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梅雨明けに主失うカラひとつ

作者: いわなです


 「関東地方が昨日、梅雨明けしたと見られると気象庁が発表しました」

 もうすぐ7月に差し掛かろうという頃、何気なく耳に入ったショーケースのテレビのニュース番組で梅雨明けを知った。

 そういえば、向かいの家の庭にある朝顔のツルが窓の下辺りまで伸びていたことを思い出した。あの庭では去年、大きな向日葵が青々とした葉を広げ咲いていたので、きっと美しい花を咲かせることだろう。


 そんなことを考えながら街を歩いて行くと、小さな公園で5、6人の子供たちが元気よく走り回っている。

 雨で遊べなかった時間を取り戻すかのように声を上げてはしゃぎ回る姿は、梅雨明けしたという実感を強く湧かせる。


 ふいに喉の乾きを覚えて、目の前のコンビニに入った。

 飲料水コーナーの前まで来ると、通路を挟んだ向こう側にアイスクリームコーナーを見つけた。

 コンビニでは年中アイスクリームが売られているが、やはりこの時期になると種類がさらに豊富になる。

 たまにはアイスもいいだろうと、水色の四角い袋を手に取った。


 外に出てみると、太陽の眩しさに少しくらっとした。


 冷たく爽やかな味が口へ喉へと染み渡る。アイスが美味しく感じることも、この時期ならではのことだ。

 当たり棒は出なかったが、そもそも出たこともなかったので特に気にするとこもなくゴミ箱に入れた。


 もうすぐ目的地に着くというところで、道の脇に植えてある紫陽花が目についた。

 今日は梅雨明けというのも納得の快晴だ。

 紫陽花の花はいまだ、濃い美しいピンク色を保っているものの、大きな葉の先は地面と垂直に垂れ、頼りなく風に揺れている。


 その時、カツンと小気味良い音が足元から聞こえた。

 視線を下げると、薄いクリーム色のカタツムリがカラの穴を上にして転がっていた。よそ見をしていたため、気が付かずに蹴飛ばしてしまったようだ。

 かわいそうなことをしたと思い、紫陽花の上に乗せてやろうとカラをつかむと嫌に軽い。

 不思議に思い、穴の中を覗いてみると、そこにカタツムリの姿はなかった。


 梅雨が明ければ夏が来る。

 夏になれば向日葵が咲き、朝顔が咲き、子供たちが外で遊ぶ機会も増えるだろう。

 だが、夏になれば紫陽花は枯れ、カタツムリも姿を消してしまう。


 うだるような暑さと日差しに物寂しさを感じながらも、カラをそっと紫陽花の根本に置いて、その場を後にした。




最後までお付き合いいただきありがとうございました。

俳句に小説を添えてみました第2弾ということで、前回同様とても短いお話でしたが、いかがでしたでしょうか。

私としては前回とは違い、5・7・5のリズムを崩さずに作った句なので、俳句としては受け入れやすいものだったのではないかと思います。


よろしければ、俳句または物語の感想や評価をいただければ参考にいたしますので、お願いいたします。

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