかった。気丈にも彼女は、幼馴染は必ず見つかると信じ、悲しみを押し殺し、明るく振舞った。それが裏目に出たのか、校内では彼女が幼馴染と喧嘩をし、殺して埋めた。などという噂が広がった。根も葉もない噂に傷つきながらも、馬鹿らしい、と噂を気にしなかった彼女であったが、遂には心が折れた。警察に呼び出され、噂について聞かれたり、幼馴染の母親に人殺し!などと罵られた。そして、駅のホームからこの場所へやってきたのだ。


 俺は、軽い気持ちで光の玉に触れた事を後悔した。

 光の玉は魂その物であり、彼女の魂は、俺の魂の中で今も静かに泣いている。傷ついた彼女を救う方法は、わからないがいつか救い出してあげたいと思う。


 こうして、目指すべき方向に進みながら、いくつかの魂と繋がった。

 大往生した老人。人生に満足して逝った若者。など、人それぞれであったが、皆、死を受け入れていた。俺が、人の姿を保ったままなのは、死を受け入れていないからなのだろうか?答えは出ぬまま、出口が見た。


 さて、この先は天国か地獄か、はたまたヴァルハラか


 俺は、出口と思われる大きな光の中に飛び込んだ。


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