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異世界派遣

自己紹介という名の大喜利

作者: へるきち

「この中に、神獣、堕天使、女神、ドラゴンの幼体、Pythonの書ける奴が居たら、私のところへ来なさい」


 自己紹介とは大喜利の事だったろうか?


 今のヤツなんて、ベタベタのベタじゃん。すげえな、こいつのメタルハート。悪役令嬢みたいなグルグル縦ロールは伊達じゃない。

 最後のだけ実用的なのは一体何なの? 俺、VBならちょっと書けるんだけどダメか? まあ、こんな令嬢は俺の好みじゃないから、どうでもいいや。


「先生は魔法少女だからニャア。ちょっと違うニャア。ほいじゃあ次ー」


 ニャアじゃねえよ。だいたい教師が少女なワケあるか? 見た目だけは、14歳のチュウニに見えるけど。まあ、チュウニなら仕方ない。


「先生ー、ピカーっと魔法撃って下さい。魔法少女なんて初めて見ましたー」

「あ? いいぞ? でもMPが0だからな」


 ぐふっ。教師までベタベタのベタかよ。やっべえ、俺の順番って最後じゃね? 窓際の一番後ろだからなあ。どうやって落としたらいいのん?


 12年物スコッチをガボンガボン飲んで、いい感じに微睡んで来るとだ。ガボンガボン飲むなら甲類焼酎でいいだろ、て話だけどな? それはともかく。


「ああ、ここまでの30数年間は全て夢で、目が覚めたら薄暗い体育倉庫で、体育教師に正座させられながらグースカ寝ちゃった、あの瞬間に巻き戻ってんじゃね?」


 なーんて、妄想をよくしてしまう俺だが。今まさに、そんな状況。コレが夢なのかも知れんが。


 どうやらここは小学校らしい。目が覚めたら、教室窓際の一番後ろの席で寝てたってワケですよ。どうやら、今日が初日らしく、すっとんつるりんな担任教師がやって来て、まずは自己紹介だぞー、ってなもんですよ。小学生から、やり直しってわけですよ。


 こういうイベントはだな、もっと早く訪れて欲しかった。


 定年間近で、ある程度楽が出来るポジションに納まって、そこそこに高収入、老後の資金だって2千万円と言わず、5千万円くらいは溜め込んだ。54歳になって、そろそろやっとアガリだぞって、油断した途端にコレかよ。


 適応障害の診断書を貰ったのに、炎上案件のリーダーを押し付けられ、過労死ラインを軽く突破した時間外労働に追い立てられ、パワハラとセクハラで訴えられた、あの頃とか。

 パワハラなら自覚的にやったぞ? 俺よりも先輩なくせに、足を引っ張るバカの机を蹴っ飛ばしたよ。でも、セクハラって何? 女子社員なんかたまの現場作業にヘルプで呼んだだけじゃんよ。どういう事? あの時こそ、小学生からやり直したかったわ。


 そもそもだよ? 戻るなら小学生じゃねぇだろ!


  これから6年間は遊んでりゃいいかも知れんけども。中学なんて中世の監獄みたいなもんだろ? 今の俺のメンタルで、クソダサジャージの体育教師に、


「おいオマエ、教師に挨拶もせず通り過ぎるのか」


とか言われようものならだ。


「あ? てめえのケツに声がけして事案になりたかねえんだよ」

ぐらいは言い返すし、

「そこの体育倉庫に来い」

なんて言われたら、

「ひとりで入ってろ」

って閉じ込めちゃうわー。

 過剰防衛かも知れんけど、学校って完全に治外法権だろ? やったヤツの勝ちじゃん。何故あの時の俺はそうしなかったのか。


 しかもだ、そうやって生き抜いてもだ。社会に出る時には、就職氷河期なんだぞ。

 どこの時点にも戻りたくねえ。人生のやり直しなんてまっぴらごめんだ。


「ワイは、チンチン・ポテット666世や。みなさんご存知、帝国の皇帝やでー。そうそう打首にはしいひんから、なかようしてなー」


 666世って。何万年続く名家なんだよ。

 でも、6歳児だもんなあ、仕方ないなあ。チンチンとかスグ言っちゃう。女の子なのに。


 ところで、教室の後ろにズラっと並んでる屈強なメイド軍団って、こいつのSPなの? まさかマジ皇帝? マジックヤバス。

 腰に見えるのは日本刀ですよね? 銃砲刀剣類所持等取締法違反なのでは? ははーん? この学校内も、まさに治外法権って事なの? やっべえ、マジで打ち首5秒前。


「ちんは王女である。幼女なのでちんちんはない」


 おいおい、ロイヤル下ネタの連発かよ。

 後ろのメイド軍団は黒が8に白が2だけども。黒が王女殿下の近衛騎士なのかなー? 女騎士達の圧がコワイ。クッコロ!


「うちはベーコンじゃ」

「レタスじゃけ」

「トゥメイトォなんよ」


 なんでハンバーガーみたいな名前付けられてんだ、この三姉妹は。

 もう、キラキラネームって時代じゃないでしょ。いや? 今がいつの時代かも分からなんぞ? みんな日本語だから、日本だとは思うんだけど。


「ワタクシはリン・リンですわ。母は公爵ですのよ」

「ワタクシはラン・ランですわ。母は辺境伯ですのよ」

「ワタクシはカン・カンですわ。母は伯爵ですのよ」


 今度は、親の地位でバンダのマウント合戦が始まった。

 貴族の序列とか知らんのだけど。だいたいが、王女と皇帝っていう上位の存在が居るんだから、敵うわけないだろ。

 

 さては、ここ令和日本じゃねえな? 日本に公爵と居ない。居ないよな? さっきはドラゴン爵とかいう謎の爵位も居た。それも親じゃなくて本人が。6歳幼女なのにドラゴンスレイヤーな勇者だったりするのだろうか。


「拙者は、スズメ・ヤキトリでござるよ。忍者ナリ。ニンニン」


 おやー? この学校は王立近衛騎士予備校っていう近衛騎士を養成する小学校なんだぞ。

 机の上に「がっこうのくらしかた」とかいうテキストがあって、そこにそう書いてある。大喜利自己紹介を聞きながらも、さっきから読んでいるのだ。


 「ここは、こっかの じゅうようきみつしせつ だよ。むだんで そとにでたら そくしゃさつだよ」


 とも書いてある。

 国家の重要機密施設に何故忍者が? 完全に他国のスパイです。


「ほー、忍者なのに騎士になるのかニャ?」

「武士になって主君に仕えるでござるよ」


 もう、意味が分からない。「なんでやねん!」って言うところですかね?


「あー、俺はサイボーズ戦士だあ。名前はねえ。ただし俺を製造番号で呼ぶことは許可しねえ」

「ククッ。我は、暁の堕天使。ヴァンパイヤじゃ。幼女の血は好かんから安心するがいい、ニンゲン共」

「わたし、魔法幼女よ! 使い魔のドラゴンは、中庭で昼寝中よ! 逆鱗に触れたら即死だから注意してね! 見た目は黒ジャガーだけど、うっかり撫でないでね!」


 なんてことだ。ここは小学一年生の教室なのに。


 チュウニの巣窟だ。しかも重症のツワモノ揃い。


 どうしようか、今度こそツッコミ待ちかな? ドラゴンなのに何で猫科やねーん、か、ジャガーはうっかり撫でへんわー、なのか、ジャガーが黒ってどういう事やねん、なのか。


 ずどどどん! がっしゃあああああん!


 え? サイボーグ戦士のケツからキャノン砲が一瞬生えてなかった? それは幻覚だとしても、粉々になった教室の窓ガラスは紛うことなき現実。


 ぴっかー! がっしゃあああああん!


 サイボーグ戦士に襲われた魔法少女が電撃魔法で反撃した。ちょっと? ピンポールのハイスコアを競い合うように、校舎の窓ガラス割らないでもらえます? 寒いんですけど。お前らは、一体どこから卒業すると言うのだ。まだ小学一年生でしょ?


「なんだ、てめえもやるじゃねえか。てめえの猫だろ。俺のフェニックスを齧ったの」

「あ? ポンコツロボ何言ってんだ? 学校にニワトリ連れてくんな」


 確かに、ニワトリを学校に連れて来ちゃダメだろうけど、ジャガーはもっとダメでしょ。お前こそ何言ってんの? でもって、フェニックスってニワトリなんだ。食べると不死になるという伝説の不死鳥卵を、毎朝ポコポコ生みそうだな。


「こらこらー、死闘は外でやってくれニャー。生徒が死んじゃうだろー? 先生的には少ないと楽できていいけどニャア」


 楽できていいってレベルじゃない。この教室で息をしている生徒は、おそらく11人しか居ない。

 王女と皇帝は、後ろの女騎士だかメイドだか分からん連中に守られた。

 ハンバーガー三姉妹は何故か平然としているし、ジャイアントパンダ貴族令嬢達は、縦ロールで防御した。あの縦ロールはファンネルか何かかな?同じ縦ロールでも、ハルヒ女は、魔法少女の電撃で黒焦げだよ。


 そして、俺なんだが。


「やっべえ、他のヤツ死んじゃったから、自己紹介が、もう俺の番じゃん」


 ってなもんですよ。なんで、俺生きてるのん? あと、このイカれた情緒はどうなんってんの?


「最後はー、そこの猫ニャ。いや、猫頭魔獣だニャ。おまんじゅう食べる?プックク」


 チュウニが言うダジャレかー?

  そういうのは俺の担当じゃないのか? 中身は54歳だからな。なお、このチュウニ教師、ほんとに14歳だった。さっきから読んでるテキストに書いてあった。もう燃えて灰になったけど。

 この小学校は、9年制で、最上級生は、この学校で教育実習をするのが授業なんだそうだ。

 こいつはまだ14歳だから、飛び級したんだな。こんなのが飛び級? どんな授業内容なんだろうか?


 で? 俺ってやっぱ猫魔獣なんだ。

 

 頭も顔もモフモフだし。後ろのメイドや一部生徒が何かブツクサ言っている小声までバッチリ聞こえる。隣の教室でも大喜利みたいな自己紹介してんのが聞こえてる。耳でかいし、ぐるんぐるん動くもんなあ。


 あ。もしかして? 自分の股間をまさぐってみる。無い。あって欲しいものが無い。俺、メスに転生してる。生徒も教師も、うしろに居る保護者達も、全員女だから、もしかしてと思ったら、もしかしたわ。


 んで? 俺の自己紹介なの? でも、俺って誰なの?


 俺は、最後の大オチをスベった罪で、皇帝にクビを刎ねられてしまった。


 でも、翌日には復活していた。なんでも、猫魔獣は何度死んでも蘇るのだとか。魂も9つどころか、無限にあるんだとか。


 猫魔獣は蘇るだけでもチートなのに。ミスリルの剣を指先で折れるし、鼻でスパゲティを食べ、目でピーナッツを噛む程の怪力があり、更には魔法も使えるのだとか。


 魔法の使い方はまだ知らんので、とあえず皇帝の頭骨は砕いておいた。肉球の手でポフっと掴んだだけで、トマトの様に飛び散った。力加減がまだよく分かってないね。


 俺は、クラスの番長って事になったらしいのだが。

 

 それどころじゃない。他国の皇帝を殺害してしまったことで、王国と帝国との間で戦争が始まってしまった。

 猫魔獣である俺は最終兵器として、軍に徴発されてしまった。

 

 もう認めるしかないが、俺が陥っているこの状況はタイムリープなんてちゃちなもんじゃなかった。


 異世界転生ってやつだ。

 

 俺は、転生チートで、人類を滅ぼせる力を得てしまったぜ。


 魔王にでもなろうか。スケバンなんてちゃちなもんじゃねえ。もっとデカい存在を目指すんだ。


 この世界の人類は、どうなっちゃうの~?

こういう荒唐無稽な異世界もの連載を書いてます。よろしくどぞー

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