表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2度と恋愛なんかしない!そう決意して異世界で心機一転料理屋でもして過ごそうと思ったら、恋愛フラグ!?イヤ、んなわけ無いな  作者: 弥生菊美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/55

第35話 食事会3


 私の事を諦めたくない!?

こんな引く手数多のハイル様が!?私を!?

ないない…絶対にあり得ない…何か訳があるに違いない!!!

自分で考えときながら、虚しくなってくる…。


 やはり、私と付き合うことで隠れ蓑になるとかそういう事なのではないのだろうか?

ハイル様は、そこまでして諦めたくない相手がいたり!?

それとも騎士団長としてのイメージの問題?

本当の理由が気になるところだけれど…。


 ハイル様は上流貴族なのに店に来る時なんかも、店のお客さんと気さくに話をしたり気取ったところがないお方だ。

性格も穏やかで優しいし、うちのお得意様になってくれたし…そんなハイル様が想う相手がいるのであれば、その恋を応援したいとは思うけど…ハイル様ファンの女性達からその恨みを一手に引き受けるのは、少々…いやかなり恐ろしい…。

 どうしたもんかと、考え込んでいると不意にフィオン様が口を開く


「ふむ…そうだなー。

マリエッタは青葉さんの事も、この手料理も気に入ったんだろ?

なら、マリエッタと青葉さんは友人同士になれば良い。

友人であるなら、マリエッタが青葉さんを自宅に招いてお茶会をするのは当然のことだ。

そして、婚約者である僕がマリエッタの屋敷に足を運ぶのは当然事、そして僕の友人であるハイルが僕と共に行動するのはおかしい話じゃない。結婚直前の貴族の男というものは友人付き合いを頻繁にする様になるからね。

そして、マリエッタと青葉さんのお茶会に偶然居合わせた僕達が、折角だからと茶会にお邪魔するのは自然な事じゃないか?」


そう言って、ハイル様にウィンクを飛ばすフィオン様


「まぁ!なんて素敵な案なんでしょう!フィオンは天才だわ!

私も青葉さんとゆっくりお話ししたいわ!

私にとっても良い事ずくめ!ハイルそんな顔をしないで、青葉さんも如何かしら?

私と友人になってくださらない?」


 マリエッタさんの今日1番のキラキラした笑顔が私を見つめる。

その笑顔が眩しいですっ!!


 私の横に立っていた狐鈴さんの方からバキッという何かが割れる音が響く、視線を狐鈴さんの方に向ければ、満面の黒い笑みで空いた皿の淵に手をかけているのだが、その淵に穴が空いている…おそらく親指で皿を抜いたのだろう…そんな割れ方します!?絶対に、キッ…キレてる…。


 そんな事を思っていると、ハイル様にずっと握られていた手を優しく引かれて、アワワ!?と、慌ててそちらを向けば、再び不安そうなハイル様の尊い御尊顔が視界いっぱいに入る。


ちっ!?近いっ!!!


 思わず仰け反りそうになるが、ハイル様がすかさず私の背に手を当ててこれ以上離れないように固定される。

イエスと言えと!?そういう事ですよね!?

私の恋を応援して下さいますよね!?って言う強制的な!?


「青葉さん…遠回りなやり方だとは重々承知しております。

私の自分勝手な願いだと言うことも…ですがどうか、私にチャンスを与えてくは下さいませんか?

哀れな男に、どうか…貴方の慈悲を…」


 そう言うと、椅子から降りて床に跪くハイル様、椅子に座ったままの私の左手を取り見上げるその様はもはやプロポーズでもされているかのような気分になる。


 こっ、こんなのずる過ぎる!!!

色仕掛けだぁぁぁぁ!!!


 店の奥の方で、ガタン!と、大きな音が響き驚いて振り返ればカウンターから出ようとしたゴコクさんを、いつの間にか来ていたシューちゃんがニコニコと笑いながらその首根っこを片手で押さえている。

恐るべし神の力!!

って、もうそんな時間!?


「青葉さん…」


 縋るような声に、慌ててハイル様の方に向き直る。

その見上げる真剣な瞳…私が犠牲に…でもきっと、流石に店や私に何かありそうなら、助けてくれる…よね?

ここで嫌だと言いたいが、言えるわけもない…


うぅっ…私の負けです…


「分かりました…ですけど、その、何かあった際はゴコクさんや狐鈴さん、お店もですけど…助けて下さいますか?」


 平民風情が、条件を出すとは不敬!かもしれないが、これは重要な確認事項である。

店主として!!


「はい…はい!勿論です!青葉さんも、青葉さんが大切にしている者全て!必ず私が守ります!この身にかけて!」


そう言うと、頬を染め嬉しそうに笑うハイル様が、そっと私の左手の薬指に口付けた。


カハッ!!!


 本当に吐血しなかった私を誰か褒めて欲しい!!!

こんな事されて惚れない女はいないだろう。

ハイル様は罪深い男すぎる…。


 本当の本当に!!相手が私で良かったですね!!!

間違いなくその辺の女性だったらハイル様が自分に惚れてると勘違いしますよ!

私だってもう、正直、グラグラですけども…過去のフラれ方を思い出せば冷や水どころか氷水を掛けられたかの様に冷静になるってものです。


 王子様系イケメンの優しい慈愛の騎士様に「貴方は1人でも生きていけます。青葉さんは本当に可愛げがないですね。」

なんて冷たい笑顔で言われた暁には…もはや、異世界どころではなく、あの世に行くしかありません。

まぁ、そもそもハイル様の恋愛対象は男なんですけどね…。


 心の中で涙を流していると、ガッと思い切り椅子を後ろに引かれ、思わず「ヒャッ!」と言う間抜けな声が出てしまう。

そして目の前に狐鈴さんの背中が立ちはだかる。


「うちの青葉は他人の気持ちを慮りますねん。相手がガッカリする様な事が出来ない、他人の期待に一生懸命答えようとする。ほんにえぇー子や、アンタもよー分かってるんとちゃいます?青葉が断れん性格やからって、それに漬け込むやなんて、この国の騎士様はなかなか悪どいことしはりますやん。」


「こっ、狐鈴さん!」


挑むような狐鈴さんの声に、思わずその背中のシャツを掴むと


「大丈夫やから」


と、優しい声色で狐鈴さんが私に言い聞かせる。

ゆっくりと、ハイル様が立ち上がるのが端から見えた。

目の前に狐鈴さんがいるので、どんな表情をしているのかはわからないが、なんとなくピリピリとした空気が伝わってくる。


「そう言えば…初めてこちらに伺った際も、こうして邪魔に入って来たのは君でしたね。

青葉さんとはどういうご関係で?」


「フン、青葉は近い将来僕のお嫁さんに「なりません!狐鈴さんは親戚です!保護者です。」」


「「「………」」」


しばしの間の後、勢いよく振り向いた狐鈴さんが私の両肩を掴んで前後ろに揺らす。


「何でやねん青葉ぁぁぁ!!!そこは、そうです。って言わな!!この場が収まらへんやんか!!

青葉のアホー!今更、ハッ!?て顔しても遅いわ!

素直なんは青葉の良いところやけど!そう言うところやで青葉ぁぁぁ!!」


「スミマセン、ついっ…本当にスミマセン…」


「はぁ…君が青葉さんの事をどう思っているのかはよく分かりました。」


ハイル様の聞いた事もないような、冷ややかな声に機嫌が非常によろしくない事がわかる。


「せやったら、どないすんねん?」


 私の両肩から手を離すと、ハイル様に向き直る狐鈴さんがまたも挑むような声を出す。

助け舟を出してくださるのは大変嬉しいですが、穏便に!狐鈴さん!穏便にお願いします!と、流石に座っているわけにもいかず立ち上がるも、狐鈴さんが後ろ手で私に前に出るなと手で制す。


「フッ…どうもしませんよ、それこそ貴族の汚いやり方は嫌と言うほどみてきました。

それに、青葉さんから貴方も守る様に言われています。

その誓いを破る気はありませんし、青葉さんの悲しむ顔は見たくありません。

ですので、騎士として…正々堂々戦いますよ。

小細工はしません、どちらが手に入れても恨みっこなしという事です。」


「ほぉーん、そないな顔もするんや、あんた人の良さそうな顔してなかなか黒いやんか…まぁえぇーわ、そっちがそう言うなら受けて立とうやないか」


 バチバチと火花を散らす2人を前に、ドウシテ…コンナコトニ?と、思わずにはいられない。

側から見れば、私の事で争わないでぇーと言ってもいい状況だが、それを言えるのは美人か可愛い女性の特権であり、何よりも内面的にも魅力が無ければ成立しないし、周りも納得しないであろう。


 私が言うのは勘違いも甚だしいと言うもの…何一つ持ち合わせていない私の場合は、店主を守る従業員の図くらいしか思いつかない。

タカちゃんから、青葉を守るように言われている言いつけをしっかり守ってくれている狐鈴さんには感謝しかない。


 やっぱり、神使様は人間好きなんだな…後ろを見ればゴコクさんが相変わらずシューちゃんに掴まれているが、私の落ち着いている雰囲気を察してか、何か諦めたような目をするとスンと大人しくなった。


何故!?


「これは修羅場だな、頑張れよハイル!」

「これが三角関係ね!!どうしましょう!私ったらワクワクしていますわ、ハイル頑張って!

苦難を乗り越えてこその、真実の愛ですわー♡」


 フィオン様とマリエッタ様の呑気な声援が食堂に響いたのだった。





 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ