スマホ人間になりたい、わけねぇだろ!!
今はどこでも当たり前となっているスマホ。
暇さえあれば、それが自分の世界に繋がるものだ。
なのに、それがここにはなかった。たったそれだけでも激怒ものになるのも、致し方ない。
『なんでスマホがないんだよ!』
この白い空間で叫んだところ。帰って来る声は老人、良くて中年男性といったところの声。
『それは君が今、私の遊びに招かれているからだよ』
『お前の遊びに俺は呼ばれたのか!?』
『そう怒らないでくれ。私の楽しみなのだ。人間観察』
姿は見えんが、
『訊こう。野本京太くん。君は今、何が欲しい?』
『神様の真似事か』
『真似のつもりはないけれど。答えてくれれば、元の世界に戻してあげるさ』
どーでも良かったが。夢の中だと思えば、自由に動いて口も喋るここにしかなかった。普段、やんねぇ事すらやってしまうようなこと。
『俺がスマホと合体するみてぇーな!便利な人間になりたいな!』
『ス、スマホ……私、機械に疎いんだがねぇ』
『答えたからさっさと元の世界に戻せ!』
『分かった分かった。あとでそっちに送るから』
こーして、訳の分からない空間でのやりとりは終わった。
現実世界で目覚めた時、やけにこのやり取りは覚えていた。
◇ ◇
とある喫茶店にて
「すまないが、広嶋くん。スマホってなんだい?」
中年や年寄りが科学の進歩についていけていないような、言葉だった。事実、見た目は想像通りの老いた喫茶店の店主である。
訊かれたお客様であり、仲間の1人である広嶋は実物を見せるのであった。
「こーいうのだろ。なんだよ、アシズム。知らねぇーのかよ」
「おおっ、それがスマホかい。携帯電話と変わらないわけだね」
「まぁ、そーだな。俺は野球中継と天気ぐらいしか確認しないが」
「いやぁ。最近の人達はそれを持っているんだろう。私、持ってなくてね」
「神様のお前には要らねぇだろ?」
「だからさぁ、スマホと人間が合体したいっていう願い。どーやって叶えれば良いか。難しくてさ。イメージでくっつけてみたんだけど」
「わかんねぇのにしてやるなよ。イメージだけでやるなや」
「ごめん、始末して来てくれない?」
「俺は廃品回収人じゃねぇーぞ」
◇ ◇
「ううっ」
あの日から何かがオカシイ。
いつもなら菓子を中心とした、食べ物に夢中になりながら、遊ぶことを楽しんでいるはずなのだが。今は
ブスッ
ケツから生えて来たしっぽ。その先端にはスマホ充電の端子。これで自分を充電する事により、体力と気力が湧き上がってくるようになっているのだ!……
「いや!!おかしい改造されてんだろーーー!!?どーいう事だ、おい!?何かってレベルじゃねぇ!!1週間経って、オカシイと思えたぞ!」
サイヤ人のしっぽ以上におかしい体の変化を、何かレベルでの違和感に思えるほど謎の現象が起こっている。これは自分だけじゃない。
ガララララ
「あ、京太。今、充電中なのね。ちょっと、調べものして欲しいんだけど」
「姉ちゃん!!俺の体おかしいよな!?絶対変だよな!?みんなと違うよな!」
「?何言ってんの?あなたは世界初の人間とスマホが合体した、超科学人間じゃない。馬鹿なの?」
「姉ちゃんが何言ってんだよ!!」
世界はどうやら改変されたようだ。俺自身、1週間くらい気付かなかった。スマホと合体、超科学人間として今。俺は生活をしている。
ケツから充電用のケーブルが生えている違和感は、ベルトのように巻けば普通の人間のように見える。
これでこの変な外見を誤魔化す事ができる。
「おーっ、野本すげぇっ!GOOGLE先生を利用して、全部分かるのかよ!」
「授業受けながら動画にゲーム、漫画が見えるって羨ましー!」
「というか、野本に授業なんて要らないな!学ばなくていいなんて、みんなが羨ましく思うぞ」
俺の脳はどーやら、GOOGLE先生などからネット情報を取り寄せる事ができ、
『京太ー。帰ったら飯を作っておきなさーい』
「姉ちゃん、テレパシーするな」
『私は電話してるんだけど』
テレパシー感覚で電話やメールのやり取りが可能。
自分が見た情報と聞いた情報をそのまま動画として、作成することも可能。世界の天気も情勢も瞬時に分かる。とんでもない能力を手にしている。人間とスマホが一体化したの、サイコーじゃねぇか!
そー思っていた時期がありました。
「まったく姉ちゃんは……」
そうそう、自分の右手にはLINEPAYやSUICAの機能を持っており、楽々と買い物ができるようになっている。
そーして買った今日と明日の飯の材料を自転車カゴに入れ、発進しようとした時。
「ん?」
痛みはなかったが、異常な違和感。目を疑うことが身体に起こっていた。
分かりやすい外傷であるのに人間じゃあり得ない事だった。
「ヒ、ヒビ!?」
血は流れないし、骨だって見えやしないが。いつの間にかヒビが、手の平に刻まれていた。大慌てで家に帰って、鏡で全身を確認すれば
「か、身体全体にヒビが入ってるじゃねぇか!?」
スマホ機能を手にしたと思ったら、身体そのものもスマホのような構造になっていた。ヒビと傷が無数にあって、どれも直る気配はなし。自然回復など起きない体だった。
それだけではない。
「ちょっと!京太!あんた、どんだけスマホ使ってんのよ!?」
「え?姉ちゃん」
「電話料金に通信費!あんただけ、2000万越えよ!!なにやってんの!?」
「ええええええぇぇっ!?」
ど、ど、どーなってんだ。こりゃ。こんなの一家離散するレベルじゃないか。
「あんたは会話しすぎ!あんたは会話するだけで料金が発生するのよ!電話料金が嵩むの!」
「いやいやいや!」
「一言につき100円よ!!反論も言い訳もするな!!」
「実の弟にそんなこと言わないでください!」
「思考するだけでネット繋いで通信するし、行動の一つ一つにも料金が掛かるの!!あんたは黙って、周りが使いたい時だけ、動きなさい!!この人間型のスマホがーーー!!」
ええええええええっっーーー!!
ブツゥンッ
こーして、野本京太は精神的に折られ、意識を飛ばすのであった。
◇ ◇
「バッテリー切れして良かったな。俺が破壊するとこだった。人間の行動が思った以上に力を使うみたいだ。内臓バッテリーというか、心臓も大分弱ってるぞ」
意識を失った野本京太を回収した広嶋は、アシズムの元へ運んだ。
やがて人間と科学が融合した生物が生まれるかもしれない。
「元に戻せるよな?世界含めて」
「戻さないと、彼が死んじゃうよ」
「やったのお前じゃねぇか。なんで俺が回収してんだよ。責任とって元に戻せよ」
「”自分店”はもっとシンプルな道具と合わせて使うべきだね」
スタイル:魔術
スタイル名:自分店
詳細:
使用者と道具を合成する能力。術者自身が道具の性能を引き出す事ができるが、使うほど道具に近づいていき、コントロールができなくなる。