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出会い その7

「たぶんこの曲がり角を曲がったはず……」


近くにあった丁字路を見渡す。

すると左側に人影が見えた。

正宗は何も言わずにただ追いかける。

特に理由もないが、怪しいと感じた。

それだけの理由で追う。


「ま、正宗ー!」


後ろから薙扨が駆け足で追ってくる。

徐々に距離は狭まって行く。


「お、薙扨。追いついてきたか」

「いや、もう。正宗。いつものことっすけど。怪しい奴見つけて情報集めて先生に言う。だからクラスメイトから無視されるんすよ!」

「そんなおれに付き合ってくれる薙扨も同じ目にあってただろ!」

「ぼく達は小さいころからいつも一緒だったっすよ! そんな簡単に切れるもんじゃないっす!」


二人はそんな会話をしながら走り続けるがそんなこんなしているうちに怪しい人物の姿は見えなくなった。

正宗と薙扨は止まり、再びあたりを見渡す。


「ここまで来て……」

「でもなんすよ。事件とかに巻き込まれなくてよかったっすよ。正宗も中学校と違うんすからこういうことはもうやめるっすよ」


薙扨はとても嬉しそうに正宗の背中をたたく。

本当は肩を叩きたかったのだが届きそうもない。


「う~ん……あれ?」

「あ、村雨のことっすね?」


あたりを見渡す正宗を見て薙扨は即座に何を探しているのかを理解した。


「置いてきぼりっすよ。付き合い短いっすから」

「おれについて来られなかったんだな」

「人間、なれないと物事には即座についていけないっす」


腰に手を当て胸を張る薙扨。

それを見て正宗はにこやかにクスリと笑う。


「ぎゃあああぁああぁぁあぁぁあぁあああぁぁあぁぁぁぁあああぁぁ!!!」


すると突然叫び声があたりに広がる。

正宗達はハッとなり顔を合わせる。


「やっぱりさっきのやつが何かをしたんだ」

「だ、だから。声のした方に行くっすか? そ、それは……」


薙扨はその場で体を小刻みに震わせる。

あたふたと手を振っているが正宗は決意したような顔をしている。


「父さんは大勢に襲われてた霞おじさんを助けたって聞いた。そんな父さんの息子のおれが動かなくてなんなのかっ!」


そう言って正宗は叫び声が聞こえた方へと駆ける。

薙扨は驚き戸惑いながらも追いかける。


「別に子供が親の真似なんてしなくてもいいっすのに」


薙扨はそう呟いた。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


建物と建物の間。

公共団地の境目であり、多くの人がゴミを捨てる場所。

ここにはあまり人が来ることはない。


「ここから声が……がっ!?」


するとそこには一人の男と倒れている男がいた。


「なっ、あっ、ひっ……」


正宗はたじろぐ。

その顔は誰が見ても分かるほどに恐怖を感じていた。


「な、なにして……」


正宗は男に近寄ろうとする。

だがどんどんと遠くに行く。

たじろぐとは前進する心意気が失われること。

そして恐怖または痛みで引き下がるを言うのだ。

一度たじろぐと前に進むことなど簡単にできない。


(こ、怖い……人が死んで……)


すると男がこちらを向く。

そして正宗はその男を見て驚く。


「え、鉛筆? え、鉛筆で人を殺して?」


視界が少しあやふやになっている。

そんな正宗は男の手に血塗れた鉛筆が見えた。


「正宗……ひぃっ!」


追いついた薙扨の体は突如止まる。

そのせい手その場に尻もちをついてしまう。


「え、鉛筆が……鉛筆で……」

「て、手が鉛筆の化け物っす!!」

「えっ?」


正宗が目の前を向くと、薙扨の言うとおりだった。

目の前にいる男の手は鉛筆だった。

正宗は意味がわからなかった。


「こんな、こんな……わけがわかにないっ!」

「に、にに、逃げるっすよ!」


薙扨は立ち上がり正宗の手をつかむ。

正宗も顔を左右に振り、その場から逃げる。


「好奇心は……なんだったかっ!」

「好奇心は猫を殺すっすよ!」

「おれは自分に殺されるところだった!」


二人は駆ける。

追いつかれないように駆ける。

そしてどれだけおってきているか確認するために正宗は少し振り向く。


「あれ、追いかけてきてない?」

「なんすと?」


薙扨は駆けるのをやめて振り向く。

正宗も足を止め完全に振り向く。

そこには誰もいなかった。


「追ってこなかった?」

「た、助かったっすか?」

「おーい」


唖然としていると後ろから声が聞こえた。

するとそこには走って駆け寄ってくる村雨がいた。


「すごい汗だけど何かあったのかい?」

「いや、なにかあったじゃないんだ」

「なにかあったんすよ!!!」

「うおっ。もう少し静かに……ん?」


村雨が見ていた方角から突如として光の柱が現れる。

村雨の驚いた顔を見て振り向いた正宗と薙扨はそれを見て驚く。


「あ、あの場所って……」

「さっきの……」

「へ? さっきのって? てかあの光の柱は何!?」


そして光が大きく広がっていく。

そして光が消える。

するとそこには怪物が立っていた。


「て、手が鉛筆で……」

「か、体が筆箱の……」

「ばっ化け物だぁぁぁああぁあ!?」


村雨は慌てふためく。

正宗と薙扨は唖然として怪物を見ていた。


「……いよいよはじまった」

「「「へっ?」」」


突如として女性の声が聞こえる。

三人は声のした方にクルリと顔を向かせる。

するとそこには見覚えのある金髪の美少女がいた。


「「「藍さん!?」」」

「……名前は薺。よろしく」

「あ、どうも正宗です」

「薙扨っす」

「むら、ってそんなこと言ってる場合かなぁ!? 唐突に現れたことについていろいろ聞きたいけど、早く逃げないと」


自己紹介している雰囲気ではないことを村雨は思い出す。

早く逃げようと三人を急かす。


「唐突ではない。あれが見えたからここに来た。……それにもう逃げられない」

「いやいや、試してみないとわからないよ?」

「いえ……黒陽正宗。あなたはもう逃げられない」

「え? おれ?」


突然逃げられない宣言を受けた正宗は唖然とする。

薺はフッと笑いながら近づいてくる。


「あなたを見たときから確信していた……あなたこそ私のパートナー」

「え? どうしたの藍さん。ラノベの読みすぎかな?」

「薺と呼んで」

「いや、でも……て言うか今そんな状況……あれ? つまりこれは何? まさかおれは選ばれし者なの!?」


あわてふためいていると腰のポケットから光が漏れ始める。

正宗は気になってそれを取り出す。


「こ、これはさっきのキーホルダー……」

「あなたは選ばれていた」


薺はそういうと同じようなキーホルダーを取り出す。


「え? えっ?」


するとキーホルダーは光だしあたりを包む。

そして気がつくと正宗達がいた場所には誰もいなかった。

巨大な怪物がただその場に突っ立っている光景。

それだけが残っていた。

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