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2度と恋愛なんかしない!そう決意して異世界で心機一転料理屋でもして過ごそうと思ったら、恋愛フラグ!?イヤ、んなわけ無いな  作者: 弥生菊美


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第41話 場外


 教会の奥に聳え立つ、エシュテル神の足元で騎士5人が膝をつき祈りを捧げている。

白銀の防具がキラキラと太陽の光を反射して、まるでエシュテル神からの祝福を受けている様な姿に、教会に訪れた者は見惚れ、ため息を漏らす。


 だが、そんな光景に見惚れもせず見下す様な目をした者が1人、音も立てずに騎士達の方へと足早に歩み寄る。祈りが終わり、立ち上がった騎士達の前へ慈愛に満ちたその美しい笑みで立ちはだかる修道服を着た女が1人、その姿に驚きもせず優雅に微笑む騎士団団長が口を開く


「これは聖女様、感謝祭で城でお会いした以来ですね。」


 ハイルもまた女性達が卒倒しそうな程の、美しい笑みを浮かべてエリティナに一礼する。


「ハイル様、ご機嫌麗しゅう。

先日はお世話になりました。

騎士の皆様方も、大変お疲れになりましたでしょう?

ですのに、教会へ祈りに来てくださるその信心深い心、エシュテル様も大変お喜びでしょう。」


 そう言うとエリティナが騎士達へと距離を詰めると、ニコニコとした笑顔はそのままに、捲し立てるように話し出す。


「ところで…ハイル様、先程小耳に挟んだのですが、感謝祭の最中も2人の少女が行方不明になたとか?

1ヶ月で10人も、6歳から20代までの女性が行方不明に、それがもう3ヶ月も続いているのに騎士団はもしや、この事件の事をご存知ではないのでしょうか?」


 その言葉を聞いて、ハイルの顔から笑顔が消えた。


「お恥ずかしい限りです。この件については、人の目が多くあるこの場所では詳細は話す事ができません。

ですが、問題解決のため騎士団は最優先でこの件に心血を注いでおります。

必ず、犯人を捕らえてこの国に平穏を取り戻します。

聖女様も民の不安に心を痛めておいででしょうが、どうか、今しばらくお待ち下さい。」


 エリティナの目を真っ直ぐ見据えたまま話し終えれば、エリティナの顔からも笑顔が消える。

だがそれも一瞬、エリティナがその綺麗な目をゆっくりと閉じて再び目を開くと、うっすらと微笑みを浮かべた表情に変わった。


「私としたことが、失礼いたしました。

ついつい、私の大切な方の身にも危険が及ぶのではと考えたら居ても立っても居られず。

申し訳ありませんハイル様」


聖女の大切な方と言う言葉に、家族だろうか?と気になりながらも


「いえ、お気になさらず。

では、私達はこれで失礼致します。」


 そう言って、騎士達と一礼をすると「出口までお送りしますわ」と、エリティナがハイルの少し前を歩く、今までも教会に来てエリティナ様と言葉を交わした事があったが、なぜだか今日は妙に関わってこようとする。

妙な引っ掛かりを覚えつつ、エリティナの言葉に大人しく従う。

 後ろの騎士達が、少し遅いが昼食に青葉ちゃんとの所で昼を食べようと話しているのを、聞き耳を立てながら、言葉にはしないものの内心でそれは良い案だ!と、青葉さんに会えることに歓喜する。


 教会の大扉の前で、エリティナが立ち止まるとハイル達を振り返る。


「それでは、私もコチラで失礼させていただきますわ。

ハイル様、くれぐれも誘拐事件の件、よろしくお願いいたしますね。


…私の青葉さんの為に…」


 最後の言葉はハイルにしか聞こえない程度の小声で、しかもニッコリと微笑んで告げた聖女エリティナ、そして挑む様な目…。その言葉とその目に、あぁ…そう言うことかと察する。


「悪いがお前達、先に行っていてくれ、少し聖女様と話さなければならない事がある」


「それなら、私もそばでお待ちいたします。」


すかさず、騎士の1人であるソフィリアが前へと一歩出てくるが、ハイルがそれを手で制す。


「行け」


 今まで聞いたことのないような、怒りを含んだ声といつの間にか笑みの消えていたハイルの顔に、ソフィリアだけでなく他の騎士達も縮み上がり、騎士の1人がソフィリアの腕を引っ掴むと


「では、我々はお先に失礼致します。

昼食はやっぱり騎士団の食堂で食べよう!

そうしよう!では!!」


ガシャガシャと防具の音を立てながら、走り去っていく騎士達を見送る。


「さて…エリティナ様、私も貴方に詳しくお話をお聞きしたい事ができました。

ここで話しては民の目に触れます。

何処か個室にご案内いただけませんでしょうか?」


エリティナに負けず劣らずの、満面の笑みでそう告げれば、エリティナもニッコリと微笑み返す。


「えぇ、もちろん構いませんわ

私もその件について、話をお聞きしたかったんです。

いつの間に…私の青葉さんにちょっかいをかけていたのかと、詳しくお聞かせ頂きたいわ、さっ、こちらへどうぞ」


そう言って、教会内にある扉の方へと歩みを進めるエリティナ

エリティナの言葉に、ハイルの眉がピクリと跳ねる。


「ちょっかいなどと、遊びのように言われるのは心外ですね。

私は真摯に青葉さんと向き合っております。彼女は僕の全てですから…それよりも、聖女である貴方ともあろうお方が、1人の女性をまるで私物のように仰るのはどうかと思いますが?」


「あらあら、どの口が?」

「ふふふ、聖女様こそ」


 聖女と騎士団長が不気味な黒い笑みを浮かべながら教会の奥への扉に入っていく姿に、礼拝に訪れた人々が恐れ慄いたのは言うまでもない。





「なんか今日の聖女様、不機嫌じゃなかったか?」


「俺も思った。なんか妙に突っかかってくるというか…」


「そうか?いつも通りの美人じゃないか?」


ハイルと別れた騎士達が、広場を歩きながら先程の事についてあーでもないこーでもないと議論する。

そのくだらない議論をイラつきながら聞いていたソフィリアが不意に立ち止まる。


「私は外で昼食をとってから戻る」


 前の騎士3人にそう告げれば、振り返った1人が「はいはい」と、ヒラヒラと手を振る。

騎士でありながら、自覚が一切ないその行動に苛立ちを覚えながらも、何を言ってもこいつらには通じないと3人から足早に離れる。


 ハイル様のことは気になるが、相手は聖女だ。

戻った所でどうすることもできない。

となれば、広場に来た次手だ…ここのところハイル様は話題にこそ多くは出さないが、青葉という女の話が出る度に目を輝かせる。


本当に…気に入らない。


 邪魔なヘルムを片手に抱えて、歩みを進めるのは広場にある青い店、私は知っているのだ。

同じ貴族であり親戚でもあるマリエッタのお茶会に、あの女が招かれていることも…そしてそのお茶会にハイル様が顔を出していることも…。


ギリギリとヘルムを持つ腕に力が入る。


青葉…


舌打ちをしながら、その女が店主をする店の扉を開いた。





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