かっこいいキャラクターを考えろ!
俺は滾っていた。漲っていた。迸っていた!
あ、ちなみに『たぎっていた』『みなぎっていた』『ほとばしっていた』って読むよ。
俺は燃えていた! ペンが、ペンが走る!
ノートに書き連ねられる言葉たち。彼らは命を吹き込まれ、踊り出す。
ノートの中に広がる世界。
そこでは銃が火を噴き、カウボーイ達が戦う。アメリカの西部劇の世界だった。
俺のお気に入りは主人公のライバル、ジャックだ。
彼は誇り高き戦士で、銃での戦いだが美学を持っていた。
ジャックのバトルは、エンターテインメントでなければならない!
あぁ、しかしペンが唐突に止まった。
うぅ、かっこいい敵キャラがもっと欲しい。
設定はいくらでもなんとでもなる。
でもキャラクターの名前が思いつかない。
そうだ、あいつに電話しよう!
携帯電話で我が友人に電話をかける。
「タクヤ! 助けてくれ! かっこいいキャラクターが思いつかないんだ!」
『……お前、今何時だと思ってるんだよ……夜4時だぞ4時。明日も学校だぞ?』
「そんな冷たい事を言うなよタクヤ! お前はいつも、俺が困っているときに助けてくれるじゃないか!」
『わーったわーった。これを答えたら、寝かせてくれるか?』
「ありがとう恩に着る! で、今考えてるのが西部劇の敵キャラの名前でさ」
『ちょっと待て、お前この前SF書いてなかったか?』
「え? あれは飽きたからノート捨てた」
『そ、そうか』
ぶっちゃけ面倒になった。
まぁ、今はそんなことはどうでもいい。今は西部劇だ西部劇!
『うーん、それはキャラクター名がなきゃいけないのか?』
「と、言うと?」
『例えば、二つ名だけが分かってる謎のキャラクターとか』
「おぉ! それっぽい!」
でも、俺に二つ名で良いのを考えられるのだろうか。
俺が悩んでいると、タクヤはそれを察してくれた。
『お前の事だからそう悩むと思ったよ。良いのを授けてやろう』
「おぉ! 助かる!」
『メキシコ・サラマンダーってのはどうだ? 西部劇だから、メキシコ出身がいてもおかしくはないんじゃないか?』
「そうなのか? その時期にメキシコに人がいたっけ?」
『そこはフィクションだから、適当でいいんだよ』
「そ、そうか」
でも、メキシコ・サラマンダーか。何かかっこいいな。
「ありがとう! 採用させてもらうよ!」
『あぁ、もう寝ていいか?』
「悪かったな! じゃあな!」
俺は携帯をブチッと切ると、再びノートにペンを走らせた。
行ける、行けるぞ! メキシコ・サラマンダー! この名前は、俺の作品の中で命を宿した!
それから3年後。
俺はメキシコサラマンダーが和訳でウーパールーパーだという事を知った。
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