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第九話

星の祭りの前夜、王都のホテルで最終確認を行っていた私たち。セリックは銀の笛を私に手渡した。

「これを吹けば、私たちはすぐに駆けつける」

「でも、その前に儀式を阻止できるかもしれない。私の浄化の力で」

「無理はするな」セリックの目に心配の色が浮かんだ。「相手は多数だろう。一人で立ち向かおうとしないでほしい」

作戦会議の後、セリックが部屋を訪ねてきた。

「明後日のことを考えると、眠れなくて」彼は静かに言った。「特に、あなたを危険にさらすことに」

「怖くないの?」私は正直に尋ねた。

「怖い。だが、恐れていては何も変わらない」

彼の言葉に、心が温かくなった。このような強さと誠実さを持つ人に、私は出会ったことがなかった。

「あの日、中庭で…あなたが私を抱きしめてくれた時、何かが変わった気がする」

彼は私を見つめ、その目に深い感情が宿っていた。「私も同じだ」

「この戦いが終わったら…私の気持ちをきちんと伝えたい」

その言葉に、心臓が早鐘を打った。

「それまで待ってくれるか?今は戦いに集中したいから」

私は微笑んで頷いた。「待つわ。だから…無事に戻ってきて」

彼も微笑み、そっと私の手を取った。「約束する」


星の祭りの夜、王都広場は祝祭ムードに包まれていた。私は深緑色のドレスに身を包み、人混みに紛れ込んだ。遠くからでも、セリックたちの姿が見える。

「まさか、ここで会えるとは思わなかったよ、リディア」

突然背後から聞こえた声に、凍りついた。ゆっくりと振り返ると、そこにはエドガー・ロムフェルトが立っていた。

「あなたも星の祭りを楽しみに来たのかしら」

「もちろん」彼は意味ありげに笑った。「今夜は特別な夜になる。特に私にとっては」

「止めるべきよ、エドガー」真剣に言った。「『王血継承の儀』は禁断の術。多くの犠牲を出すわ」

彼は驚いたように目を見開いた後、低く笑った。「やはり知っていたか。しかし、もう遅い」

星の祭りの儀式が始まり、祭司たちが古来からの祝詞を唱え、光の粒子が少しずつ灯され始める。しかし私の目は、儀式の裏で動くものを探していた。

祭壇の周りに立つ祭司たちの中に、内側に黒い装束が見え隠れする者たちを発見。その時、突然、広場の光が薄暗くなった。

人々が不思議そうに空を見上げる。星が一つまた一つと、その光を失っていく。そして、薄い赤い霧が広場に立ち込め始めた。

銀の笛を口に当て、力強く吹いた。それが合図だ。

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