これから
彼女と付き合いだしてから一週間。俺と彼女は始めこそぎこちない感じが端から見ても分かるくらい(初々しいともいうのか?)出ていたわけだが、今となってはそれも無くなった。完全にと言うわけでもないが、日常生活送る上では何の問題も無かった。あるとすれば、同級生の好奇な視線くらいだろうか。
偶々ならばともかく、一週間も一緒に教室に入るとなるとその手の話題に敏感な女子生徒達は彼女に多くの質問を浴びせ、興味津々とでも言わんばかりに彼女に詰め寄った。
彼女は彼女でそのような事態に困惑し、俺に助けを求めようとしたらしいが女子生徒という壁によって見ることが出来なかったそうだ。
男連中もやはり興味があるらしく、周囲の席に座っている何人かが話を聞こうと身をのりだしてきた。
その中には小学校時代からの友人であり親友と言っても差し支えない者もいた。
彼は興味と言うよりも意外というような視線を向けてきた。
因みに彼は妹に好意を持っているらしい。
らしいと言うのは本人から聞いた訳でなく、家に来る時毎度のように聞くのだ、妹は居ないのか?と。その様なことを聞かれると、彼が妹に対して好意を持っているか、嫌っているかのどちらしか無い。もっともそのどちらかだけと断言出来るものではないが、彼は極端な人間なのだ。彼が妹を嫌っている理由も特に見当たらないので、恐らく妹の事が好きなのだろうと勝手に思っている。
話が逸れた。
その意外という視線の意味ばかりは本人に聞いてみなければ分からないが、恐らく俺が何故彼女と付き合い出したのか?ではなく、何故彼女が俺を選んだのか?というものだろう。その疑問に答えてやりたいのは山々だが、生憎その答えを俺は持ち合わせていない。と言うか、俺自身が彼女に聞いてみたいものだ。
幾つかの質問に答えてやると満足したようで各自談笑したり授業の準備をしたりと好きなように動いていた。俺もそろそろ授業の準備をしなければ。
俺と彼女だけでなく、ここ周辺に住む多くの人達が通うこの高校。公立ではあるが学校行事が中々に多い。5月の球技大会を始めに、6月の陸上競技会、9月の体育祭、10月の文化祭等々メジャーなものから、クラス対抗皆勤賞を狙え、というほぼ永続的な無遅刻無欠席を争うというマイナーなものまである。因みに俺が彼女に告白された日、朝食を抜いてまで急いで学校に向かったのは、この行事の所為でもある。
今は5月。もうすぐ球技大会が始まるのだ。