エピローグ
あれから一年が経った。
王都の丘に建つ「王立癒しの学院」の窓から、私は春の陽光を浴びる庭園を眺めていた。王太子の提案で設立されたこの学院の初代学院長として、私は癒しの魔法を持つ者たちを育成していた。
「こんにちは、学院長殿」
セリックが部屋に入ってきた。彼は今も王国騎士団長として務めている。
「相変わらず堅苦しいのね」笑いながら答えた。「私たちの仲で、そんな呼び方はやめてって言ったでしょ」
彼はかがみ込み、軽く私の額にキスをする。
「報告があってな」彼は真面目な顔になった。「かつてのフォンブラット伯爵家の領地から、緑の石の鉱脈が見つかった」
「調査の結果、あの領地の地下には『王の石』の一種が眠っていたことが分かった。だから君の母上は、その石を持っていたのかもしれない」
「まるで…全てが繋がっているみたい」
「運命かもしれないな」セリックは静かに言った。「十年前、赤い雨の中で一度出会い、そして再び巡り合った私たちのように」
彼はポケットから小さな箱を取り出した。「リディア・フォンブラット、私の妻になってくれないか」
箱を開けると、緑の石と青い石が寄り添う美しい指輪が輝いていた。
「はい」しっかりと答えた。「私もあなたと共に歩みたい」
窓の外では、学院の生徒たちが中庭に集まり始めていた。彼らの未来は明るい。そして、私たちの未来も。
「行きましょう、セリック」私は微笑んだ。「私たちの物語はまだ始まったばかりだから」
彼も静かに微笑み返した。「ああ、これからが本当の始まりだ」
かつて「悪役令嬢」と呼ばれた私の真実の姿。
そして、騎士団長の揺るぎない剣。
二つの運命が交差し、新たな物語が紡がれていく。
それは、星の光に導かれた、永遠の絆の物語。
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