ゆめのなかのともだち
冬の童話祭用に童話で書いてみました。
ちょっとん?ってなるかもしれませんが、見ていってください。
とある夢の世界に、あるひとりのたびびとがいました。
いろんなひとの夢や、夢の中でしか行けない夢の世界を旅していました。
ある時はいろんな世界や夢を楽しくぼうけんし、またある時はこまっている夢の住人を助けていました。
けれど、そんなたびびとにはともだちがいませんでした。
たびびとは、同じ世界にずっといられないのです。
そして、仲良くなっても、また同じ世界にいくことがむずかしいのです。
たびびとは、仲良くなることをあきらめていました。
そんなたびびとは、ある夢の世界に来ました。
その世界には、いくつもの大きなきれいなたてものがならんでいました。
そのたてものの近くには小さなこどもから、少しおおきい子までいました。
たびびとがこどもたちに近づくと、こどもたちはたびびとに気づきました。
「おねえちゃんだれ?どこから来たの?」
小さい子がたびびとに聞きます。
「こんにちは。おねえちゃんはすごくとおいところから来たんだよ。」
「ふ~ん。そうなんだ。ねぇ、一緒にあそぼうよ。」
「いいよ。なにしてあそぶ?」
こどもたちは、たびびとのふくをつかんで、あるきだします。
こどもたちについていくと、おおきなゆうえんちにつきました。
「ここであそぶの!」
「わぁ。すご。」
こどもたちは、おどろいているたびびとをおいて、ゆうえんちへと歩いていきます。
「おねえちゃんもはやく!」
たびびとはこどもたちとたくさんゆうえんちであそびます。
コーヒーカップでめいいっぱいまわして、ジェットコースターにのってみんなでさけんでおおはしゃぎ。
たびびととこどもたちはたのしいじかんをすごしました。
「たのしかったね。」
たびびとはいすにすわりながら、こどもたちにはなしかけます。
けれど、へんじはかえってきません。
おかしいとたびびとはおもって、こどもたちのほうをみます。
すると、そこにはこどもたちではなく、くろいたくさんのめのついたおおきいなにかがくちをひらいていました。
「ごめんね。おねえちゃん。わたしたちたべなきゃいけないの。たべないと、いのちにならないの。」
たびびとは、おどろきつつも、こどもたちだったもののくちをさわります。
「だめだよ。わたしをたべてもおなかをこわすだけだよ。」
たびびとは、ゆっくりと黒くておおきいからだをなでます。
「おねえちゃんは、”つよいみれん”じゃないの?ここにこれるのは”つよいみれん”だけだよ?」
「おねえちゃんはみんなとちょっとちがうみちをとおってきたんだ。だから、きみたちのいう”つよいみれん”じゃないの。」
「そっか。それじゃあ、たべられないや。」
こどもたちはざんねんそうに、黒くて大きいからだをこどものかたちにしながらいいます。
「なんで、きみたちは”つよいみれん”をたべないといけないの?」
たびびとは、こどもたちにききます。
「いのちになるためだよ。」
「いのち?」
こどもたちのふしぎなこたえに、たびびとは首をかたむけます。
「わたしたちは”つよいみれん”になったものなの。わたしたちはわたしたちの”つよいみれん”のためにもいのちになりたい。だから、”つよいみれん”をいっぱいたべていのちになるの。」
「じゃあ、きみたちがたべた”つよいみれん”はどうなるの?」
「いちばん”つよいみれん”がつぎのわたしたちになるの。」
「じゃあ、たべなかったら?」
「たべなかったらきえちゃうの。」
たびびとは、こどもたちのことばにおどろきます。
そして、たびびとはこのことについて旅をしたなかでよくあることだとしっていました。
生きるために、つよいおもいやちからがあるものをたべて、いきるものを。
たびびともよくたべられそうになり、にげたりたおすこともよくありました。
けれど、たびびとはみじかいけど、たくさんあそんだこどもたちがいなくなるのをほうっておけませんでした。
たべようとして、ゆだんさせようとしても、とてもたのしかったおもいでをかなしいおもいでにしたくありませんでした。
だから、たびびとはこどもたちにあるものをわたしました。
「おねえちゃん。これなぁに?すごくぽかぽかで、あったかいよ。」
「それをおそらになげてみて。いいことがおきるよ。」
こどもたちはくびをかたむけながらも、そらになげます。
すると、そらになげたものがはじけて、こどもたちがすむせかいをつつみはじめました。
なんと、たびびとがこどもたちにわたしたのは、たびびとのつよいちからでした。
「これがあれば、もう”つよいみれん”をたべなくても、いつかいのちになることができるよ。きえることもなくなるよ。」
こどもたちは、くちをあけてぽかーんとしています。
たびびとはそんなこどもたちをみて、くすくすわらっています。
「おねえちゃん。いいの?」
「うん。もちろん。こうやっておもいっきりあそぶのもたのしかったし、きみたちとこれからもあそびたいもの。」
「わたしたちとあそびたいの?」
こどもたちはまだおどろきながらも、くびをかたむけます。
「うん。わたしはね、いろんな世界にいくことは出来ても、その世界にずっとはいられないの。だから、だれかとこうやってあそぶってこともなくてさびしかったけど、あきらめてたの。けど、きみたちとあそんで、またここにきたいなっておもったの。だから、その、おともだちになってほしいなっておもって……。」
たびびとのそのことばに、こどもたちのかおがぱぁっと明るくなり、たびびとにだきつきます。
「もちろん!」
こうして、ゆめの世界をたびするたびびととこどもたちはともだちになりました。
たびびとはときどき、たびびとのちからをたどって、こどもたちのいる世界へあそびにいきました。
こどもたちは、だれもきえずに、すこしずつそだっています。
めでたしめでたし