プロローグ あるあるな追放
「レン、こっちこい」
そう俺を呼んだのは勇者アレンだった。妙に真剣な顔でいつもの笑顔はない。
宿屋の一室。集まっているのは、俺たち勇者パーティの全員。
「みんな集まってどうしたの?」
俺はできるだけ明るく聞いた。
アレンは言った。
「いい報告と悪い報告がある。どっちから聞きたい?」
それは多分俺に聞いているのだろう。
「じゃあ、いい報告から……」
「いい報告とは……この度俺たち勇者パーティーは正式に『国際パーティー』に選ばれた」
国際パーティ――それは、各国が認めた精鋭中の精鋭。選ばれれば、国の支援が受けられる。魔王討伐の最有力候補だ。
「え! 本当に!」
そうはしゃいでいるのは魔法使いのセレナ。口は悪いが魔法の腕は確か。アレンのお気に入りだ。
「良かったですね。これからも頑張りましょう。この三人で」
リリアは落ち着いた声で言った。このパーティーの僧侶でヒーラー兼バッファーである。
「それで、悪い報告というのは?」
俺がそう聞くと、アレンはようやく俺の方を向いた。アレンの顔には不適な笑みがあった。
「残念ながらパーティーメンバーが一人減ってしまうことだ。なぁ、レン」
「え? 何言って……」
アレン、セレナ、リリアの顔は先程のように明るくはなかった。視線は冷たく、まるでゴミを見ているような目をしていた。
戸惑う俺を見てセレナが声を上げた。
「レン、まだ分からないわけ? 追放だよ、つ・い・ほ・う。わかる?」
え……俺が追放……? 国際パーティーに選ばれたのにか?
「戸惑っても仕方ないわよ」
リリアは俺の味方なのか……? という疑問は一瞬にして過ぎ去った。
「だって、自分の無能さにも気づいてないんだもん。そりゃ戸惑うでしょ」
「確かに。まぁ、そんなところだから、早く出てってちょうだい」
「なんで追放なんだよ! アレンもなんか言ってよ。ねぇ!」
俺は必死に食い下がる。
「これだから無能は。お前、何出来んだよ」
アレンは俺を物理的にも精神的にも強く突き飛ばした。
「何ができるって……一緒に戦ってくれる仲間を召喚できる」
「一緒に戦ってくれる仲間だァ? そう思ってるのはお前だけだなぁ。あの小さな狐なのか猫なのかよく分からない生物がモンスターを倒したところなんて一度も見た事ねぇぞ?」
「狐だ。それと、倒せないかもしれないけどアシストだって、野営だってできる」
「俺は忘れてねぇからな? あの狐が野営の時、アイツがうっかり寝てオーク集団に襲われた夜をなぁ」
「でも、あれは……」
そう言いかけた時、アレンの短剣が俺の頬を掠めた。
「ああ言えばこう言うで、うるせぇんだよ。無能に食わせるモンはねぇし、戦利品が減るのも勘弁なんだわ。とにかくお前は追放だ。明日から来なくていいし、俺らの前に姿を表すな。不快だ。そーゆーことだから、今までお疲れさん」
俺は何も言い返すことができずその場をあとにした。
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