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Sに生きる  作者: 咲耶
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「んー…」


「どこか痛む?おかしなところがあるとか?」


「なんだか…色々?

あんなに大きな傷だったのに、見てよもうこんなに薄い。それに二足歩行も違和感あるし。」


「だからこそ抜糸したんだけど。

そうだなぁ歩行練習しないと、今後面倒だよね。」


「そんなの杖でもついていれば済むだろう、大袈裟だな。」




暫く痛みに耐えながらなんとか抜糸を終えたのは少し前のこと、当然のことながらまだ包帯生活は終わらず上半身は真っ白に覆われていた。


既に傷口に触れてもぴりっと痛むぐらいで抉るぐらい強くなければ痛みにもだえることもないだろう。


我ながら再生の速さに驚きながらも、2人はもっと驚いていた。


当初の予定から早まって早まって抜糸を実施したのだから。


他にも細かな切り傷擦り傷はいくつかあったが跡形もなく消えており、いずれ傷跡も記憶もきれいさっぱり無くなるのかもしれない。




すっかり私は起き上がれるようになり、なんなら立ち上がって陸上をようやく闊歩できるほどに。


しかしそこで一つ問題が起こった。


二足歩行なんて経験したことがない。




「説明しようにも人魚の水中の進み方と魚類の進み方はまた少し違うようだし、例えようがないよね。」


「…馬鹿馬鹿しい、この診療所の中を歩き回っていればすぐだろう。」




頭上から二人の声が降ってくる。


何故ならば私は転んだ、らしい。


なんとかなるだろう、という謎に充ちた自信のお陰でこうして見事膝から着地してしまったのだ。


しかも膝には擦り傷が。



「割と痛いのがまたちょっと辛いよ。

あぁもう、なんか体が重いし固いし上手く進まない!」


「なら少し体をほぐすか、よくよく考えればずっと寝たきりが急に歩けと言われてすんなりいくわけがない。」



そして指示されるままに関節を曲げ伸ばししたりぐるぐると回してみる、特に脚は効果が直ぐに実感出来た。


あれだけ言うことを聞かなかったものの、柔らかくなれば直立すら難しかったのになんとか立つことが出来た。


人の子ならば赤子のうちに習得するらしく、少々恥ずかしいが慣れないうちは壁を支えに立てばいいとのこと。


人の子も始めはそうやって立つことに慣れていくらしい。




「割といい感じかも…でも杖はまだまだ練習かな…きゃあっ!」


「危なっ…愚か者め、己を過信しすぎだ。」



杖を使って練習していたが油断したせいで椿の元へと倒れ込む、しかし何事もなく終わった。


椿は体が大きい、少なくとも身長はやっとこさ並んでも頭二つ分は差があった。


いかにも支援向きの蓮に対して椿は最前線で戦う戦士と言うのがお似合いだ。


そのためか私一人が倒れ込んだところでびくともしない。




「さ、今日はここまで。

抜糸したばかりなんだから、桜もそんなに動き回らない。」


「でも布団の上って暇だし…何かないの?」


「なら本でも読むといい、椿に文字の読み方を教わって。」



椿を見上げながら教えて?とお願いする、やや不服そうだが了承してくれたようだ。


棚には既に何冊か置いてあり、そんなに暇を潰せるかわからないが蓮が一冊手に取って手渡してきた。


受け取ってぱらぱらと頁を捲っても読み方がわからず首を傾げるだけだった。

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