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戦火の皇女

挿絵(By みてみん)


 深い森の中、緑に覆われた静寂を破るように一人の少女が銃を構え、周囲に鋭い視線を走らせる。


「残るは、私一人か…」


 彼女のチームは次々と敵に襲われ、ほぼ壊滅状態に。しかし、優里には焦りも戸惑いもなかった。むしろ、その目はどこか楽しげに輝いている。


「逆境が険しいほど、燃えるものよね」


 心の中でそう呟き、接近してくる敵の動きを静かに見据える。数は三人──少なくとも一人は仕留められる。


 愛銃であるM4の銃身を持ち上げ、そこに装着されたグレネードランチャーの照準を合わせる。緊張感の中で引き金にかけた指に、心臓が鼓動を伝える。恐怖と興奮が入り交じる瞬間を彼女は何よりも好んでいた。


「ぶっとべや!」


 銃口が火を噴き、弾が敵の中心へ命中。爆風が木々を揺らし、一人の兵士が遥か彼方へと吹き飛んでいく。


 その瞬間、優里の目は鋭い光を帯び、次々と残る敵を倒していくその動きはまるで舞を踊るかのよう。気づいた敵たちが近づこうとするが、彼女のグレネードランチャーが次々と炸裂し、周囲はたちまち混沌に包まれる。敵が驚き、後退する隙をつき、優里はまた前進する。


「背中を向けて逃げるなんざ、愚者のすることよ」


 最後の一人を冷静に始末し、エリアに脅威が残っていないことを確認すると、優里は小さく息を吐いた。


「はい、エリア確保。まったく、エイン使わなくても楽勝とか、雑魚乙」


 彼女の名は日下部 優里(クサカベ ユウリ)。類いまれなFPSスキルを持つ彼女は、ヴァルキリーフロントの中で『戦火の皇女』と呼ばれるトッププレイヤーだ。しかし、そんな彼女にも小さな悩みがあった。


「うわあああ、皇女ナイスー!」「グッドゲーム!グッドゲーム!」「今の切り抜き配信していい!? 固定チーム組んでくれません?」


 倒れていたチームメンバーたちがボイスチャットで歓声を上げ、一斉に優里を称賛する。だが、彼女が返した反応はたったの一言だった。


『ども』


 彼女の冷静さにメンバーたちは驚き、どこか敬意を感じているようだった。


「皇女、マジでクールすぎる」「やっぱ俺らじゃ次元が違うんだ…」


 メンバーたちは次第に萎縮し始め、興奮が冷めると少し申し訳なさそうに沈黙する。


 内心では「うふふ、みんな褒めてくれて嬉しい!」とドヤ顔で浮かれている優里だが、対外的にはどう表現していいかわからないのだ。彼女は頭を抱え、つぶやいた。


「だって、知らん人にボイチャとか怖いし、私が返事したらもっと怖がられそうだし。『ども』で限界だって!」


 少し後悔しつつも、ふと彼女の頭に別の考えがよぎる。


「てか、そもそもお前らが『突撃ー!』って言って、何も考えずに突っ込んでいったせいでこうなったんでしょ? 頭パーなの?ヴァルフロは遊びじゃねえんだよ!」


 そう、優里は極度の内弁慶であり、少しコミュ障だった。


挿絵(By みてみん)

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