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出会い その1

暗い闇が辺りを包んでいる。

電柱の電灯も切れかけなのかつく、消えるを繰り返している。

あたりを見渡しても誰も通るそぶりのない。

そんな人気のない道。

ただそんな道の真ん中に二人の人間がいた。

一人は男。車の下敷きであり、もう一人も男。ニタニタと笑いながら車に下敷きになっている人を見ていた。

車の下敷きの男はニタニタと笑う男を睨んでいた。


「いやはや。こんな人気のないところに旅行とは君達も不用心だね」

「何者だ……お前は……」


下敷きの男の発言を聞いた男は見下したように微笑する。

下敷きの男は唇を噛みながら睨む。


「いやいや頑丈だね。君が生きてるってことは大丈夫ってことだね……ボクが失敗とはうっとおしいねぇ~」

「何を言って……」

「理解していない君に何を言っても無意味さ。理解しないからこそ禁忌を犯した」


男の言葉を聞いた下敷きの男は驚いた顔をする。


「貴様! 知っているのか!」

「知っている? ああ、君より知ってるよ。ボクは何でも覗けるからね」

「何を、何を言っている!」


下敷きの男は何を言っているのかわからないようだ。

何度も叫びながら男に問いかけるが男は何も答えない。

笑い続けるばかりである。


「知る必要はない。今君たちはここで死ぬ。親子仲よく死んでもらうよ」

「貴様! なぜこんなことを!」

「禁忌を犯した君達への罰……かな」


下敷きの男は驚愕した顔で男を見る。

男が車に手をにかけ、そして持ち上げる。


「何!?」

「さようなら。夫婦仲良くあの世に行きな」


そして車が落とされる。

その衝撃により車の中の人間。

そして下敷きになった人間の命は途絶える。


「ふふ。病気で家に残っている君の息子はボクがうまいこと誘導してあげるよ」


命を亡くした二人を見ながら男は笑う。

それは希望にあふれた子供のように無邪気だった。


「さようなら。黒陽鋼太」


そして男はその場から去った。

そして辺りは本当に静かになった。

ただ電灯の電気がつき、消えるを来るかえすだけであった。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


「ん……あ?」


あたりを見渡す。

そこは見知った自分の部屋だった。

目覚まし時計はまだセットした時間にもなっていない。

早朝五時を示している。


「なんで……」


再びあたりを見渡すと壁に掛けられた制服が目に入る。

思い出したように頭を掻く。

そして机のほうを向く。

そこには真新しい黒い鞄が置いてあった。


「入学式か……」


思い出したように呟く。

そして布団から起き上がる。

そして部屋に置かれている小型のテレビの電源を入れる。

すると朝のニュースが流れてくる。


『意……で……生……ており……』


テレビのニュースが流れ始めるが頭に入ってこない。

それでもボーっとテレビを見続ける。


『事……能……はない……ます』


見続けても頭に入ってこない。

だが今更ベットに戻って再び寝るわけにはいかない。

寝てしまったらきっと寝過してしまうだろうからだ。


『次の……です』


ハッと気がつくと時刻は六時になっていた。

正宗はテレビの電源を消す。

そして壁にかかっていた服をとり着替えを始める。

パジャマを脱ぎ畳んでベットに乗せる。

そしてワイシャツを着る。

そして青丹色のズボンを穿き、赤色のネクタイを締め、桔梗色のブレザーを着る。

最後に靴下をはくと壁にかかっていた鏡の前に立つ。


「うん」


服装の確認を終わると机の上の鞄を手に取る。

そして扉に手をかけて廊下に出る。

そして歩いてリビングに向かう。

するとリビングの近くにあるキッチンから音が聞こえる。


「薙扨。もう起きてたのか」

「あ、正宗も起きたっすか」


キッチンから返答が返ってくる。

その声は澄み切った鳥の鳴き声のような声だった。

その声を聞くと少し笑顔になり、正宗はテーブルの席に座り、鞄を椅子の横に置く。


「そういや霞おじさんは? 今日は見に来るって言ってたよな」

「今日は来れないかもしれないらしいっす。飛行機が遅れて……」

「冒険家ってのは世界中を飛び回ってるからな」


キッチンから聞こえる声は呆れ返っていることが分かる。

正宗もやれやれと言うような顔をして椅子を前後に傾ける。


「あ、床が傷つくからそれはやめてって言ってるじゃないっすか」

「あーっと。長年の癖ってのはそうそう直らないよ」

「まったく……世話がかかるっすねぇ」


そう言いつつ薙扨は料理をお盆に載せて運んでくる。

長方形の褐色のお盆から薙扨は料理を机に乗せる。

ホクホクとうまそうな肉じゃがに焼き鮭。

味噌汁に味付けのり、そしてご飯という和食だ。


「今日は和食か」

「正宗って和食が好きっすから。今日は記念すべき日なんすからね」

「入学式ってだけだが……まぁ、記念日になるんだろうな」

「入学式が記念日じゃなきゃなんなんすか……」


呆れ果てたようにしながら料理を置き終わった薙扨は席に座る。

席に座ろうとした時、背中の髪がふさっと跳ねる。

なめらかな黒髪が視線を奪う。

さらに左右の髪も揺れる。

彼女の髪形はツインテールにポニーテールが両方あるトリプルテールである。


「ん? なんすか?」

「いや、相変わらずきれいな黒髪だなってな」

「はいはい。毎回どうもっすよ」


いつものことだと言って薙扨は受け流す。

それを見て正宗はやれやれと手を広げて首を振る。

そして目の前の茶碗を手に取る。


「しっかし、その格好。似合ってるなぁ~」

「男女同じ服装っすからね。スボンで通学なんて初めてっすよ」


少しご飯を口に含めながら二人は会話をする。

薙扨の服装は正宗と同じである。

男女の差別をなくそうということで正宗たちの行く学校は男女同じ服装なのである。


「でも似合ってるよ」

「本当っすか?」

「まぁ、いつも男みたいな恰好をしてるけどな」

「むっ。なんすか。いつも同じだって言いたいっすか?」


正宗はムっとして睨んでいる渚をじろじろと見る。

ふくよかで大きなまるで牛のような胸がワイシャツを膨らませている。

さらにその大きさにそぐわない小さな背丈がさらにそれを引き立たせる。

さらにネクタイという要素が正宗をの興奮を誘う。


「いや……いつもより数倍かわいいぜ」

「まったく。今更そんなフォローをしても遅いっすよ。さ、ご飯を食べるっすよ」


正宗の発言を無視して薙扨は食事に入ろうとする。

正宗もフッと苦笑しながら席に座る。


「……でもうれしかったっす」

「え? なんだって?」

「な、なにもいってねぇっすよ!」


ぼそっと呟いた薙扨に対して正宗がツッこむと薙扨は慌てふためく。

正宗はクスクス笑いながら肉じゃがのじゃがいもを箸でつかみ口に入れる。

薙扨はギロっと正宗を睨むが、気にしているそぶりはない。


(聞こえてるのに聞こえてない振りをしてるって思われてるのかな? 正直あんなボソって言われたらラノベ見たいに文字やアニメ見たく聞こえるように言ってくれないとわからないよな。普通)


正宗は現実と非現実との違いを考えながら正宗は食事を続ける。

薙扨も睨むのをやめてもくもくとご飯を食べる。

さっきのことが恥ずかしかったのか会話がない。


「……」

「……」

「「あの」」

「「あっと……」」


こんな時に限り言葉は重なる。

こんな時にはよくあることだ。


「あーいやーなんすか?」

「いや、まぁ、食事もいいが、入学式もあるじゃん? 何時くらいに出るよ」

「あっ。あ、えと、八時くらいでいいんじゃないっすかね」


思い出したかのように慌てふため答える渚を見て正宗は驚く。


(こいつ……まさか忘れてたのか?)


正宗は呆れたように感じながら再び食事に戻る。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


食事が終わると、それぞれ食器をキッチンに持っていき、水につける。


「あーなんか時間ない感じや……」

「そういう時はこうやって水につけて布でふいて洗浄機に入れとけばいいんだよ。昔アニメでみた」


そう言って正宗はチャっチャと水につけた皿を布でふいて洗浄機に入れる。

薙扨は呆れたような顔になる。


「そんなアニメ知識で大丈夫なんすか?」

「大丈夫、大丈夫。さ、出発の準備をしよう」

「準備って言っても、そこにある鞄を持って靴を履けばいいだけなんすけどね」


薙扨が後ろを向くと椅子の横にある鞄が目に入る。


「まぁ、なんだ。気がつけば七時四十分だ。少し早く家を出て歩きでのんびり行こうか」

「入学式っすし、余裕を持って行くってのもいいっすねぇ~」


薙扨は同意して机に向って歩き出し鞄を手に取る。

正宗も歩き鞄を手に取る。


「んじゃ行こうか」

「っす」


そして二人は玄関に向かって歩いて行く。

玄関に着くと二人は靴棚から真新しい学校指定の革靴を取り出す。

そして正宗が靴を履き、薙扨が続いて靴を履く。


「ほんとに忘れ物ないか?」

「ちゃんと何度も確認したっすよ。それより正宗は大丈夫なんすか?」

「それほど持って行く者もないしな……うん、忘れ物はない」

「んじゃ、チャっチャと行くっすよ」

「いやいや、ゆっくり歩いて行くんだろ?」


そう言いながら二人は家を後にした。

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