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 仲間。言われなくても、どこかでは分かっていたことなのかもしれなかった。

 シユは実際、驚きはしたがそこまで大きくではなかった。もっと別な方向への疑問が頭を過っていたためだ。元から確かに残る記憶から考え何故彼らのところへ行ったのかと、そして、きっとそれを踏まえ重要でもあった記憶を何故失くしてしまったのかと。代償だったとしても、現在の世界を渡っているという状況が無意味な行動に思えてしまうことが。


「だからね、嬉しかったのよ、大切だって言ってくれたことが」

「……」

「ちょっと悲しくもあるんだけどね」


 頭痛は治まっていた。騒いでいるような心は変わらず、だが、しっかりと胸に落ちてくるような話に逆に落ち着いているのだろうか。

 シユは彼らの顔を見渡し、下を向いて両手を見つめた。また一つ、自身に繋がることを見つけられた安堵の反面、さらにその先にあるものに対する焦燥感にも襲われる。


「シユ、焦るなよ。俺たちのことを考えて無理に記憶を取り戻す必要なんかねぇからな」

「クィディー、ですが……」

「それでお前が壊れたら元も子もねぇことを忘れるなよ?」


 先程の疑問の答えが出たような気がした。だから彼らのところへ行ったのかもしれないと。シユはそのことを受け入れ小さく返事をした。

 念のための最後の一押しをした、そのクィディーは聞く者が聞けば恐ろしく恐怖を感じるくらいの気迫だったが、シユはそれに気圧されたわけでもないように見えた。ただ忠告を聞き入れただけのような。


「聞き分けの良いガキは嫌いじゃねぇぜ」

「まーた言ってる……」


 クィディーは片側の口角を上げて満足そうに笑う。ウェイニーは呆れたようにソファに寄りかかり、向かいにいたレーヴェンも鼻で笑うように首を振った。


「ま、この前言ったことはそう思っててほしいってのもあったけど、結局本当のことでもあったってことよ」

「ありがとうございます、あの言葉は助けにもなりました」

「いいのよう! 本当、レーヴェンに持ってかれちゃったけど、今貴女といることが重要だからさ」


 気持ちを変えるために手を打ったウェイニーはシユの真っ直ぐすぎる感謝にあからさまに照れるが、一つ指を立ててシユを差すと真面目な顔つきになる。


「だからね、無理するようならあたし、貴女のこと引っ叩くから」

「そ、それは嫌ですね……」

「だったらゆっくりね、もうボッコボコにしちゃうんだから」

「お前にそれができるとは思えないけどな……」

「うるさいっ!」


 馬鹿にしたように目を逸らしたレーヴェンを黙らせるように両手をソファーに叩きつけたウェイニー。このやり取りが通常運転だと思わせるものがあった。

 実際、ウェイニーがそんなことをするとも思えないし、シユが無理をし苦しい思いをしながら記憶を取り戻そうとするのを防ぐための小さな脅し文句にも聞こえる。それを破ったとして、ウェイニーの言ったボコボコまでは行かなくともきつい一発はお見舞いされてしまいそうだとシユは思い、気づかれない程度の吹き出し笑いをしてしまう。


「さぁ、今日は随分疲れさせたしこの辺にしといてやれ」

「えー……シユ、もう聞きたいことない?」

「え、ええと……」

「無理に絞り出さなくてもいいからな……?」


 既に核心には触れてしまっている気がしているシユだが、これ以上踏み込むと本当に酷いことになるのではないか、と考えこむ。何より、今はもう繋がりが見えたというだけでも満足できているというもの。まだ見えない他のことを絞り出すことはできなかった。


「ごめんなさい、すぐには出てきません」

「そっかー、じゃあやっぱり帰ってゆっくりしてもらったほうがいいかしら」

「まぁ、今日はそれなりに詰め込んだからな……」


 名残惜しそうなウェイニーに真に受けなくてもいいと心配するようなレーヴェン、シユは曖昧に笑うことしかできず、少々申し訳なく思った。きっとまだ聞きたいことや話したいことはたくさんあるはずなのに、それが思い浮かばないもどかしさも。


「また次ってことね!」


 その名残惜しさを払拭するように、その手もあると立ち上がったウェイニーはコートを引っ掴んで袖を通した。それに倣い立ち上がったシユは部屋を出ようとしていたウェイニーの元まで行き、一度振り返る。


「今日はありがとうございました」

「ああ、何かあったらいつでも頼ってこい」

「気を付けてな」


 軽く手を上げながら一言ずつくれる二人に暖かい気持ちになりながら、シユは微笑んだ。


「帰り道でもそれなりに話はできるしね」

「必要以上に疲れさせるなよ」

「大丈夫だってぇ」


 分かっているのか分かっていないのか、ウェイニーは行ってくると部屋のドアを閉め、玄関へと移動する。やや上機嫌に見えるのはまた次の約束があるからか、それとも口煩い横槍が入らない帰り道への期待か。


「でもどうせ離れてたって装飾が繋がっていれば……──あー!」

「ど、どうしました?」


 無意識に発していたことだったのだろうか、ウェイニーは突然叫んだ。当然だと思っていたことへの見落としがあったように。

 これにはシユもとんでもなく驚いてしまい、呆気に取られて目を丸くするしかなかった。


「あ、あの、あれ、ちょ、一回戻ろう! ごめんなさい!」

「ウェ、ウェイニー!?」

「本当、ごめん! すぐ終わるから!」


 一体何があるというのか、急いで戻ろうとするウェイニーに腕を引かれながらシユはされるがまま一緒に走るしかなかった。

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