それは誰の夢か
それなりにありふれた話になると思いますが。
膨大な記録が記された書があった。
人の記録、言葉の記録、行動の記録、結果の記録……結末の記録
──死の記録。
それは一人の果てのない執念から生み出されたものだった。
暖かな色の街灯で照らされる雪の田舎町。
暖炉の火で暖められた、外とは比べ物にならないくらい快適な部屋。
そこで交わされた会話の数々。
送り出す人々の笑顔。
森の中に佇んだ怪しく大きな屋敷。
多くもなければ少なくもない仲間たち。
第二の家族同然に過ごし、騒がしく囲んだ食卓。
鍛錬を積み重ね身心共に成長した庭。
そこへ迫る狂気の手。
崩れ落ちた小さな町。
飛び交う閃光、舞い上がる砂ぼこり、そして血潮。
傾ぐ身体に伸ばした手は
──どこにも届かなかった。
訪れる崩壊。
それでも時間は無情に過ぎていく。
終わらない、果てのない旅。
幾度となく見てきた笑顔、涙。
何を言っても、どんな行動をしても。
その結末は
──死しかもたらさなかった。
見逃した小さな違和感。
それは一つを遺し、気づかぬうちに全てを奪い去る。
禁忌の行為だった。
分かっていながら、やめることはなかった。
ただ一つ、それだけのために。
手の届かないところへ救いを求めるしかないのなら。
求めなければならないのなら。
そうしてでも救ってみせる。
今度こそ、必ず。




