創像機 その3
怪物に創像機は近づいていく。
怪物はなにも破壊せずに移動している。
「近づいたとして……どう倒すんだ?」
『創像機の武器や特殊能力などは想像者によって決まる』
「想像者?」
『この機体の場合の想像者は女性二人となる』
正宗は左右に首を振る。
女性陣を見てウンウンと頷く。
「何をうなずいてるんすか……」
「頷いているところ申し訳ないけど話を続けてほしい。あたしもよく知らないから」
『うむ』
女性陣は無視して創像機の意思に話しかける。
創像機の意思は再び説明を始める。
『創像機は想像者が武器、外観を想像しなければ人型の鉄の塊でしかない』
「つまりはこの創像機のすべては僕らにゆだねられてるってことっすね?」
『そうだ。しかし……創像機に二人の想像者がいるとは……珍しいことだ』
「そういうもんすか?」
『ああ……』
薙扨の疑問に創像機の意思はすぐに返答をする。
そして一息つくと再び話に戻る。
『間もなく創像機は敵に追いつく。想像者が想像した武器を創造し使用できるのは創造者のみだ。うまく戦ってくれ』
「創造者か想像者と発音が違うから別モノってことだな」
「文字で見たらわかりやすそうっすがね」
「っと。いよいよ目の前まで来たぞ。こっちに見向きもしないぞ」
怪物は創像機がすぐ後ろにいるにもかかわらず無視して前に進んでいる。
正宗は少しイライラしながら怪物の肩をつかむ。
「ちょっととまれよ!」
「ズルナァ!」
しかし即座に肩から手が振り払われてしまう。
その衝撃で創像機が揺らぐ。
「うおぉぉ」
「ひゃん!」
「くっ!」
「うわちょ、固定されてないからわたしー!」
創像機内で叫び声が舞う。
なお一番被害が大きいのは村雨である。
「とぉっ! くそ、やってくれるぜ!」
「ただ手をはねのけただけなんすけどね」
そうこう言っていると目の前の怪物の動きが止まる。
そして怪物は腕、鉛筆を振りかぶる。
「ムカツゥ!」
そして目の前の建物を破壊する。
破壊された建物からは怪我をした人たちの音さが聞こえてくる。
「突然建物を破壊したっす!?」
「しかも建物の中の人は逃げてなかったのか!?」
「怪物は静かに移動していた上に何も破壊していなかった。気がつかない人や面白半分で見てる人がいてもおかしくはない」
「早く倒そうとしなかったおれ達も悪いんだっ!」
ドンと目の前の台を強くたたき嘆く正宗。
悔しさをあらわすように唇を噛む。
「倒してやるぞ! 二人とも何か武器を」
「武器っすか……じゃあ無難に剣を出すっす!」
薙扨が元気よく剣を出すと叫ぶと創像機の右手に剣が現れる。
すると正宗の右レバーが少し重くなる。
「お、剣が装備されたんだな。よし、やってやるぜ!」
正宗が勢いよくレバーを握り大声を叫ぶと剣は怪物に向かい振りかざされる。
「ズルナァ!」
怪物はその場に倒れる。
近くにあったビルが少し崩れる。
「ああっ。建物を傷つけてしまった!」
「人があまりいないからと言ってもこんな所で何も壊せず戦えるわけないっす!」
「注意して戦わないと……」
「その必要はないわ」
正宗が真剣に画面を見つめていると薺が話しかけてくる。
「薺さん?」
「さんはいらない。もうそろそろフィールドが張られるはずよ」
「フィールド?」
すると突然画面が突然青く光る。
正宗と薙扨は驚愕する。
村雨はメガネの上から目を隠す。
そして光が消えると画面から見える空間は薄く青いものとなっていた。