初のチーム戦
「さて、ようやく5人揃ったわ…」
優里は感慨深げにそう呟いた。もともと、ここまでメンバーが揃うことなど想像もしていなかった。
しかし、実際に集まった仲間たちを目の当たりにし、彼女の胸は不思議な期待感で満ちていた。
「そうだね。大会は来月だけど、とりあえず初めて5人揃った記念に練習試合をしてみようか」
息吹がルナ店長と共にPCをセットアップしながら提案する。その提案に、優里たちは賛同した。
「公式大会と同じ形式でやってみよう。占領戦の5vs5。相手はランダムでマッチングされる野良チームだね。優里ちゃん、指示を頼むよ」
息吹は脳波デバイスを頭に装着し、軽く準備運動をするように肩を回した。
「えっ、私が指示を?」
優里は驚いた表情で息吹を見たが、すぐに目をそらし、自信なさげに口をつぐんだ。
「いや、その…私、そんな大したことできないし…」
「大丈夫だよ、優里ちゃん」 息吹が軽く肩をすくめ、いつもの調子で笑う。
「僕らは個々の力は強いからね。あとはそれをまとめるだけ。優里ちゃんが一番ゲームのこと知ってるし、適任だと思うよ」
葵も優里の肩を軽く叩き、明るい声で励ました。
「そうだよ、優里! 私たち、優里が指示してくれれば心強いんだから!」
「…そうかもしれないけど…」
優里は視線を泳がせつつ、小さく頷いた。
「わかった。やれるだけやってみる」
ハルコはそのやり取りを聞きながら、腕を組んで不敵に笑う。
「じゃあ、私の火力をどう使うかしっかり考えておいてくださいね。私の仕事は敵をぶっ飛ばすことなんで」
「その『ぶっ飛ばす』の加減をちゃんとしてね」
優里が苦笑すると、ハルコはニヤリと笑いながら肩をすくめた。
「了解。でも、頼りにしてますよ、リーダー殿」
一方、凛は静かにヘッドセットを装着し、息吹の隣に座った。
「息吹サマがいれば、私はそれで十分です」
「凛ちゃん、それじゃチームにならないからね」
息吹が苦笑しながら軽く注意するが、凛は静かに微笑むだけだった。
「さて、準備はいい? 試合を始めるよ」
息吹がPCを操作し、全員の画面に試合開始のカウントダウンが表示された。
【試合開始まで10秒】
「み、みんな、勝つよ!」
優里が少し震えながらも意を決して声を上げると、それぞれが「了解!」と返事をした。
【試合開始】
戦場は砂漠地帯に建設された石油コンビナート。
赤い砂埃が舞い、遮蔽物が点在する広大なエリアだ。
中央には占領ポイントがあり、そこを制圧することが勝利の鍵となる。
「全員、まずは中央を目指すわ。葵、シールドを構えて前進して。ハルコは後ろから支援。私は後方で全体を見ながら援護する」
優里が慎重に指示を出す。
「了解!」
葵がシールドを構えながら慎重に進んだ。
「派手に行くよ!」
ハルコはすでに肩にロケットランチャーを担ぎ、目立つ行動を見せ始めている。
「息吹は…あれ? どこ行ったの?」
優里が慌ててミニマップを確認すると、息吹のキャラはすでに単独行動を開始していた。
「裏取りだよ。このルートなら、相手のスナイパーを潰せるかも」
息吹は軽い口調で答える。
「ちょっと! なんで勝手に動くのよ!」
優里が怒りを抑えながら指摘するが、息吹は気にする様子もなく答えた。
「大丈夫だって。結果出すからさ」
さらに凛の通信が入る。
「息吹サマ、私も援護に向かいます」
「凛まで!? ちょっと待ちなさい!」
優里が制止するも、凛は息吹を追うように行動を開始した。
その間に、前方の葵とハルコが敵と交戦を開始していた。
「優里、前に敵がいる!」
葵が叫ぶが、シールドを構えたまま足がすくんで動けない。
「怖いよ! 進めない!」
「葵、シールドを前にして前進するの!」
優里が必死に指示を出すが、葵は恐怖で動けないまま。
その隙に、ハルコがロケットランチャーを発射。
「これで一掃してやる!」
しかし、その派手な攻撃に敵のスナイパーが反応し、正確な狙撃でハルコを撃破。
「くっ、バレた…!」 ハルコがリスポーン地点に戻る。
一方、息吹は裏取りに成功しかけるが、相手の角待ちショットガンに撃たれてしまう。
「うわっ、やられた! このタイミングで出てくるかよ…」
「だから言ったのに!」
優里は声を荒げたが、その時、凛の声が通信に入った。
「息吹サマがやられるなんて…」
凛はその瞬間、敵のスナイパーを見つけ、一発で仕留めた。
「これで邪魔者は排除です」
しかし、凛は他の仲間がピンチに陥っていることには気付いておらず、その間に、敵チームは占領ポイントを完全に制圧し、優里たちの初戦は一方的な敗北に終わっていた。
「はぁ…負けた」
試合後、優里は椅子に深く座り込み、ため息をつく。
「いやぁ、楽しかったね」
息吹が笑いながら振り返ると、優里は怒りを込めた視線を送った。
「何が楽しいのよ! あんた、勝手に動きすぎ!」
「私も全然動けなかった…ごめんね」
葵も苦笑しながら頷く。
ハルコは肩をすくめて言った。
「ま、初戦。これから連携を磨けばいいんじゃないですか?」
優里は拳を握りしめ、次への決意を固めた。
「確かに、でもこれで、みんなの性格は掴めた。次は絶対に勝つわ!」
一方その頃――。
暗い部屋の中、複数のモニターが光り輝き、静かなキーボード音が響く。
そこには眼鏡をかけた細身の男、フェンリルが座っていた。
理知的な瞳の奥には冷静な計算が覗き、白いシャツの袖をきっちり折り畳んでいる。
「ひどいですね…まとまりがまるでない」
フェンリルはモニターに映る優里たちの試合を眺めながら呟く。
「お嬢が注目してるチームがこれかよ。面白えじゃねえか」
背後で笑い声が響く。筋肉質な巨体を持つ男、ヨルムンガンドが、重そうなダンベルを片手に軽々と上げながらモニターを覗き込む。
「顔が近いです」
フェンリルが冷静に指摘するが、ヨルムンガンドは気にせず画面を覗き込む。
「まあまあ、フェンリル。こいつら、個性は光ってるぜ。あの火力馬鹿も、あのナイファーもな」
ヨルムンガンドは歯を見せて笑う。
「だからといって、チームとして機能しなければ話になりません」
フェンリルはため息をつき、メモを取りながら淡々と続けた。
「いやいや、俺に任せろ」
ヨルムンガンドはダンベルを机に置き、フェンリルの肩に手を置く。
「ちょっくらあいつらに、チーム戦の厳しさを教えてやろうぜ」
「過剰にやりすぎるのは控えてください。相手は素人に毛が生えた程度のチームですから」
フェンリルが冷静に警告するが、ヨルムンガンドは大きな手で彼の背中を軽く叩いた。
「おいおい、優しくしてやるって。でも筋肉と同じさ、負荷をかけなきゃ強くなれねえだろ?」
フェンリルは呆れながらキーボードを叩き、ヨルムンガンドのチームをマッチングリストに追加する。
「では、お好きにどうぞ。ただし、計画に影響が出ないように」
「わかってるって!」
ヨルムンガンドはヘッドセットを装着し、モニターの前に座ると笑みを浮かべた。
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