創像機 その2
「ん、こ、ここは……操縦席?」
正宗は気がつくと、椅子に座っていることを理解した。
左右にレバーがあり、足にもセンサーのようなものが固定されている。
「うぇ~なんなんすかここ……」
左から聞きなれた声聞こえ振り向くとそこには薙扨がいた。
同じように椅子に座ってはいたが薙扨の座っている席にはレバーなどはなく、椅子に固定されているだけである。
ただ、特徴として言えるのは……
「ってうわっ!? なんすかこのエロいスーツは!」
「はっ! おれもお決まりの男はエロくない普通のスーツを着ている!?」
それぞれの服装は普段のものとは違いパイロットスーツを身にまとっていた。
正宗のパイロットスーツは体にぴったりと合ったものだ。
ピッチリと体にひっついており、体全体を包んでいる。
スーツのほとんどの部分は紺色となっており、腕・足部分は紅色となっている。
薙扨のスーツはその色が反転したものである。
だが、正宗と同じように体にピッチリとひっついたスーツである。
その為に、薙扨の特徴である大きな胸が強調されている。
さらには太もも部分のみが肌を露出している。
「こ・れ・は・エロい!」
「は、鼻血を垂らしてるっす!? そんな正宗始めてみたっす!」
正宗は興奮して右穴から鼻血を垂らしてしまった。
正宗は今まで経験したことのない興奮を覚えた。
正宗は天に上る思いで天井を見つめた。
鼻血をたらさないために。
「だが今は鼻血を垂らしている場合ではない」
「はっ。その声は薺……うっ!?」
右から声が聞こえたので振り向くと、薙扨と同じようなスーツを着た薺がいた。
薙扨とは違いスラリとしたボディーと長く美しい金髪。
程よい大きさの胸が正宗に主張を示している。
それは正宗の鼻血を加速させるには十分だった。
「グッ、グッジョブ」
「ああっ! 正宗の鼻血が両穴から……」
「いいから、本当にそんな場合じゃない。前を見て」
「ま、前?」
薺に言われるがままに、正宗と薙扨は前を向く。
すると大きな画面には怪物が町を壊している映像が映し出された。
「あれはさっきの!?」
「町を壊してるっす!」
「とりあえず、あたしにも不可解な点がいくつもあるけど倒すのが先決」
目の前の惨状を見ると正宗の心に怒りの感情が湧きあがってくる。
すでにさっきまで感じていた恐怖感は正宗の心にはない。
ロボット、創像機に乗ったことにより吹き飛んでしまったのだろう。
「よ、よし。操縦方法は」
『音声認識により動く。手足の動きなどはレバーなどで可能だ』
「なるほ……誰だ!?」
聞きなれない少し曇った声が正宗に話しかけてくる。
正宗はあたりを見渡すが二人以外の姿はない。
『わたしはこの創像機の意思。と言ってもアドバイスなどを送る以外には何も出来んがな』
「すっごい言い声……おれと違って完璧な主人公ボイス……」
『それはどうも……と言ってる場合ではない。創像機を起動させろ。そして戦うんだ』
「それもそうだ……これはアニメや漫画じゃない。今も人が死んでるかもしれないんだ……」
正宗は目の前の画面を見つめる。
目の前では次々と建物が破壊されていなかった。
「? 移動はしているが建物を破壊してない?」
「コメディタッチなキャラが町の人を殺している残酷なシーンを想像してたっすけど……」
「しかし目の前の建物は破壊されている。なんだ、なんなんだよ……」
正宗と薙扨は困惑する。
少年少女から成長できていない二人はわけもわからない状況に整理をつけられない。
恐怖、怒り、困惑。
いくつかの感情が変わり変わりに心を占める。
「迷わないで! あれは敵。怪物なの!」
「! あ、ああ……建物を破壊しているんだし……敵、だな」
「と、突然叫ばれると驚いちゃうっすよ」
『とにかく倒してくれ。あれはイイものではない』
「そ、そりゃそうだ。よし、行くぞ!」
正宗が即されながら創像機を動かし始める。
創像機が動くたびに機体の中が揺れる。
「イダッ!?」
突如後ろから叫び声が聞こえる。
正宗達は動きを止めて後ろを振り向く。
「い、痛い……ここはどこ? わたしは村雨……」
「海東!? そういやいなかったな!」
「え、わたし忘れられてたの? て言うかみんな何その格好。エロいね」
村雨は鼻血を垂らしながらサムズアップをしている。
村雨の姿は依然変わりなく制服である。
かけていたメガネが少しずれている以外に違いはない。
「村雨だけそのまんまなのか?」
「彼は今回選ばれていない。だからそんなことは置いておいてあいつを倒す」
「そうだな。とりあえずあいつを……」
正宗は再び正面を向き創像機を動かし始める。
そして再び機体が揺れる。
「うわ、ちょ! わたしだけ固定とかされてないんですけど!?」
「おれの席でもつかんどけ!」
「それしかないですか~」
そして村雨は正宗の席をつかんだ。