出会い その4
体育館は他のクラスの生徒も集まり、ザワザワとしていた。
男女に二列で座っており、正宗達は名前順でも前列の方に座っていた。
薙扨はあたりを見渡すようにキョロキョロしている。
近くにいた正宗は近づき周りに聞こえないように話す。
「霞おじさんを探してるのか?」
「ん~まぁ……」
「どのみちここからじゃ見えないよ」
「そっすね……」
そして薙扨はキョロキョロするのをやめ前を向いた。
正宗も自分の位置に戻る。
すると前から村雨が話しかけてくる。
「お父さんが来てるの?」
「ああ、薙扨の父親の霞おじさん。いつも家にいなくてな」
「お父さん。あ、じゃあお……あ、いや、いいや……」
何かを言おうとした村雨は言うのをやめて前を向いた。
正宗は村雨が何を言おうとしてとどまったのかを理解した。
そして正宗は少し笑顔になりフッと笑った。
正宗の後ろのクラスメイトはそれを見て顔をしかめていた。
そうしているとチャイムが鳴り、舞台に校長先生が出てくる。
「おほん、えー……」
長ったらしい話が始まるが、生徒のほとんどが聴いていないだろう。
この学校は頭のいい生徒が来るような学校ではない。
特別進学クラスの生徒以外はきっとなんとなく聞いている程度だろう。
これはあくまでも正宗の考えでしかないのであまり深く考えないように。
そうこうしているうちに校長の話は終わっていた。
「つづいて、祝辞……」
が、続けて理事長や市長などからの祝辞を読み始めたためやっと終わるのかと思った生徒たちはため息をつく。
話が終らなく不満であった正宗は村雨の肩を軽く叩く。
すると村雨が頭を後ろに軽く振り向かせる。
「ダルイよな……」
「こういうときは頭で物語を考えればいいんだ……」
「妄想しろってことか?」
「いや、想像だよ……」
「想像?」
正宗は首をかしげる。
すると村雨はフッと軽く笑うと語りだす。
「想像ってのは人を豊かにするんだ……」
「豊かねぇ……」
「……以上で話を終わります」
「お? 終わったみたいだな」
話が終わったことが気が付き、村雨も再び前を向く。
すると校長先生や教頭先生などが舞台から降りて行く。
「以上で入学式を終わります」
入学式の終わりが宣言される。
すると多くの生徒たちがホッとした表情をとり解放感を覚える。
「あれ、生徒会長からの言葉とかは?」
「もうやったよ。あそこの男の人だよ」
「あれか……いたって普通の人だな」
「生徒会長に幻想を持つのはやめよう」
二人が会話していると周りの生徒たちが立ち上がる。
それに気がついた二人も一緒に立ちあがる。
「では、入学生の退場です」
その言葉が体育館に響くと、一組から退場を始める。
正宗は早く順番が来ないかと足を揺らす。
「あ、正宗。あそこに!」
薙扨が肩を叩き正宗を呼ぶ。
そして振り向き指をさしている方向を向く。
「ん? あ、霞おじさん!」
するとそこには薙扨の父親である丈乃霞の姿があった。