出会い その2
「ん~朝早くのんびりと歩いて行くってのは」
「すがすがしいっすね~」
二人はのんびりゆっくりと通学路を歩いていく。
周りには同じく学校へ向かう生徒が数人。
会社へ向かうサラリーマンなどが数人とちらほら人が見える程度である。
「にしてもこの道は人通りが少ないっすね」
「駅に続く道でもないからな。学校と駅は逆方向。人が少なくなるのも通りさ」
見渡すとわかるがサラリーマンたちは正宗たちとは逆方向に歩いている。
「昔から住んでるから気にしてなかったっすけど気にしてみるとわかるもんっすね」
「そうそう。馴染みすぎると気がつかないものも多いものさ」
他愛のないことを話しながら二人は学校へと向かい歩いていく。
そして十字路につく。
その時正宗は声を出す。
「あ」
「え?」
二人の人間が言葉を上げると頭に痛みが走る。
二人は即座に頭を押さえる。
「だ、大丈夫っすか!?」
慌てて薙扨が急ぎ近づく。
「いてて……それよりもぶつかった人は……」
「あ、いや、こっちこそすいません」
頭を押さえながら正宗は顔を上げる。
するとぶつかった相手も顔を上げる。
するとそこには同じ学校の制服を着た青年がいた。
「あれ、その制服……」
「その校章の色……」
二人はそれぞれの制服とその制服の胸ポケットに付いている校章の色を確認する。
「きみも私立自雄高等学校の新入生?」
「そういうきみも?」
二人は交互に互いを指さす。
が、すぐに頭を再び抑える。
「とりあえず痛い」
「ああ、痛い」
二人を見ていた薙扨はため息をついた。
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あれから二人は意気投合した。
自分の好きな物の話で盛り上がった。
二人で和気あいあいとしているため薙扨は空気になっていた。
薙扨は頬を膨らませ二人を睨んでいた。
「あ、や、なんか妹さん睨んでるけど……」
「薙扨は妹じゃないよ。て言うか同じ色の校章が見えないの?」
「へ? あ、お姉さん?」
「そもそも兄妹じゃないよ」
その言葉を聞くと青年は頭をかしげる。
「あ、まさか……」
「居候ってやつさ……10年前からな」
「あっ。ととと……」
その言葉を理解した青年は顔を抑える。
「両親が海外転勤してるだけのわたしとはえらい違いなわけだ」
「はは。他人のことなのにそんなにがっくりしてくれるなんてな」
「はは。他人の不幸を喜べる人間じゃないってだけだよ」
「それは珍しいよ……あ」
結局薙扨はこちらを睨んだままである。
深まったのは男二人の友情だけであり、薙扨の怒りも深まるばかりである。
「あ、が、学校が見えてきたよ」
「そ、そのようだな」
「なんなんすかこの扱い……」
薙扨の怒りは収まらぬまま学校に到着した。
「あ、あそこにクラス表が貼ってあるよ」
「お、早速見に行こう」
二人は早足でクラス表の所に駆けていく。
薙扨の怒りは深まるばかりである。
「何であって間もないのにぼくより息ぴったしなんすか!? 気に入らないっす!」
薙扨も後を追った。
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「黒陽、黒陽……」
「海東、海東……」
それぞれがクラス表を見ながら名前を探す。
そうこうしているうちに薙扨が二人に追い付き、自分の名前をクラス表から探す。
「あ、あったあった。丈乃薙扨。正宗もおんなじクラスっすよ」
「え? あ、ほんとだ。黒陽正宗って書いてる。五組かぁ」
薙扨にひかれて連れていた先で正宗は自分の名前を見つける。
一年五組。
それが一年間正宗が過ごしていくことになる。
「おや? 海東村雨の名前も五組だね。わたしも同じクラスだよ」
「お、そうなのか。て言うか村雨って名前なんだ」
「あ、じ、自己紹介してなかったっけ」
二人は互いの名前を教えずに盛り上がっていたことに今気がつく。
二人はあたふたしながら自己紹介を始める。
「わたしの名前は海東 村雨。よろしく」
「おれの名前は黒陽 正宗。」
「ちなみにぼくの名前は丈乃 薙扨っすよ」
三人はそれぞれ自己紹介が終わると握手をする。
薙扨も笑顔になり、正宗はホッとした表情になった。
「とりあえずクラスに行こうか」
「入学式までにクラスで友好を深めるんっすね。今度こそぼくもいっしょに」
「あはは。さっきはゴメンね」
申し訳なさそうにする村雨を見て薙扨も完全に落ち着いたようだ。
そして三人は一年五組へと向かった。