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13話 トンネルの中には的な話

 ベラルを出発して約2週間。遂にスヴェント山脈の抜け道に辿り着いた。スベント山脈の抜け道は、これまで通ってきた道同様、交易の為に森の中を整備された一本道であった。しかし、年間を通じて、一定の温度を保たれたトンネル内は、魔物にとって住みやすい環境であった。スヴェントの森は魔王の支配下であり、スベント山脈でも強力な野良の魔物に追われた、魔物達がこの抜け道に逃げ込むのだ。抜け道を利用する商人達も魔物にとっては餌である。すぐに野良の魔物が住み着き、次第に横穴を広げ、遂には、迷宮となってしまった。しかし、それは、横穴に入ってしまった場合である。まっすぐに、交易路として使用している大きな通路からはみ出さなければ、単なる一本道だ。横穴から突然、魔物に襲われることが有るが、この抜け道を使わずに、スヴェント山脈を越えるのは現実的ではない。


 スヴェント山脈は、標高が高く、真夏でも山頂付近は雪に覆われてり、ワイバーンなどの多くの野良の魔物が住み着いている。腕に自信のある者が、十分に準備して超える事は不可能ではないが、抜け道がある以上、山を越える者は居ない。


「アキト。魔法で周囲を照らしてくれ。いいか、くれぐれも横穴に入ったりするなよ。まっすぐ大きな道を通ればいいんだ。脳みそが空っぽなスケルトンでも、それくらいはできるだろ。」


「毎回毎回、お前は一言多いな。」


返事をしながら、チャーリーの頭をひっ叩く。いつもの調子だ。


「お前こそ、魔物に喰われないように気を付けて進めよ。」


 軽口を叩きながらいつもの様に進むが、その足取りは若干重い。魔物を警戒しての事だ。スヴェント国内の街道とは違い、この抜け道の魔物は、すべて野良の魔物であり、今までの街道とは比べ物にならない程、その遭遇率は高い。通常、商人達は凄腕の魔物ハンターを護衛に何人も雇い、馬車で半日程で一気に駆け抜ける。しかし、アキト達は徒歩での移動となり、丸二日程この薄暗いトンネルを進む事となる。


 初日は、2度、魔物に襲われた。難なく撃退し、ゾンビの配下も増え、2日目は人数を警戒しているのか、襲われることはなかった。問題はチャーリーの睡眠不足だ。いつ襲われるかもわからないこの抜け道では、ゆっくりと休憩もままならず、殆ど眠らずに歩いてきた。


「今日は順調だな。残りは大体三分の一くらいか。おいチャーリー大丈夫か?ふらついているぞ。少し休むか?」


「眠いだけ。問題ない。それよりも急ごう。さっさとこのかび臭い穴からはおさらばしたいんだ。」


「そうか、でも気を抜くなよ。ん。来たぞ!多いな、チャーリー、ゾンビ達の間に入って援護しろ!」


 どうやら魔物達は、俺達を警戒して群れで襲ってきたようだ。背中から剣を取り出し、構え、前にでる。ゾンビ達は大小合わせて7体、チャーリーを囲むように左右、後方を担当する。ゾンビ達の戦力は期待できないが、壁役には丁度良い。対する相手は熊型の魔物。それが10匹、それが俺達を取り囲んでいる状況だ。これ程の数で同時に襲われるのは今回が初めてだが、ゾンビ達が抑えてる間に、1匹ずつ確実に仕留めていけば問題ない。


「ウガァッ」


 1匹が叫ぶと同時に魔物達は一斉に襲ってきた。人間として死んだ時を思い出す。あの時も熊と戦っていた。怖くて必死だったが、今は違う。武器もちゃんとあるし、魔法も使える。身体は割と頑丈な骸骨だ!ボロボロで錆びだらけで、しかも体の1部だが、一応鎧も着てる。魔物との戦闘もこれが初めてではない。自信を持て!そう自分に言い聞かせる。


 まずはこいつ!


先頭を走って来た魔物が、大きく口を開け、俺に食らいつこうとする。左足を一歩斜めに踏み出しながら、魔物の口に刃を叩き入れ、顔を半分に切り裂いた。


 1匹目!


返す刀で2匹目の頭部を割る。


 2!


 そのまま、左後方へ向き直り、左側のゾンビに取りついた1匹へ剣を深く突き刺す。抜けそうにない剣から手を放し、3匹目を蹴り飛ばす。


 3!


 背中から2本目の剣を抜き、魔法で右側に取りついた魔物の頭へ氷の礫を打ち込み、仕留める。


これで4匹!


 ゾンビ達は壁の役割をしっかりと果たしている。チャーリーも魔法で確実にダメージを与えているようだ。俺が瞬く間に4匹仕留めた事で、後方でゾンビに取りついている3匹を残し、残りの2匹は俺の周囲で隙を伺っている。もう1匹ボスらしき魔物は、前方で様子を見ている。まだ動かないようだ。


 魔法でも十分仕留められる事を確認出来た。先に前に居る2匹を片付ける事にする。剣を振り、ア○ンストラッシュにヒントを得た圧縮した空気の刃を1匹に放つ。空気の刃は簡単に魔物の身体を2つに引き裂くが、剣を振った瞬間、もう1匹が体当たりを仕掛けてきた。600キロはありそうな魔物の体当たりで吹き飛ばされる。


「チャーリー!!」


 地面を転げながら叫んだ。俺が吹き飛ばされてしまった事で、前方ががら空きになってしまう。俺を吹き飛ばした魔物は、チャーリーに狙いを定め、腕を振りかぶる。


「シールド!!」


 チャーリーを守るよう魔力を込める。同時に凶悪な爪がチャーリーを襲い、小さな体が空を舞った。そしてそのまま、抜け道の横穴へと吸い込まれた。


 魔物の爪は無残にも折れていた。咄嗟にイメージした魔力の盾が致命傷を避けてくれたと信じたい。


「全員チャーリーを追いかけて守れ!」


 指示を出すとゾンビ達は、身体を爪で引き裂かれようが、肉を食いちぎられようが、構う事なく、チャーリーの飛んで行った横穴へ走り出す。俺は、壁に背を預け、大きく声を上げ、魔法で小さな氷の礫を大量に作り、一斉に魔物達へ叩きつけた。狙い通り、魔物達をこちらに引き付ける事が出来たが、完全に取り囲まれてしまった。


次回19日22時

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