出会い その3
教室に着いた一行はあたりを見渡す。
クラスは生徒がワイワイと会話を楽しんでいた。
正宗達はクラスの黒板に張られていた座席表を確認した。
「わたしは一番前か……」
「おれはその後ろで……」
「ぼくはその隣っすね」
運のいいことに三人は近くの席のようだ。
とりあえず三人は自分の席に座る。
「いやぁ~こんな近くでよかったっすねぇ~」
「ホント、ホント。仲良くなったのに離れてたらいやだしねぇ」
「いや、ほんとよかったよ。わたし中学時代には友達ってあんまりいなくて」
「あ、そうなんすか? 実はぼくらもなんすよ~」
よく聞くと同情を買いそうな悲しい話であるが二人はにこやかに話す。
それは同じ思いをしたことがある人間だからこそ仲良くなれるものがあるのだろう。
「てかもうおれら友達じゃん」
「そうだね。痛い出会いだったけどね」
「ぼくにとっては心が痛くなる出会いだったっす」
「「「はははははは!!!」」」
三人は和気あいあいとしていた。
すると周りのクラスメイトがこちらに視線を向けてくる。
「あ、なんか笑いすぎたみたいっすね」
「にしては男子がちょいちょいこっちを向いてるだけのような……」
「はっ! そうか。この学校は男装女子好きの男子生徒が目指すことで有名……」
「その噂。マジだったのか……」
「あんま頭良くなくても来れるからって選んだぼくらとはえらい違う理由っすね」
確かに周りを確認してみると男子しかちらちらと見ていない。
確認しだすとその視線もなくなっていった。
「確かに男装少女っていうのはなんか燃えるものがあるよな」
「心の中がね……」
「この男どもは……」
薙扨は呆れはてていた。
「て言うか周りにもほかに女子がいるじゃないっすか。なんでぼくに集中するんすか?」
「とりわけ君が可愛いんだよ。君自分でその可愛さに気が付いてないの?」
「ぼくが可愛い?」
「どうも本人は気が付いてないようだね。相反するものが合わされば美しくなるということが」
村雨は薙扨の体をジロジロと見ながらそういう。
正宗は頭を押さえる。
「信じられないかもしれないけど少し前まではこんなに育ってなかったんだよ……」
「は? 何言ってるんだい? DかEはあるじゃないか」
「それは中学卒業まじかで育ったんだよ」
「……それは神秘だね」
村雨は薙扨を見て神秘の偉大さを感じたようだ。
薙扨はジロジロと見られているのにイラつきを覚えたのか村雨を睨む。
「ちょっと。何じろじろ見てるんっすか!」
「おおう……ごめん、ごめん。とにもかくにもこのクラスにキミ以上に可愛い子がいないってこ……ん?」
村雨が謝っていると突如クラスがざわつきだす。
「なんだ? 先生でも来たのか?」
「いや、どうやらわたしは先ほどの発言を返上しなきゃならないようだ」
「「へ?」」
ざわつくクラスメイトの視線の先をみるとそこに一人の女子生徒がいた。
「ほぉぉぉ」
「おおっす!」
腰まで届きそうな金髪。
昼間なのに輝き見える満月のようなその髪は多くの人間の心をつかむ。
綺麗な青い目。
それは水晶のように透き通っていて、多くの人の視線を集める。
「……」
そんな彼女は無言でクラス表を確認していた。
そして正宗たちの方に向かって歩いてくる。
「……席、隣のようです。よろしくです」
「お、おお」
透き通るその声。
その声は彼女の凛々しさを表現しているようだ。
多くの人の耳を奪うようだ。
そんなことを一同が思っていると彼女は静かに席に座る。
「が、外国人っすかね?」
「それにしては日本語がペラペラだね。きっとハーフだよ」
「そうだろうな」
ひそひそと聞こえないように三人は会話する。
その声は聞こえていなかったようで彼女は気にせずに本を読んでいる。
するとスピーカーから鐘の音の音が聞こえてくる。
無論本物の鐘が鳴って響いているわけではないが。
「お、チャイムだ」
「そろそろ入学式だね」
すると先生らしき人物が教室に入ってくる。
「はい、こんにちは。このクラスの担任のロック・ストーン・品利です」
先生が自己紹介をするとクラスがざわつく。
「ハ、ハーフ?」
「どう見ても見た目は完全な日本人男性だぞ」
「しかも小太り」
「そして眼鏡……」
「んでスポーツ刈り……完璧だな」
クラスの生徒からは様々な言葉が聞こえてくる。
どれもすべてロック先生の日本人らしさを物語るものばかりである。
「目が青色なところがイギリス人要素だ。ちなみに英語は得意じゃないのですまんな」
先生がクラス全員の疑問をはらうような答えをすると徐々に静かになっていく。
「コホン。えー九時二十分には体育館に移動してもらう」
そう言うと先生は黒板にその後の予定を掻いていく。
「体育館で入学式終了後に教室に戻り、教科書などの配布をする。以上。では」
ロック先生はちらりと時計を見ると扉へ向かって歩いて行く。
そして扉を開いた瞬間、クルリと振り向く。
「ちなみに先生はクォーターだ」
そう言うとロック先生は教室を後にしていった。
「最後のは言う必要あったのかな?」
「ユニークさを出そうと頑張ったんじゃないっすかね」
「と、とりあえず移動……しようか」
一同は席を立ちあがり移動の準備を始めた。