創像機 その1
「……う……ここは? どこだ?」
気がついた正宗はあたりを見渡す。
よくわからない白い空間に倒れていたようだ。
「薙扨? 海東?」
キョロキョロと名前を呼びながらあたりを探す。
すると後ろに二人が倒れていた。
正宗はあわてて駆け寄る。
「二人とも大丈夫か!?」
「ふぇ、あ、だ、大丈夫っす……」
「わたしも……て言うかここは?」
三人は左右に首を振る。
だが何も見つからない。
「ここは創像の空間」
「「「うわっ!」」」
唐突に女性の声が聞こえる。
三人はついさっき同じ展開をしたことを思い出す。
そして声のした後ろを振り向くとそこには薺がいた。
「ちなみに唐突ではなく……」
「いや、今はそんな展開じゃないのではないかな?」
村雨は薺の言葉をさえぎる。
その瞬間、薺の顔は絶望に塗られていくように暗くなっていく。
村雨はその顔を見ると慌てふためく。
「わかってますよ! 薺さんがそこにずっといたことは!」
「……説明を始める」
(スルーされたぁー)
フォローに失敗した村雨は膝をつき落ち込む。
そんな村雨を無視して正宗、薙扨に薺は説明を始める。
「ここは創像の世界」
「それはさっきも聞いたっすね」
「……もう勝手にすればいいと思う」
((くっそ繊細やこの子))
頬を膨らませてそっぽを向く薺を見て二人は心の中でツッコんだ。
関西人としての血だろう。
後ろを振り向くと膝をついて後悔の念を呟き続ける村雨がいる。
正宗達はこの状態がものすごく嫌になってくる。
そもそも何がどうなってこうなっているのか。
「な、薺さん? き、気を取り直し手続きをどうぞ」
「……さんはいらない」
「えー、薺。続きをお願いします」
「喋り方が気に入らない」
「薺。教えてくれ」
「……わかった。言います」
目の前で行われているコントを見て薙扨は無性にイライラしていた。
なぜイライラするのかが分からないが、二人を睨んでいた。
「ここ創像の世界は選ばれし者が入ってこれる世界」
「選ばれし者が?」
「選ばれし者ですって!? クラスでずっと一人だったわたしにも目立つチャンスが!」
突如と膝をついて倒れていた村雨が薺に駆け寄る。
突然近づいてきた村雨に対して薺は見下したような顔をする。
「あなたは……今回は違う」
「今回は違う!?」
村雨は再び膝をつく。
薺はそれを無視する。
「ちなみに今回の選ばれし者はあなた」
「え? おれ?」
「さっきも見たっすねこの光景。天丼祭りっすか?」
薙扨がつっこむと薺は再び黙る。
薙扨はニヤニヤとその表情を楽しんでいる。
薺はため息をつくと話を続ける。
「とにもかくにもあなたは選ばれし者。あたしと一緒に戦ってもらいます」
「戦うってあの文房具の化け物と?」
「そう。あれはあたしの世界を滅ぼしたものと同じ」
「あ、あたしの世界?」
正宗が首をかしげると薺は手をぐっと握る。
そして話を続ける。
「それはともかく。あたしとともに契約者となり、創像機に乗って戦ってもらう」
「創像機。機ってことはロボット……」
「そう。と言うわけで早速現実に戻って戦ってもらう」
「そんな唐突な……」
「どうでもいいから早く。間に合わなくなってからでは遅いの」
そう言って正宗の手をつかむ。
そして再び光を発し始める。
「ちょいと! 何勝手に正宗の手を掴んでるっすか!」
そして薙扨も正宗の手をつかむ。
正宗は両手をそれぞれに握られた状態になりながら光に包まれていった。
「ん? あれ? わ、わたしを置いていかないで!」
村雨も光に包まれた。
そして白い空間から4人は消えた。