出会い その6
「なんか風が去って行ったような……あ、いや、ゴメンね二人とも」
失言をしたと思った村雨は二人がいる方向を向く。
「いや、本当に風のように……」
「去って行ったっすよ……」
正宗達は霞が去った方向を指さしながらただじっと見つめていた。
村雨は何も言えなかった。
「おや、あそこにいるのは例の女の子?」
「ああ、例の女の子だね。名字は藍さんだったっけな」
「女子の列2列目っすね」
「自己紹介は次のホームルームってことで今日はしてないからなぁ……それ以上の情報はないか」
そうしていると藍さんの姿は遠くへと消えていく。
「て言うか、見つけたからどうってこともないっすね」
「あとをつけていくなんてストーカーじゃないか」
「でもわたし達の家って方向同じだよね」
すると全員がシーンと黙ってうつむいてしまった。
「こういう、別に悪くもないのに湧きあがってくる罪悪感ってなんなんすかね」
「なんかストーカーしてる感に襲われるんだよなぁ……」
「わたしもわからなくはないですね、それ」
そう言いつつ二人は藍が向かった先へと歩き出す。
「にしても藍で二番目って一番目の名字は何なんだよ……」
「阿亞さんらしいよ」
「ああ……」
何とも言えない表情になって三人は歩き出す。
たわいのない話をしながら歩いて行く。
高校生らしい普通の帰り道だ。
だがそんな帰り道に……
「ん?」
「どうしたっすか?」
ポカンとした顔をしている正宗に首をかしげながら薙扨が問いかける。
「いや、なんか……」
「なにかあっのかい?」
「変な奴がいたんだ」
「変な奴?」
正宗が見ていた方向を二人は向くがそこにはもう誰もいない。
そもそもあまり人が通る道でもないので人の姿はない。
「家に帰る学生もいないよ?」
「今日は入学生と部活に来る生徒しか学校に来ないっすからね」
「部活ならまだ学校だろうし、入学生と言ってももう早々に帰ってるよ。わたし達は丈乃さんのお父さんと話してたから遅れたけどね」
「だからこそ変な奴が目に入ったんだよ」
そう言って正宗は見ていた方向に駆け出す。
それを見た二人は驚く。
「ちょっと、ちょっと! 変な奴を追いかけるなんて変なことに巻き込まれる前兆っすよ!」
「アニメや漫画じゃなくても変なやつは何かしようとしている可能性が高いんだから、追いかけるのはやめた方が!」
二人がそう言うが正宗は止まらない。
村雨は目をつぶり頭を押さえる。
「どうにもとまりそうないね。丈乃さん……ん?」
ふと隣を見るとすでに姿はない。
そして正宗が駆けて行った方向を見る。
「あっ!」
薙扨はすでに正宗を追いかけていた。
村雨は頭を再び押さえる。
「言葉より先に行動って。幼馴染っていいなぁ!」
村雨は自分に幼馴染がいないことを嘆きながらも二人を追いかけた。