第十話
「アルティシアの民よ!」エドガーの声が広場中に響き渡る。「今宵、新たな時代の幕開けを見届けよ!」
祭壇の上に立ったエドガーは、緑の石と同じ輝きを持つ大きな宝石を掲げた。赤い霧がさらに濃くなり、広場を包み込んでいく。
「セリック!」
叫びながら、私は祭壇に向かって駆け出した。同時に騎士団の精鋭たちも動き出し、黒装束の男たちと交戦を始める。
「リディア、下がれ!」
「力を貸して!」私は彼に向かって叫んだ。「あなたの剣に、私の魔力を込める!」
彼が剣を掲げると、私はその刃に手を当てた。緑の光が剣を包み込み、青い光を帯びた魔法の剣へと変わる。
「行くぞ!」
セリックは魔法を帯びた剣を振るい、黒装束の男たちを次々と倒していく。私も浄化の光を放ち続け、赤い霧を押し戻していった。
「もうすぐだ…」エドガーの声が響く。「王の血を受け入れよ!」
彼の手から赤い光線が放たれ、王太子に向かって伸びていく。
私は最後の力を振り絞った。母の首飾りの緑の石が砕け散るほどの力で、全ての魔力を解放する。緑色の光が爆発的に広がり、セリックの剣を通じて一点に集中した。
「うおおおっ!」
セリックの剣が、エドガーの持つ「王の石」を直撃する。石が砕け散り、眩い光が広場全体を包み込んだ。
赤い霧が徐々に晴れていき、代わりに緑の光が広場を浄化していく。黒装束の男たちは力を失い、エドガーも膝をつき、崩れ落ちた。
「終わったのね…」
力を使い果たした私も、その場にへたり込んだ。しかし、すぐにセリックの強い腕が私を支えてくれた。
「よくやった、リディア」
王太子自身が近づいてきて、私たちの前で頭を下げた。「恩に着る。あなたたちのおかげで王国は救われた」
振り返ると、広場には再び星の明かりが戻り、人々が不思議そうに、しかし安心した表情で見守っている。
「十年前の真実が、ついに明らかになったわね」
セリックの腕の中で、私は微笑んだ。長い間背負ってきた「悪役令嬢」の烙印が、ついに解けたのだ。
「セリック」彼の顔を見上げた。「あなたが言っていた…戦いが終わったら伝えたいことって…」
彼は優しく微笑み、人々の視線も気にせず、私の頬に触れた。
「もう隠す必要はない」彼の声は、星の祭りの夜に相応しく優しかった。「リディア・フォンブラット、私はあなたを愛している」
その言葉に、胸が熱くなった。「私も…あなたを愛しているわ」
彼は私を見つめ、ゆっくりと顔を近づけてきた。そして、星明かりの下、人々の見守る中、私たちは初めてのキスを交わした。
その瞬間、まるで伝説通りに、星の祭りの光の粒子が私たちを包み込み、祝福の印となった。
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