婚約者の偽物が現れたらしい。憂慮すべき事だが、それよりも隣席令嬢の「突然大量の魔獣が湧き出てきた時の対応フローチャート」が気になって仕方がない(半ギレ)。
『読者様の好きなお話書いてあげるよ!』企画で下記のリクエストを頂き執筆
〇 pochiko さま
通りすがりの公爵令嬢が学園内のトラブルを解決するお話。口癖が「だいたい分かりましたわ」「通りすがりの公爵令嬢ですわ。覚えておきなさい」
〇 柘榴 さま
『婚約者が新入生をいびっているらしい。憂慮すべき事だが、それよりも隣席令嬢の「テロリストを華麗に撃退するフローチャート」が気になって仕方ない(半ギレ)』の続編が読みたいです。
前のお話は知らなくても全然大丈夫です。
でも一応、あとがきの後に転移魔法陣貼っておきます。
僕の名前はユーリ・サンドハデス。
王立学園高等部の二年生で、公爵家の三男だ。将来は騎士団に入り、民を様々な危険から守る存在になりたいと思っている。
そんな僕には現在悩みがある。最近、婚約者のレイラの偽物が現れているらしい。
真偽のほどは不明だが、聞いたところによると、謎の令嬢が学園内のトラブルを次々に解決しているという。しかし、助けられた人たちは、なぜか令嬢の顔を思い出せないらしい。
顔を思い出せないのは、そういう認識阻害の魔道具で説明がつく。
しかしそれは、王族くらいしか持っていない国宝クラスのものだ。
それで、彼女の正体は公爵家次男の僕の婚約者で、王族でもあるレイラではないかと噂になっている。
ちなみに口癖は『だいたい分かりましたわ』『通りすがりの公爵令嬢ですわ。覚えておきなさい』とのこと。うん、これもレイラがいいそうなセリフだ。
しかし、レイラは知らないというし、アリバイもある。
素性を隠して人助けをしている目的は不明。現状困っている人はいないが、婚約者の偽物らしき謎のムーブをする人物の出現というのは、憂慮すべき事態だ。
また、別の問題もある。
先日、この学園が武装したテロリストに襲われた際、強力な魔力に目覚めた5人の乙女たち。
『華麗なる星乙女』と呼ばれるようになった彼女達の今後の処遇について国の上層部で意見が分かれていた時、僕は婚約者かつ事件の功労者として彼女達が今まで通り学生生活を送れるように意見書を提出した。
それが受理された際、急に大きな武力を持った彼女達が暴走しないように、国の上層部よりお目付け役を命じられたのだ。
だから僕には今、考えないといけないことが多い。
だと言うのに。
「ねぇ、魔獣が校内へ侵入するのを塞ぐバリケードを作るとき、机やいすを縛って固めるじゃない。その時に、一般学生におススメのひもや縛り方って何かしら?」
毎日のように隣の席の令嬢が見せてくる『突然大量の魔獣が湧き出てきた時の対応フローチャート』が気になって仕方がない(半ギレ)。
きっかけは偶然だった。
過日、彼女がノートに書いていた『テロリストを華麗に撃退するフローチャート』を偶然目にし、黒歴史を覗いてしまった罪滅ぼしにその作成を手伝っていたら本当にテロリストが来襲。
その最中「あ、これフローチャートでやったところだ」と華麗に撃退した結果、彼女は味をしめてしまったらしく、今度は新しく『突然大量の魔獣が湧き出てきた時の対応フローチャート』を僕に見せてくるようになった。
思わず「女性にもこの道を通る奴がいたんだな……」と小声で呟いてしまい、クラスメイトに怪訝な顔をされたが、仕方無いだろう。
ちなみにこの道、男なら300%通る。
学校を襲う魔獣の群れを撃退するのは、全世界の男子学生が10代前半に、少なくとも5回以上は妄想するシチュエーションだ。だって楽しいもん。
突如現れ、退屈で平穏な日常を恐怖のズンドコに叩き落す魔獣達。
奴らは学園東の森から猛スピードでやってくる。大群の進撃に上がる土煙、悲鳴を上げる生徒達。
そこで僕が機転をきかせて魔獣達に華麗に対応。沸き起こる賞賛。凄い、ユーリ様かっこいい、いやぁそんな事はないさフフフ……(黒歴史)。
もちろん、現実は妄想のようにはいかないものだ。
まず、そんな魔獣達は存在しない。何せ魔獣の元になる魔力だまりが発生していないか定期的に見回りが行われるし、弱い魔獣が一、二匹学園に迷い込んだところで、その日のうちに学園の警備兵が征伐するだろう。魔獣に人権はない、その場ですぐに切り捨て御免だ。
そして、人が救われるためにはまず人が危機に瀕する必要がある。守るべき一般人の危機を願うって、騎士的にどうなのよ。
そうやって段々と常識や良識を身につけるにつれ、そんな幼稚な妄想はしなくなっていく。
もし今代わりに妄想するとすれば、突如復活した邪竜が演習中の騎士科を強襲。現場が混乱する中、僕は華麗に対処、大活躍。「コ、こんなニンゲン2000年前にもいなかったゾ」、「ユーリくんは優秀と思っていたが、まさかここまでとは」、いやぁ、そんな事はありませんよ騎士団長フフフ……。
はっ。
違う違う、そうじゃない。
今僕が困っているのは、隣の男爵令嬢のノートが気になり必要な考えに集中できない事だ。
彼女の名前はアン・エッジロード。
テロリストが来襲してくるまでは「大人しく殆ど喋らない、分厚いレンズ眼鏡の女の子」という認識で、新学年で隣の席になった時も、「どんな授業でも熱心にノートをとっている真面目な子だなぁ」と思ったことがある程度。
でも先日の事があり話すようになってから『突然大量の魔獣が湧き出てきた時の対応』やら、『魔族の封印が解けそうになった時の対処』やら、『邪神の攻撃方法の考察』と言った内容を書いたノートを毎日僕に見せてくるようになった。
よくまあ毎回違うテーマでそんな面白そうな……もとい、不毛なことばかり書くものだと逆に感心する。
はっ。
違う違う、そうじゃない。
僕は今、婚約者の偽物が現れている件について考えないといけないんだって!しかも今、授業中だし。
あーでもノートに書いてる内容が気になるぅ。
「あ、その場合だと細くて長いひもの方がいいと思うよ。太いと結びにくいし、細いものをいろんな角度から巻いた方が素早く強度を上げられるんだ。縛り方は固結びで良いと思う。そもそも、協力をお願いする一般生徒が何種類もの専門的な結び方を覚えていないだろうし。」
はっ、僕は授業中に何を呟いているんだ。
幸い、クラスの皆にはきかれなかったみたいだけど、アン嬢にはバッチリきかれていたらしい。
なんでわかるかって?
成程なって顔した彼女と目が合っちゃったからだよ。
いや、ごめん。いまのなし、たまたまです。
もう二度と言わないから忘れて。
なかったことにしよう。
と思っていたのに、放課後アン嬢に呼び止められた。
「バリケードを作った後はどうすればいいと思う」
「近接戦は絶対だめだ。5人の星乙女の誰かの協力を仰いで、遠方から魔法で遠巻きに、魔獣ごとの弱点部分を攻めるのがベストだろうね。ほら、騎士教本のこのページに魔獣ごとの弱点部分が載っているんだ。」
「なるほど……おっと、もうこんな時間ね。ありがとう、助かったわ。」
今日も黒歴史フローチャート作成にアドバイスを求められて答えているうちにすっかり遅くなってしまった。でも、その甲斐あって、微笑む彼女に胸がトゥンク……って違う違う!
僕には婚約者がいるんだよ!
「あ、ごめん最後に一つだけ。よく考えると初手のバリケード完成までの時間予測が短すぎない?いい代案が思いつかない中でケチをつけるようで悪いんだけど、他の生徒たちが迅速にバリケードを作りを手伝ってくれるって前提だと、見通しが少し甘い気がするんだよね。」
「ああ、そこは……ほら、きっとなんやかんや上手くいくわよ」
彼女の返答に、ちょっぴりガッカリしてしまう自分がいた。彼女のフローチャート、想定されている状況は破天荒すぎるんだけど、書かれている内容自体は、とてもきめ細かく現実的ってギャップが一番の魅力なのに。
正直、前回のテロリストを華麗に撃退するフローチャートなんて、騎士団の野営時奇襲対応マニュアルくらい出来がよかったのにさ。
それに感心して、ついついこちらも熱心に質問に答えてしまう日々が続いていたんだけど……でも、あくまで趣味だし、ちょっと詰めが甘いだけの部分にケチつけるのもなぁ、でも画竜点睛を欠くと言うか、うーん……
「ありがとう。聞いて良かった。あ、これ淑女科の選択授業でクッキー焼いたのよ、よかったらいつものお礼にどうぞ。」
そう言って可愛らしくラッピングされた袋を手渡してくる彼女に、少しドキッとした。
普段そっけない子が自分だけに見せる女の子っぽい部分っていいよね。いや、いけないいけない、お互い恋愛感情はないけど、僕には婚約者がいるんだよ。他の相手にドキがムネムネするわけにはいかない。
「ところで貴方、本当に前世の記憶とか異世界で生きていた頃の記憶ってないのよね?なんだかこの手のフローチャートへの造詣がとても深いと感じるのだけれど」
はい、今のセリフで完全に煩悩退散。
なのにおかしいな、逆に心臓がバクバク鳴っている。鎮まれ僕の黒歴史ウゴゴ……。
「き、君はあるんだったかな、前世の記憶」
「……まあね、でも信じられないでしょうね」
い、痛ーい!
やめておけアン嬢、そのセリフは僕にも効く。
「前にも言ったけど、こういう遊び以外にも、もっと他のクラスメイト達とも交流を持って色々と遊んでみたらどうだい?きっとそれも楽しいよ」
「……いつまで同じ時を過ごせるか分からないし、別れの時が来てしまった時に辛いから」
フッと寂しそうな顔でアン嬢が言う。ダメだ、今の彼女に僕の言葉は届きそうにはない。
願わくば彼女が、ぴちぴちのロングパンツや、革のベルトとシルバーの沢山ついた上着や、逆三角形にホルス目の入ったでっかいネックレスを着けて学校に来る事がありません様に。
やるなら必ず一度、先に家族の前でやるんだ。約束だよ。過日の僕の様に、父親の爆笑と母親の叱責でマインドクラッシュされませんように。(白目)
◇
昼休み、中庭を歩いていると東の森から大量の鳥がバサバサ飛び立つのが見えた。
「うわ、すごいな、いったいどうしたんだ」
周りの生徒達も、なんだなんだと騒いでいる。
何か不吉なことの前触れでなければいいんだが。
とそこで思い至る。これ、魔獣が大量発生した時に想定される前兆じゃないか?魔力だまりがないことは定期的に確認されているが、逆にいえばチェックを怠っていたり、人為的に魔力だまりを作る悪人がいれば起こり得る状況なわけで。
「なるほど、大体わかりましたわ!」
そんな中、大声が聞こえた。
「あ、貴女はまさか……」
「通りすがりの公爵令嬢ですわ!」
「きた!公爵令嬢きた!」
「これで解決する!」
レイラの偽物、謎の公爵令嬢だった。
周囲の生徒たちから喝采の声が上がる。
というか、アン嬢だこれ……
魔道具のせいで顔は識別できないけど、声でわかった。
どうしてこうなった。
「大量の鳥がバサバサ飛び立ったのは、森に魔獣が大量発生したからですわ!今にこの学園を大群で襲ってきますので、皆様、バリケードを作るのを手伝ってくださいませ!」
いやいやアン嬢。突然そんなこと言っても、だれも信じては……
「それは大変だ!早速取り掛かります」
「皆ー!バリケード作りを手伝ってくれー!!」
ってみんなめちゃくちゃ信じとるー!?
この学校の情報リテラシーはどうなって……ああ、いままで学園の問題を解決しまくってきた公爵令嬢の言うことだから信じているのか。
「皆様、机やいすを持ってきて、ここにある紐でぐるぐる巻いて一塊にして下さいませ。縛り方は固結びで大丈夫ですわ。」
「みんな聞いたな、手分けしてやるぞ!」
「「「「おー!!!!!」」」
そして思い至る。
学園内のトラブルを解決しまくる謎の令嬢。
口癖は『だいたい分かりましたわ』『通りすがりの公爵令嬢ですわ。覚えておきなさい』。
政治的に何かを達成できるわけでは無いけれど、謎の令嬢として積み重ねた信頼残高のお陰でこう言う時、突拍子もないことでもみんなが迅速に協力してくれるわけだ。
――初手で他の生徒たちが迅速にバリケードを作るのを手伝ってくれるって見通しが少し甘い気がするんだよね。
――ああ、そこは……ほらきっと、なんやかんや上手くいくわよ
なんて準備の良さ&手際の良さ。
偶然にしては出来過ぎている。なら、バリケードができる頃にはきっと本当に、魔獣の大軍勢が向かってくるのだろう。騎士としてこの場で迎撃抵抗するか?いや、無理だ。こちらは丸腰で、相手は硬い外皮に鋭い爪や牙もある魔獣。戦っても、あっと言う間に殺される。
しかし八方ふさがりというわけではない。
僕は通りすがりの公爵令嬢に向かって叫んだ。
「この場に呼ぶ星乙女は、メイがベストだよな!」
僕の言葉に周囲の人達がざわめく。
アンもハッとした顔をしているのが分かった。
「ユーリ様、その通りよ!お願いするわ。もしも教室にいないときは」
「高確率でアルムのもみの木の所だろ!ほかの星乙女を呼ぶのも任せてくれ!」
マンツーマンの個別指導を受けたから、突然大量の魔獣が湧き出てきた時の対策もばっちりさ。
◇
学校が突然湧き出た魔獣の大群に襲われるという大事件は、奇跡的に誰も犠牲者を出す事なく収束した。
理由は3つ。
僕が呼んだ『華麗なる星乙女』たちが魔獣来襲前にベストな配置につけたこと。
その5人が、テロリスト来襲時よりもさらに強くなった魔力で魔獣達の弱点を狙い撃った事。
そして、実は魔獣来襲以前に一人の謎の公爵令嬢……というかぶっちゃけアンの号令の下、一般生徒たちが団結してバリケードを作成していたことだ。
当然、僕や星乙女達は方々から大変褒められたが、一番の功労者はアンだと思う。
ただ、本人は「自分はその時パニックで逃げ回っていた」「謎の公爵令嬢なんて知らない」とくり返すばかりだ。
追求したいが、そうすると身分を偽って活動していた罪で英雄を処罰しないといけなくなる。
それでクラスのみんなも「謎の公爵令嬢の正体って……」とうすうす気づきつつも、偉い人には内緒だよ連撃で深入りを避けている。
なにはともあれ、これで一件落着……。
とは、全然いかなかった。
まず、今回の戦いを通して星乙女たちの人間関係が変化したのだが、それが少々こじれている。レイラとソラの仲は良好になったのだが、もともとレイラに憧れていたメイがソラに嫉妬していて、それはそれとしてロゼッタとソフィは……ってな具合に。
そして、より強くなった彼女達がそんな状況なもので、今後の処遇について国の上層部で再び意見が分かれているらしい。僕にはお目付け役として王宮に意見を提出するようにお達しがきた。
個人的には、5人の仲をとりもちたいし、彼女達には今まで通り平穏な学生生活を送って貰いたいと思う。
魔獣が大量発生した原因調査への参加依頼もあり、考えないといけない事が増えた。
だと言うのに。
「ねぇ、もしも古の魔族が復活して学園を空から襲撃してくるとしたら、対空魔道ランチャーを真っ先に設置するべき場所はここかしら?」
毎日のように隣の席の令嬢が見せてくる「突然魔族が復活して学園を強襲してきた時の迎撃フローチャート」が気になって仕方がない(半ギレ)。
ちなみに、彼女に未来予知の魔力なんてものは無い。入学時のテストで魔力素養がほぼゼロだったのも確認している。
テロリストに襲われた時のフローチャートだって、今回のフローチャートだって、たまたま役に立っただけだ。
……だけだよね?
「場所はそこでいいんじゃないかな。でも、魔族は機動力が高いらしいからそのタイプだと当たらないかもね。知性と機動力が高い一方で、耐久性はそこまで高くないらしいから、威力よりも追尾性や範囲が高い方がいいと思うんだけど」
「なるほど、流石ね」
しかし、ついつい毎回真剣に相手をしてしまっている。
だって仕方ないじゃないか、結果的にとはいえ2回も学園を助けて貰った恩があるのだから。
決して、一緒にフローチャートを考えるのが楽しかったり、時折彼女が僕にだけ見せるようになった気安さに胸がトゥンクしたりとか、そんな理由ではない。
確かに、先日アンにレイラ達の事を話すと、形の良い眉尻を少し下げて「まあ、でもきっとなるようになるから、余りレイラ様のことは気にしなくても……」とか「きっと人間、運命の相手っているのよ」と言われた時はちょっとドキドキする事があったけど。
なになに?!
その言葉にはどんな意味がこめられてるの!?
恋愛フローチャート作成が必要ですかー!?
なんてその日は悶々と部屋をグルグル回っていたが、それはきっとお互いに吊り橋効果がかかっていたのだろうという結論に達した。
流石に、もう助けられる事態がおこる事はないし、きっとドキドキは一時的なものだ。そもそも僕は胸部装甲の厚い娘がタイプ。アン嬢は、眼鏡のレンズは分厚いけれど体格はスレンダー系だしね。
こんな感じで、僕とアンのちょっと変わった関係は続いている。
◇
〜アン・エッジロード視点〜
ふう、とりあえず『魔獣来襲イベント』でも誰も死者を出さずにすんで良かった。
部屋で一人、胸にきつく巻いたさらしを外す。いざという時、俊敏に動きつつ身体を守れるように普段から装着して慣らすようにしているのだ。
拘束が外れた胸は前世と違い中々のサイズ。
そう、私は一年ほど前に前世の記憶を引き継いだ転生者である。
そして私は、この世界が前世よく遊んでいた、『学園モノ百合乙女ゲーム 戦場のガールズラブ』に似通っていることに気づいている。
国名が同じだったし、同級生にメインヒロインのレイラがいたし、彼女の婚約者はユーリ・サンドハデスだったし。
『戦場のガールズラブ』はR18指定で中々ハードボイルドな世界観だ。具体的には色んな敵が学校を襲ってきてモブ達がバンバン亡くなる。
それで、婚約者を亡くして心の傷を負ったヒロインを慰めたり、戦いの中で絆を深めたりして、性別に囚われない真実の愛に気づいていくって話なんだけど……モブとして転生した私は魔獣来襲イベントではモブ生徒たちに協力してもらいバリケードを作らないと、人が大量に死ぬ可能性が高い事に気づいた。
それで魔獣が襲ってくる前から準備を整える必要があり、動き始めたのだった。
正体を隠して活動する際には早期に発見していた『路地裏のオババ店』で事前に入手していた認識阻害系のアイテムが役にたった、ちなみにオババことドナさんは、昔不吉な予言をしたという冤罪で国外追放された大魔導士である。
ゲームテキストの情報は曖昧だったのでフローチャートの作成も大変だったが、生徒たちの協力、特にユーリが良く動いてくれたおかげで、今回も無事生き残ることができた。
しかし正直ギリギリだった。そして今後、襲ってくる敵はどんどん強くなっていくときたもんだ。
なんだよ、魔獣の次は、魔族に、邪竜に邪神って。学園は防衛軍じゃないんだぞ。
ということで私達モブが生き残るためには、より綿密な対策が必要となる。
畜生、侵略者どもめ、私のかんしゃく玉を受けてみろ。EDF!
でも正直、一人だと作成するフローチャートの精度に限界を感じているので、騎士科を履修しているユーリが協力してくれているのは実にありがたい。
ただ、原作通りの展開なら、うまく立ち回らないと次のイベントで星乙女の一人、ソフィが死んじゃうんだよな。彼女にも生き残って欲しいし、いるといないでその後の難易度が激変するはずだ。生存ルートに入れるためには、まず彼女のシスコン兄貴をなんとかする必要があるんだけど……
いや、本当に死なないで欲しい。
いつ誰が死ぬかわからない世界観だから、それで心が壊れない様にクラスメイト達とは距離を置いていたが、ユーリと5人の星乙女たちには多少なりとも情が湧いてしまっている。
「そうだ、ユーリには明日このフローチャートを見てもらおう。どんなリアクションをするかな、フフッ」
恩があるから仕方なくというスタンスの癖に、毎回私よりも熱心に、ワクワクした顔でフローチャートを覗き込むユーリを想像すると笑ってしまった。
んもう、真面目に考えないといけないのに。
こうして私とユーリのちょっと変わった関係はまだまだ続いていくのだった。
最後の敵を倒した後、さらしの取れた私の胸を見て鼻の下を伸ばしたユーリが、レイラに横面をひっぱたかれるのはもう少し先の話。
「読者さまに感謝を伝えるフローチャートをつくろうと思うの。読んでくれるだけでも嬉しいし、ポイントや感想は創作意欲の源だし、誤字報告にはいつも助けて貰っているから」
「お気に入りユーザー登録してくれている人向けにリクエスト企画をするのもいいんじゃないかな」
良かったら感想欄に皆さんの黒歴史もご披露をば!
ほら本当はいいもの持ってるんでしょ?ちょっとジャンプしてみなよ。
本作の1月ほど前のお話が気になる方は下の転移魔法陣からどうぞ
(本編以上に感想欄が充実していると評判の作品です。) ↓