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11話 皆も小学生の頃やったよね的な話

 俺はチャーリーを抱えて、町から伸びる一本道を一気に走り抜ける。周囲は森に囲まれており、道幅は10メートルくらいある。交易をしている為だろう。整備された道が続く。そのまま1時間程走った所で広場が見えた。広場に着くとチャーリーを下す。


「なぁここは、休憩所か?」


「その通りだ。脳みそが無いくせに良くわかったな。誉めてやろう。」


 挨拶代わりの悪態に対し、こちらも挨拶代わりにひっ叩く。先程のサラスさんの言葉を忘れ、いつも通りの調子に戻っているチャーリー。休憩所は、商人達が休憩や野営ができるよう、大体30キロ毎に1カ所設けられているそうだ。つまり俺は時速30キロ程で突っ走ってきた計算になる。


 俺達はここで夜を明かし、朝に移動する事にした。俺は特に疲労は感じていないし、チャーリーは俺に運ばれていただけだ。このまま、チャーリーを背負って次の休憩所まで走っても良いが、これが常態化すると俺はチャーリー専用の乗り物になってしまう。それは癪なのでチャーリーを歩かせなければならないが、ベラルでゆっくりし過ぎたせいで歩いて次の休憩所に着く頃には完全に日が暮れてしまう。


「よし、チャーリー野営の準備をしておけ、俺はその辺で落ち葉や枯れ木を拾ってくる。」


「わかった。休憩所でも野良の魔物に襲われないとは、限らないから早く戻って来いよ。」


「俺はお前の護衛じゃねぇ。」


 荷物を降ろし、森に少し入った所で、手早く薪になりそうな枝葉を拾い、戻ってくると、チャーリーは地面に大きな革を敷き、その上に布団と枕を敷いて寛いでいる。


「おい、まさかとは思うが、お前のリュックの中身は、それですべてじゃないだろうな?」


「バカを言うな。そんな事ある訳ないだろう。ボクの食器セットとサラス様から預かった通信術用の水晶が入ってる。」


 見て見ろと言わんばかりに、リュックの中を見せるが、本当にそれしか入っていなかった。


「バカはお前だ!水は?食料は?テントはどうした?!雨が降ったら布団がずぶ濡れになるぞ!地図は?目的地までの道のりは頭に入っているのか?!」


 一瞬キョトンとして、慌てだすチャーリー。


「な、なんでもっと早く言ってくれなかったんだ!」


「知るか!お前が必要な物だろう。自分で準備しなくてどうする!」


「そ、そうだ!まだ慌てる事はない。アキトちょっとこれを真似してみてくれ。」


 そう言うと、チャーリーは、リュックから愛用のマグカップを取り出し、地面に置くと、両手を前に出し魔力を集める。すると見る見るうちに小さな水の玉が出来上がった。それをマグカップに落とし、得意げに飲み干した。


「おー!これが魔法か!俺にもできるかな?やってみるわ!」


 俺はチャーリーの真似をして両手を前に出し、全身から魔力を集める。ふと、子供の頃にか○は○波の練習をした事を思い出した。すると。出来てしまった!


 か○は○波だ!


「すごい!遂に出来たぞ!か○は○波だ!」


 俺の両手から放たれたか○は○波は、チャーリーの頭を掠め、街道沿いの木々をなぎ倒し、消えていった。


「バ、バカ!危ないだろう!!それは魔力弾だ!なんて無駄な魔力の使い方をするんだ!水をイメージするんだよ!」


 これは、間違いなく応用が利く気がする。ア○ンストラッシュや霊○も出来そうだ!あの頃の俺の努力は無駄ではなかった!興奮のあまり、チャーリーの言葉も聞かずに、剣を取り出し、右手で逆手に剣を持ち、身体を右へ捻って腰を落とす。小学校の頃、傘や箒で何度もやったあのポーズだ。剣に魔力を注ぎ、技の効果をイメージし、標的を決めた。


「ア○ンストラッシュ!」


 そう叫びながら腰を捻り剣を振り抜くと、剣から放たれたア○ンストラッシュは、再び、チャーリーの頭を掠め、街道の木々を切り倒していく。チャーリーの頭を掠めたのはわざとである。


「バカ!おいバカ!はしゃぐな!危ないだろ!やめろ!バカ!」


「バカバカうるさいぞ。折角長年の夢、いや男のロマンを叶えたというのに。水を差しやがって、そうだ。水だったな。水。」


 面倒だが、剣を置いて、右手の人差し指と親指を立てて、左手を右手に添えて霊○の構えをとると、周囲の水蒸気を集めて水玉を作るイメージをする。すると、魔力を集めるまでもなく、人差し指の先に手ごろな水玉ができた。マグカップに狙いを定め、「レイ○ーン!」と、言いながら水を注ぐ。水玉を作り過ぎたみたいでマグカップから溢れてしまった。


「いやぁ楽しかった。成程、コレで水の問題はクリアできたわけだな。」


「おい、今のはどうやったんだ?殆ど魔力を消費していなかったぞ!」


「あぁ、全然魔力要らなかったな。普通に空気中の水蒸気を集めて、マグカップに注いだだけなんだけど。」


「空気中の水蒸気?もしかして、稀に異世界人が使えるっていう魔法を効率的に発動させる秘術か?詳しく教えてくれ!」


「あー、もしかして。」


 人差し指を立て、今度は単純に水を指先に出現させるイメージをする。今度は、水は現れず、必要な魔力を指先に集めると水玉ができた。


「成程、やっぱりね。スヴェントで異世界人を呼び出したのは俺が初めてみたいだから、ここには物理法則とかが伝わっていないのか。まぁ、いいや、あとで教えてやる。そんな事より、食料とテントはどうするんだ?」


「絶対だな!絶対だぞ!約束だからな!」


「わかったわかった。」


「よし。テントはそのうち商人とすれ違うだろうし、調味料と一緒に売ってもらう。食料は、生物探知の術式を教えるから、ウサギや鳥を獲って来い。――いえ、獲ってきて下さい。」


「おい、殆ど俺任せじゃねぇか。まぁ最初だけは、俺が手伝ってやるから、追々、自分でできるようになれよ。」


 こうして、生物探知の術式を教えてもらった俺が、ウサギを見つけ、ナイフに魔力を流して、引力で、ウサギに吸い寄せられる様に刺さるイメージで投げつける。簡単にウサギが狩れてしまった。ウサギの魂は俺の糧となる。ウサギの肉体の方は、適当に血抜きをして、チャーリーに渡した。皮を剥いだり、内臓を取るのって、現代人の俺にはちょっと抵抗があるので、やりたくない。チャーリーが下処理をしている間に、俺は適当な石を積み、薪を組んで、枯れ草に熱を集約するイメージで火をつけた。異世界サバイバルちょろいな。


 日が沈み、チャーリーの食事が終わると、布団を片付させる。今日は革の敷物だけで寝るのだ。チャーリーは、「ボクは、デリケートだからあの布団と枕がないと寝れない。」などと、ほざくが、夜露で布団が濡れて、重くなってしまっては明日の移動に支障をきたす。「異世界の秘術を教えないぞ。」と、脅し、2人で夜空を眺めながら、簡単な物理法則について説明した。チャーリーは目を輝かせて話を聞いているが、暫くすると話を聞きながら寝てしまった。一人、夜空を見つめて思い耽る。実はこうしてキャンプをしながら、自分の子供に色々な事を聞かせる事に憧れていたので、とても楽しかった。半面、生前、何一つ夢を叶えられなかった事が悲しかった。両親は元気だろうか。今頃、俺の葬式か通夜が行われているんだろうな。先に逝ってしまった親不孝者だが、元気にしてるとだけ伝えたい。


 夜も更け、俺達の旅の1日目は終了した。


少し更新頻度上げます。次話から3日に1回で予約入れておきます。次回8月13日 22時

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