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10話 雷と骸骨は様式美的な話

ユニークアクセス100人(∩´∀`)∩ワーイ

 景色が一変した――はずなのだが、ぶっちゃけ、あまり変わらなかった。多少調度品やレイアウトが違うが、先程まで居たサラスさんの部屋とあまり変わらない部屋に立っている。


「では、行ってまいります。」


 サラスさんの研究施設を出ると、研究所を中心に巨大な都市が広がっていた。サラスさんの研究施設も巨大で何人もの魔術師らしき者を見かけたが、この町はそれ以上だ。


「すごいな。この世界で人間の町を見た訳じゃないが、人間の都市と同等かそれいじょうなんじゃないか?」


「サラス様が治めるここベラルが特殊なのさ。無知なアキトに説明してやろう。サラス様は人間達にも広く知られた大賢者様だからな。種族を問わず多くの者がサラス様の下で研究を手伝いながら教えを乞う者がいるんだ。そういう連中は、このボクの様に知力が高いから自然と、高水準の家が研究施設の周りに作られるんだ。で、そいつらを世話したり、サラス様とのその周囲の需要を満たすために、町がドンドン広がっていき、スヴェント随一の町ベラルが生まれたという訳さ!」


 チャーリーの説明は若干イラッとする所が多々あるが、今後の自分の拠点作りにも参考になるので黙って聞いておく。


「需要は食糧や生活用品だけじゃない。ベラルでは、一部の商人だけを通じて人間との取引も行われているんだ。そして、ここは魔法や魔術を研究する最先端。当然その触媒や材料となる貴重な素材が集まるん研究者にとって夢のような街なのさ!」


「ふーん。じゃぁ人間なんかもベラルで買い物できるのか?」


「一般的に売られている物ならね。でも、強力な魔術の触媒に使われるような素材は別だ。ボクみたいな研究員が、サラス様に許可書を発行してもらわないと買えない。サラス様が認めた商人は、自由に取引できるけど。毎年、取引記録を提出しなければいけないし、当然、そういった素材や機密性が高い研究の知識は、ベラルの外へ持ち出し禁止なんだ。これは研究員だろうと商人だろうと同じさ。密輸出しようとしたバカや外出許可を忘れて町から出た研究員が、毎月1人くらいは、門を出た所で黒焦げになるのはこの町の名物さ。そういえば1週間くらい前に、貴重な素材を盗み出して逃げ切った奴がいたな。密輸出禁止装置は、この都市を囲むように展開された、強力な魔法と複雑な魔術を組み合わせたベラル自慢の結界なんだけど。持ち出した奴は、恐らくどこかの国の勇者か、それに匹敵する奴だろうね。サラス様がいれば魔法をレジストした時点で、直接制裁を加えに出てただろうけど、あの時は魔王様の所に行ってたから、まんまと逃げられたらしい。お陰で、お前が召喚されるまでサラス様の機嫌が頗る悪かった。」


「ふーん。」


「おい、アキト。何を他人事のように聞いているんだ。道中で怪しい奴を見つけたら報告と制裁を加えるようにサラス様から命令を受けているんだぞ!」


「はぁ?そんな話聞いてないぞ。」


「バカめ。今言っただろう。これはサラス様の麾下全員に与えられた命令だ。」


「うぜぇ。まぁ、1週間も前だし、遭遇する事はないだろう。」


 そんな調子で、歩きながら、俺は気になった事を、あれやこれやとチャーリーに質問し、チャーリーは、屋台で買い食いしては、俺の質問に答える。そして、漸く門が見えてきた。


 門の前後には衛兵が立っており、怪しい人物がいないか目を光らせている。門、というか、町の外壁に沿って僅かに力を感じる。恐らくこれが結界とそれを維持する魔力だろう。門を通り過ぎた瞬間、嫌な予感がした。魔力の高まりを感じて、即座に背負っていた盾を頭上に構え、チャーリーを庇う様に前に出る。


 瞬間、強力な落雷が俺を襲った。


「ぎゃああああぁぁぁぁ。」


 良く雷に打たれた時に骨が見えるなるなんて、ベタな表現があったが、今の俺はまさにそれそのものでギャクシーンである。


 衛兵が駆けつけてきて、槍の穂先を突き付けて俺たちを囲み、やじ馬が集まり、辺りは騒然となる。


「密輸出禁止装置が発動したみたいだな。おい、アキト何を持ち出したんだ?この魔法に耐えるとは頑丈だな。」


「このバカ!俺の事をもっと心配しろ!俺は何も持ってきてねーよ!これ明らかにお前を狙ってたぞ!お前、研究員だろうが!ちゃんとサラスさんに外出許可出したのか?!」


「そういえばチャーリーの外出許可を出してなかったわね。全く、この結界にひと月で2人も耐えられる者が出るなんて、やはりもっと強力にするべきね。」


 即座にサラスさんが現れ、衛兵達が下がる。俺の予想は正しかったようで、今回の結界の発動はチャーリーが原因だったようだ。


「サラス様!わざわざ、ご足労頂き、申し訳ありません。」


 チャーリーは自分のミスに顔を真っ青にし、サラスさんに謝罪する。おい、俺にも謝れ。感謝し、言葉遣いを改めろ。


「無事なのは不幸中の幸いね。チャーリー、あなたのそういう抜けてる所も旅を通じて成長なさい。小さな成長がの一つひとつが上位存在に昇化する秘訣よ。アキトにも感謝なさい。アキトが咄嗟に庇わなかったらあなた、今頃消し炭だったんだから。」


「グゥ。アキト、た、助けてくれて、あ、あり がと」


 悔しそうに俺に感謝を述べるがこれはチャンスだ。ここでチャーリーに立場というものを理解させてやらねばならない!


「うん?声が小さくてよく聞こえないな?なんだって?」


「アキト!助けてくれてありがとう!」


「はぁ。命の恩人に対してそんな態度では、昇化とやらはまだまだ先のようだな。」


「キイィィ!アキト様!この度は、ボクの命を救って頂き、感謝致します!」


「うむ、今の言葉を常日頃忘れぬように!」


 ざまぁ!生意気なコイツの悔しがる顔で飯がうまい!


「では、早く行きなさい。全く、世界の狭間でも、この町でもフラフラと寄り道ばかりして、スウィーチまで行くのに何か月かけるつもりなのかしら。」


 サラスさんは小言を言いながら俺たちが出ていくのを待ってるようだ。召喚される時に俺が寄り道してたのも知っており、ご立腹だ。さっさとこの場を去らねば。


「それでは、改めて。魔王様の命に従い、スウィーチへ行ってまいります。」


「良いから行きなさい!」


 美人の怒りの形相程怖いものは無い。俺は壊れてしまった盾を捨て、チャーリーをリュックごと抱えてダッシュで立ち去った。


 生まれ変わって初めての外の世界が、俺を待っている。


今回から毎週土曜日更新です。


8/4 1時11分

ストックがあると書かないので次回8月10日以降は3日に1度更新で8月28日まで予約入れました。

適当にサブタイトル付けました。


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